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うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan
渋谷パルコ〈うつくしいうつわ 展〉

2024.1.22
うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan<br>渋谷パルコ〈うつくしいうつわ 展〉

神奈川・鎌倉のギャラリー「うつわ祥見 KAMAKURA」代表・祥見知生さんの書籍刊行を記念した特別展が、東京・渋谷パルコのDiscover Japan Lab.(ディスカバージャパンラボ)にて、2024年1月13日(土)〜1月28日(日)にかけて開催。名実ともに活躍する作家たちのうつわが一堂に会します。

公式オンラインショップでは、本展の一部作品を1月16日(火)20時から順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)

安齊賢太

黒壺 サイズ|φ250×H230㎜

安齊賢太(あんざい けんた)
1980年、福島県生まれ。大学卒業後、会社員を経て、京都伝統工芸専門学校で学ぶ。2006年に同校を卒業後、イギリスでダニエル・スミスさんに、帰国後は伊豆にて黒田泰蔵さんに師事する。2010年に独立し、故郷の福島県郡山市にて創作を行う。

素地の上に黒化粧をかけ、漆を混ぜた陶土を塗って磨くという工程を幾度となく繰り返し、独創的な黒を表現する。安齊賢太さんがイメージするのは、生の土にも似た、ぬめっとしたなめらかさとつやのある輝き。そのうつわにとって最もふさわしい佇まいとなるよう、細やかな感性と時間を費やしてつくられている。「彼が生み出している黒は、『安齊賢太の黒』。作品との密度の高いやりとりの中でご自身の黒を表現し、そしてその黒はますます美しく深まっていく。奥深い色彩からは自然界の時の流れや、万物が流転する気配を感じ取ることができます」(祥見さん)

荒川真吾

灰釉陽刻皿 サイズ|φ190×H42㎜

荒川真吾(あらかわ しんご)
1978年、宮崎県生まれ。2005年より岡山・備前にて隠崎(かくれざき)隆一さんに師事し、独立。2013年、生まれ育った宮崎県日南市に築窯。土づくりから釉薬づくりまで自ら行い、主に灰釉、粉引のうつわを中心に作陶に励んでいる。

既成価値を超える仕事ぶりで、焼物に挑み続ける荒川真吾さん。力強さと懐の深さ、無国籍な情緒と土味のある味わい、自在に描く文様など、唯一無二のうつわに心酔するファンが増えている。「各国を旅する中で見聞きしたもの、弟子時代に寝る時間も惜しんでむさぼるように読んだ本、映画、音楽、興味の赴くままに触れてきた文化、すべてが彼の血肉となり、うつわに体現されている。善も悪もすべてを内包し、わき上がるものをまっすぐに表現されている。根っからのアーティストなのだと思います」(祥見さん)

八田 亨

白掛マグカップ サイズ|φ75×H90㎜(取っ手は除く)

八田 亨(はった とおる)
1977年、石川県生まれ。2000年、大阪産業大学工学部環境デザイン学科卒業。2003年、陶芸家の活動を開始し、翌年に自身の穴窯を築窯。現在は大阪・富田林市の工房でろくろを挽き、堺市の窯で焚いている。三島や白掛を中心とした作品を手掛ける。

八田亨さんは月に一度、穴窯を焚く。窯詰めできるほどのうつわを毎月つくることは、焼物と真摯に向き合う姿勢がなければ、到底できないことだ。目指すのは“土を芯まで焼く”こと。芯まで焼き切るからこそ深みのある表情が生まれ、自然の情景のように複雑な美しさが表れるのだという。「八田さんは、『土の自然な表情をいかにして引き出すかを考え、使われてこそのうつわを大事にしたい』とよく口にされています。決して思い通りにならない薪窯による焼成の経験を積み重ね、土の複雑な表情を引き出すその姿に、心を打たれます」(祥見さん)

小野象平

黒化粧8寸皿 サイズ|φ 260×H55㎜

小野象平(おの しょうへい)
1985年、愛知県生まれ。父は陶芸家の小野哲平さん。幼少期より両親に伴い、東南アジア諸国をめぐりながら育つ。高校卒業後、約8年の会社員生活を経て、鯉江良二さん、小野哲平さんに師事。2015年に独立し、現在は高知県香美市で作陶を行う。

小野象平さんのうつわづくりは、高知県香美市に構えた工房の裏山で、土を掘るところからはじまる。陶土に加え釉薬すら一からつくり、土と釉薬の鉄分を個性へと昇華させた、趣ある黒色や豊かな青色の作品を中心に制作。「ボーダレス」をテーマとし、「ファッションと同じように直感的な感性でうつわを楽しんでほしい」と作品を発表し続けている。「本焼きを3回繰り返すなど、甘い仕事を許さない姿勢、自身の美しさを追求する厳しさを尊敬しています。特に近年は表現者として、勝負をかけていると思うのです。これからが本当に楽しみな作家です」(祥見さん)

岩崎龍二

ブルーグレーリム皿 サイズ|φ275×H40㎜

岩崎龍二(いわさき りゅうじ)
1980年、大阪府生まれ。2000年、大阪美術専門学校卒業。陶芸教室で講師を務めながら、日本伝統工芸近畿展第47回新人奨励賞、大阪工芸展(第52回、54回、59回)などで受賞、神戸ビエンナーレなどで入選。2012年、大阪府富田林市に工房を構える。

思わず息をのむほど美しいうつわ。釉薬で描いた環の連なりを流し、濃淡を生み出す「環流し」を得意とし、繊細な釉薬のグラデーション、気品あふれるブルーグレー、みずみずしいアイスグリーンなど、岩崎龍二さんは色彩への飽くなき探究心をもつ。この独創的な表情は、半磁器土に白い釉薬をかけ、その上から酸化銅や酸化クロムを吹きかける手法から生み出されているという。「優美な色合い、かたちの自然さ、しっとりした質感、これらは彼ならではの美しさ。無条件に“美しい”と思える清らかさが魅力です。まさに“ひと目惚れするうつわ”ですね」(祥見さん)

小林徹也

粉引リム皿 サイズ|φ240×H30㎜

小林徹也(こばやし てつや)
1979年、大阪府生まれ。関西大学法学部を卒業。写真事務所にてレタッチャーとして勤務した後、愛知県立窯業高等技術専門校にて窯業を学ぶ。2012年より愛知県瀬戸市を拠点に作陶を行い、独自の解釈から生まれたうつわが注目を集めている。

粘土、白化粧、釉薬といった焼物の「構造」を、レタッチャーという前職で扱っていた画像編集ソフトと重ね合わせ、アプローチしていく。各素材の特性を把握し、表現したい色調や質感を最上部に浮かび上がらせるよう、焼成で各レイヤーを統合するイメージだ。それによりノイズを含んだような独特の表情が導かれる。日々のうつわとして、使いやすいかたちであることも特長であろう。「小林徹也さんのうつわからは哲学的なものを感じます。思慮深い目でうつわと向き合い、“使うためのうつわとは何か”を、深く考えて作陶していらっしゃるんです」(祥見さん)

田村文宏

白磁蓮弁急須 サイズ|φ85×H95㎜(取っ手・注ぎ口は除く)

田村文宏(たむら ふみひろ)
1978年、愛知県生まれ。2004年、愛知県立瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科卒業。その後、ホンジュラス共和国、カンボジアにて窯業サポートなどのキャリアを重ね、愛知県岡崎市に築窯。制作するうつわは穏やかで素朴な作風で、古陶に通じる美しさがある。

生まれ育った愛知県岡崎市の地にて、自ら採取した土を使い、安南手、灰釉粉引、白磁、鉄釉、白瓷など、さまざまな表現を提案。焼物と実直に向き合い、堅実な作陶を行っている。「職人的でもあり、人間の善良な何かに訴えるような、ほっとするうつわをつくられるのが田村文宏さんです。昔は生活の周りで入手できる材料だけで焼物をつくっていたように、彼は愛知県という焼物の里でのうつわづくりにこだわっていらっしゃる。カンボジアなど海外でのご経験で培われたことが、土台となっているのではないかなと思います」(祥見さん)

 

公式オンラインショップ
 

なんでもなくて、何かある。
心に響く美しいうつわ

「人の手に包まれる気高く美しいうつわを伝えたい。うつわを伝える仕事が生業の人間として、その想いはいつも胸に抱いています」
祥見知生さんのこの想いが、本としてかたちとなった。タイトルは『UTSUWA KATACHI II—JAPANESE CERAMICS AND FORMS THE BEAUTY WITHIN うつくしい うつわ』。国内に加え、ヨーロッパを中心に高く評価された『うつわ かたち UTSUWA KATACHI JAPANESE CERAMICS AND FORMS』に次ぐ第2弾で、1月13日の刊行となる。

本書は約90点に及ぶ写真を中心に構成され、安齊賢太さんや荒川真吾さんをはじめ、才気煥発な17名の作家の作品を紹介。日本語と英語を併記したグローバルデザインとなっており、「つくり手の言葉に耳を澄ます」と題したインタビューも掲載されている。
「〝情緒〟を根底に流れるテーマにしました。物質主義的なことではなく、人間は国籍や人種を超えて、美しさに反応する心をもっている。そんな心に響くものを、一冊を通じて伝えたいのです」

ページをめくるたび、静かにわき上がる心の泉。うつわたちは本の中で凛と佇み、語り掛けるように読み手を引き込んでいく。
「表面的な美しさのみならず、内面に潜む美しさまでくみ取っていただけたらと。写真家・西部裕介さんはうつわが内包する美しさを見事にとらえてくださり、それら美しい写真の構成にはドラマティックな情感を大切にしました」

どのうつわも、まるで美術品のように美しい。だが、祥見さんは「うつわは生きるために必要な、食べるための道具である」と、一貫して伝え続けている。
「日々のうつわは使われてこそ価値があり、使われてこそ尊い。そんな人間が生きていくためにつくられたうつわは、思慮深く美しいかたちをしています。そこには言葉では表現し難い美が宿っていて、心のひだに触れる確かな何かがあるんですよ」

美しいうつわとは何か。祥見さんは『うつくしい うつわ』を制作する上で、常に自身へ問い掛けていたという。

「うつわを伝える仕事をはじめて、20年以上。あらためてこの問いと向き合ったとき、美しさを提示する難しさを感じました。ただひとつ言えるのは、私が美しいと思ったものが、必ずしも万人にとって美しいわけではないということ。多様性が叫ばれるいま、何が美しいのかを決めつけることはできません。人間が一人ひとり違うように、うつわも一つひとつ違う。手取りや見どころ、個性を自由に感じ、皆さまそれぞれの感性で美しさを受け止めていただきたいです」

1月13日〜28日の間、Discover Japanの直営店「Discover Japan Lab.」では、本書の刊行を記念した「うつくしいうつわ展」が開催される。本で紹介された作家の作品が一堂に会する、またとない機会だ。
「この顔ぶれのキュレーションははじめてで、非常に価値のある展示だと思います。多様な人が訪れる場で、開催できることも楽しみです。私たちは世界でもまれな完成度の高いうつわを手掛ける作家たちと、同じ国、同じ時代に生きています。彼らの作品はいずれ骨董品となるかもしれません。手に入れたら道具として使い、次世代につないでいただければ幸いです」

うつわは美術品ではない。しかし我々が現代も古物を愛でられるのは、昔人が未来に残してくれたからだ。優れた作家の足跡というべく作品を収録する『うつくしい うつわ』。刊行を記念した特別展に足を運び、うつわとの出合いを楽しんでいただきたい。

読了ライン

うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan
うつくしいうつわ 展

会期|2024年1月13日(土)〜1月28日(日)
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel |03-6455-2380
営業時間|11:00〜21:00
定休日|不定休
※最新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
※掲載商品は一部であり、店頭にはさまざまなうつわが並びます。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。

『UTSUWA KATACHI II—JAPANESE CERAMICS AND FORMS THE BEAUTY WITHIN うつくしい うつわ』
価格|3850円 編著者|祥見知生
写真|西部裕介 デザイン|橋詰冬樹
発行|ADP

企画・祥見知生(しょうけん ともお)
2002年、「うつわ祥見」をオープン。現在鎌倉市内に「うつわ祥見 onariNEAR」、「うつわ祥見 KAMAKURA」、「うつわ祥見 KAMAKURA concierge」の3つのギャラリーを構え、’20年には伊豆高原に「SHOKEN IZU」をオープン。『うつわを愛する』(河出書房新社)をはじめ著書多数。

写真・西部裕介(にしべ ゆうすけ)
広告の商品や風景、空間の撮影を中心に活動。長期に渡る撮影プロジェクトにも多数参画。持ち前の反射神経とフォトディレクションにより捉える一瞬の光景、物の本質を引き出す力に定評がある。

text: Nao Ohmori photo: Yusuke Nishibe
2024年2月号「人生に効く温泉」

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