《小林徹也》
クラシックとモダンを繋ぐ、ノイズを愉しむ美しいうつわ
どこか神秘的で優しい佇まいの小林徹也さんのうつわ。クラシックとモダン両面の魅力を兼ね備えた小林さんの作品づくりのルーツは、なんと“写真のレタッチ”だった。
渋谷パルコ1階「Discover Japan Lab.」でも取扱い中の陶芸家・小林徹也さんのうつわづくりへの想いや作品の魅力をひも解いていく。
小林徹也(こばやし てつや)
大阪府出身の陶芸家。関西大学法学部を卒業。愛知県立窯業高等技術専門校にて窯業を学ぶ。2012年より愛知県瀬戸市を拠点に作陶。独自の解釈から生まれたうつわが注目を集めている。
レタッチャーから陶芸家へ
新たな挑戦を積み重ねる
日本六古窯のひとつであり、1000年以上の歴史を持つ、瀬戸焼。釉薬を用いて陶器を完成させた日本最古の焼き物として、2017年には日本遺産に認定され、瀬戸焼が生まれた愛知県瀬戸市は鎌倉時代には日本最大の焼き物の産地となったことでも知られている。
そんな歴史ある「せともの」の産地である瀬戸市で作陶するのが、いま注目の若手作家・小林徹也さんだ。
大阪府に生まれた小林さんは関西大学法学部を卒業。前職ではフォトグラファーのもとでレタッチャーとして働いていた。ファッションや広告の写真に携わり、仕事を通して“色調”や“質感”を表現することに惹かれていき、その延長上で焼き物の釉調に興味を持ったことから徐々に「将来は焼き物を生業にしたい」という想いが強くなり、写真事務所を退社して瀬戸市の窯業訓練校に入学し、陶芸家としての道を歩みはじめた。
修了後は製陶所で働きながら自身の作品を制作し、数年後に独立した小林さん。伝統を重んじながらも、新たな挑戦を積み重ね、小林さんにしか出せない釉薬の景色や質感、どこか神秘的で優しげな雰囲気をまとう作風にたどり着いた。
「ノイズを含んだ美しさを表現したい」
うつわの土台となる粘土にはおもに鉄分を含んだ赤土を使用し、釉薬には天然の木灰を使っている。粘土との相性により石灰釉を用いるものもある。白化粧を施した粉引、金属を使った錆釉また無釉の焼締なども制作している。
和洋問わずどんな料理にも合わせやすいサイズとフォルム、加えて料理を引き立たせる色調や質感をまとう小林さんのうつわ。作品づくりをする上で大切にしている想いやこだわりを教えてもらった。
「もともと焼物の釉調に惹かれてこの業界に入ったので、それを日々探求していますが、綺麗というよりは少しノイズを含んだ美しさを表現したいという想いはあります。ただあくまでも日常のうつわを制作し、末永く愛用していただきたいので、あまりやり過ぎないよう、バランスを取りながら時代に左右されないうつわを制作出来ればと思っています」
画像編集ソフトのレイヤーのように、
素材を重ねていく
制作工程は通常の焼き物と大きな違いはないと言う小林さん。しかしながら焼き物の「構造」に対する解釈は、自身の経歴や焼き物に魅せられたきっかけが大きく影響していた。
「前職のレタッチャーをしていたとき、Adobe Photoshopという画像編集ソフトを使用して幾重にもレイヤーを重ねることにより、深みのあるトーンを構築していました。同様に焼き物も、粘土や白化粧、釉薬といったレイヤー構造になっています。ただ焼き物は物理的に素材を重ねることに限度があるので、奥行きのある表情を生むためにそれぞれの素材の特性を把握し、どの割合でお互いを反応させるかを各工程で調整しながら作業を進めていきます。そして最終的に、イメージした釉調を最上部に浮かび上がらせるよう焼成によって各レイヤーを統合するというように、画像編集ソフトを扱う感覚でアプローチしています」
使い込むことで深みが増していき、より表情豊かな変化が愉しめる小林さんのうつわ。日々の食卓に柔らかに寄り添い、ときにインスピレーションを与えてくれる逸品は、使い手の暮らしをより豊かにしてくれるだろう。
小林徹也さんのうつわは
オンラインで購入いただけます!
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渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて、小林徹也さんの作品を販売中! ぜひ実際に手に取ってお楽しみください。