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《阿部春弥》のうつわ
毎日使いたくなる食卓の定番

2024.2.22
《阿部春弥》のうつわ<br> 毎日使いたくなる食卓の定番

陶芸家・阿部春弥さんが追求するのは、食器棚から無意識に選び取ってしまうようなうつわ。阿部さんがつくり続ける、手に馴染み、どんな料理にも合う、使い心地のよいひと皿とは?
2024年2月23日(金)~ 3月10日(日)にかけて、東京・渋谷パルコ Discover Japan Lab.にて「阿部春弥 個展」を開催。

Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を2月28日(水) 20時から順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)

右・阿部春弥(あべ はるや)
長野・上田市生まれ。愛知県立窯業高等技術専門校修了後、備前陶芸家・山本出さんに師事。2004年に独立。
左・阿部みか(あべ みか)
愛知県生まれ。愛知県立窯業高等技術専門校修了。2007年に春弥さんとともに上田市で「三窯」を設立。

美術品ではない
暮らしに寄り添う等身大のかたち

黄磁、もえぎ、鉄彩、ピンク、白磁。スモーキーな色みが料理を美しく見せる。色違いで揃えるのも楽しい

陶芸家の父をもつ阿部春弥さんが焼物の世界を意識したのは高校生の頃。もともと料理人を目指していたが、当時陶芸の修業をしていた兄が別の道を選んだため「ならば自分がやってみよう」と、作陶の道を歩むことにした。

愛知の窯業高等技術専門校を卒業後、春弥さんは備前焼陶芸家の山本出さんの下に弟子入りをした。

「父の下で働くこともできましたが、実家とは異なる環境で、陶芸家としての生き方をあらためて学びたかったんです」と当時を振り返る。修業を終えた後、2004年に故郷である長野県上田市に戻り、独立。その後、専門校時代の同級生であり妻でもあるみかさんとともに「三窯」を設立した。
「作陶で意識しているのは、暮らしに寄り添う等身大のうつわであること。この考えは、独立した当初から変わっていません」

日常使いしやすいバランスの取れた色とかたち、そして質感。和洋中、どんな料理も受け止めてくれるため必然的に食卓のレギュラーアイテムに。しかも阿部さんのうつわは廃盤がないから買い足すこともできる。この安心感がいい

春弥さんにとって食事とは日々の生活の土台になるもの。豊かな暮らしのためにも重んじたい。そんなとき、料理を引き立てるうつわがあれば、気負わず手軽に美味しい食卓が演出できると考える。
「だから私たちのつくるうつわは、アート作品である必要はありません」と春弥さんは続ける。

ほどほどの装飾と、盛りつけたときの余白を意識した絶妙なフォルム。釉薬に至っては、食卓に並べたときにほかのうつわと調和するスモーキーな色合いを意識する。ちょうどいい存在感なので、毎日使っても飽きない。というよりも、とにかく使い勝手がいいので、無意識に食器棚から選び取ってしまうのだ。

箸置き制作をみかさんが担当。うつわの石膏型づくり、ろくろ成形、面取りや削り作業などを春弥さんが行っている。「かんなでひたすら削る作業も楽しいです」と春弥さん。一つひとつ心を込めて制作するのが二人のモットー

近年は時計や照明など暮らし回りのアイテムも展開。そのどれもが静謐な佇まいで、空間にゆとりを与えてくれる。

「ふと目にした瞬間、温かい気持ちを感じていただけたらうれしいです」と最後にひと言。今回の個展では、新作の「白磁鉢」シリーズも展示。引き算の美学から生まれた凛とした表情にも注目したい。

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〈阿部春弥 個展〉作品ラインアップ
 
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text: Misa Hasebe photo: Shimpei Fukazawa
Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」

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