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福岡・みやま市《筒井時正玩具花火製造所》
線香花火から広がる観光と伝統
|九州観光まちづくりAWARD2024 金賞 ものづくり部門

2024.10.2
福岡・みやま市《筒井時正玩具花火製造所》<br><small>線香花火から広がる観光と伝統<br>|九州観光まちづくりAWARD2024 金賞 ものづくり部門</small>

2024年、2回目を迎えた、JR九州が主催する「九州観光まちづくりAWARD」。食・ものづくり・賑わいなど、風土と人を生かしたさまざまな取り組みに触れることは、心震わせる感動の連続! 今回は、九州観光まちづくりAWARD2024 金賞 ものづくり部門受賞者「筒井時正玩具花火製造所」。95年以上、花火をつくり続け、熟練の職人による天然の素材だけを用いる線香花火づくりが、米づくりや宿運営にもつながっていく驚きの取り組みを追った。

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“花火”が地域活性化のカギになる!?

職人肌の筒井良太さん、コンテンツづくりなどを担当する今日子さん夫妻。子どもたちが花火を好きな色やかたちで選べるよう、昔ながらのバラ売りで50種ほど販売する

福岡県みやま市は、国内20社ある花火製造会社のうちの4社がある、日本有数の花火の産地だ。そのひとつである「筒井時正玩具花火製造所」は、1929年の創業以来、現在は3代目・筒井良太さんが継承し、95年以上花火をつくり続けている。

花火の持ち手を花びらのように広げた「花」。四季をテーマに草木染めした「蕾」の2種の花火のセット。桐箱入りでギフトにぴったり。線香花火「花」42本入り8800円

同社は、火薬の製造も海外輸入に頼らず、天然の素材だけを使い、一貫して自社で製造しているのがこだわりだ。西日本に伝わる線香花火「スボ手牡丹」の国内最後の製造所であることでも知られている。

実は現在、線香花火の99.9%は中国産。花火の柄の部分となる藁が仕入れ先の廃業で手に入れられなくなる現況を受け、筒井さんはなんとか日本のものでつくりたいと、9年前に新規に就農。なんと「花火のための米づくり」をはじめたのだ。

2024年に誕生した「山の家」は1日1組限定の宿。高級花火がアメニティに付くので、縁側で地元酒蔵の日本酒を嗜みながら、しっとりと日本文化に浸りたい

さらに最近は公園や海岸が規制され、花火ができる場所が少なくなったことから、思いきり花火ができる宿「川の家」をオープン。また、花火を含む日本の原風景を伝えていきたいと新たな宿「山の家」も2023年に誕生した。

「ないならつくろう!」という筒井さんのバイタリティに、審査員一同圧倒されるばかり。ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんは、「線香花火を軸に、素材づくりのための米づくり、宿の運営など、こんなに広がっていくのかと感動しました」と賛辞を送った。

20年、30年経っても劣化することなく、熟成してさらにきれいな火花を放つ線香花火。筒井さんの情熱がどんな美しい火花を見せてくれるのか、これからの活動からも目が離せない。

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線香花火にまつわる日本文化に触れる宿泊体験

客室から見える庭も美しい
地元のおばあちゃんがつくる朝食や中医診断薬膳師による薬膳料理、自ら猟をするシェフによるジビエ料理を味わえる
存分に花火ができる静かなロケーションも魅力

原料に目を向ける、地産地消の花火観光のかたち

米づくりから花火になるまでを年3回のワークショップに
自分がつくった花火に子どもは大興奮
2025年、鹿児島・硫黄島に支店をオープン。地質学博士の案内で硫黄の採取から花火づくりを体験!※許可を得て入山

花火職人が、みやまの伝統工芸を守っている?

内職で花火をつくる職人が多いという慣習を生かし、担い手がいなくなったみやま市の伝統工芸品・きじ車を受け継ぎ、つくり続けている。年に1回「玩具祭り」の開催もはじめた

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大分・臼杵市
陶芸家・宇佐美裕之、料理家・宇佐美友香

 
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筒井時正玩具花火製造所
住所|福岡県みやま市高田町竹飯1950-1
Tel|0944-67-0764
営業時間|7・8月/11:00~17:00、1~6月、9~12月/13:00~17:00
定休日|7・8月/水曜、1~6月、9~12月/水・土・日曜、祝日
https://tsutsuitokimasa.jp

山の家
住所|福岡県みやま市高田町飯江1170
Tel|0944-67-0764(9:00〜17:00)
料金|1泊朝食付3万4300円~(4名利用時の1名料金、税込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISA
IN|15:00
OUT|10:00
営業時間|Feuille/11:00~17:00(水・日曜休)、Nuit/18:00~22:00(要予約、水曜のみ営業)、山の家 鍼灸所/15:00~18:00(要予約、水曜のみ営業)
https://yamanoie-miyama.com

text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
Discover Japan 2024年10月号「自然とアートの旅。/九州」

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