秘密の琵琶湖
祈りと暮らしの水遺産をめぐる滋賀旅
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世界で約20しかない古代湖のひとつであり、近畿圏1450万人の生活を支える琵琶湖。その湖西に位置する高島から、長浜、米原へと続く湖北エリアには、発酵食の郷土料理や湖魚の食文化、水に寄り添った生活と地域の神への祈りを大切にした豊かな暮らしが連綿と続いていた。
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旅の出発点は、白鬚神社の湖中大鳥居から!
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御祭神は猿田彦命。「白鬚さん」の名で延命長寿、長生きの神さまとして広く親しまれている。毎年9月5~6日の例大祭では、数え年2歳の子に名前を授け、無事成育を祈る「なるこまいり」の神事が行われ、全国から参拝者が訪れる
日本最大の淡水湖・琵琶湖。約400万年前より悠々と水をたたえる古代湖の周辺では「水の浄土」の教主・薬師如来が広まり、建立された寺社はいまも多くの信仰を集めている。そして、水辺の暮らしには、湧き水を日常的に使いながら水を汚さない慣習や、琵琶湖固有の「湖魚」と米でつくる鮒ずしに代表される独自の食文化、伝統漁法などが息づいている。そうした水と人の営みが調和した文化的景観は、「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産」として日本遺産に認定された。
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人々が水の恵みを崇敬してきた琵琶湖の神域を象徴しているのが、高島市の湖岸に佇む白鬚神社だ。創建以来2000年余りの歴史を誇る近江最古の大社を訪れ、豊臣秀吉の遺命で造営された本殿で手を合わせる。そして、雄大な琵琶湖の湖中にそびえる朱塗りの大鳥居を眺めていると、自然への畏敬の念が浮かび上がってくる。
「人の営みごとすべてにおける『道開きの神』として信仰されています。何かをはじめる際、よき方向に導いていただけるご加護を求め、かつては船で参拝されていました」と宮司・髙橋敬一さん。
この地での祈りからはじまり、さらに北上して長浜、米原の湖北エリアで脈々と受け継がれる文化に触れる旅には、〝知らなかった琵琶湖〟の魅力と現代を豊かに生きるヒントがちりばめられている。
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水と生きる高島の暮らし
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京都・奈良の都と北陸を結ぶ交通の要衝として栄えてきた高島市。暮らしに湧き水を取り入れ、美しい景観を守る、高島独自の「水と生きる」習慣と湖魚文化とは?
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琵琶湖の歴史をめぐる。
かくれ里 菅浦の伝説/観音の里 長浜
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随筆家・白洲正子が「かくれ里」と称した“奥琵琶湖”の最北部、菅浦集落。そして、「観音の里」として祈りの文化が根付く十一面観音パラダイス・長浜市。いま、琵琶湖の歴史をめぐる旅へ出掛けよう。
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琵琶湖の景色と共に味わう美食
湖里庵/紅鮎
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琵琶湖は郷土料理の鮒ずしをはじめ豊かな食文化も育んだ。文豪・遠藤周作も愛した料亭「湖里庵」の湖魚懐石、琵琶湖の佳景に抱かれながら名物ぼく鍋を味わえる名宿「紅鮎」をご紹介。
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琵琶湖周辺のパワースポットへ!
醒井宿の名水と名建築
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滋賀県・琵琶湖の湖北をめぐる旅の終着地は、米原市の宿場町・醒井宿(さめがいしゅく)へ。霊仙山から流れ出る豊富な湧き水と清流、ノスタルジックな町並みが名水の伝説とともに伝えているのは日本で失われた水の郷の面影だ。
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秘密の琵琶湖を愉しみ尽くす、
モデルコース紹介!
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② 高島 かばたエリアを周遊
③ メタセコイア並木道へ
④ 湖里庵で昼食
⑤ 菅浦集落を散策
⑥ 長浜で十一面観音立像参り
⑦ 紅鮎で宿泊
⑧ 醒井宿で名水と名建築めぐり
白鬚神社
住所|滋賀県高島市鵜川215
Tel|0740-36-1555
拝観時間|社務所9:00~17:00
拝観料|無料
アクセス|電車/京都駅からJR湖西線新快速で近江高島駅まで約40分。そこからレンタサイクルで約15分、徒歩は約40分。タクシーは約5分。車/京都東ICから約45分、木之本ICから約55分。
http://shirahigejinja.com
text: Ryosuke Fujitani photo: Sadaho Naito, Robert Ippei
2024年10月号「自然とアートの旅。/九州」