奈良《GOSE SENTO HOTEL》
奈良のローカルと出合える分散型ホテル
|旅の目的地にしたい名宿④
匠が手掛けた独創的な名建築、江戸情緒を色濃く残す町で暮らすように宿泊するホテル、雄大な山海の自然を享受できる宿など。滞在そのものが目的になる極上の体験がここに——。
今回は、4棟の再生古民家が一体となった分散型ホテル「GOSE SENTO HOTEL」を紹介。奈良県御所は山岳信仰「修験道」の開祖・役行者が生まれた場所。かつて人々が清らかな湯と水で整い、神々が宿る山々へと旅立ったこの地の街並みと歴史的建築、そして地域の人たちとの交流が、心潤す時間をもたらしてくれるはずだ。
江戸の面影を残す、
奈良の街と暮らす分散型ホテル
奈良県の中南部に位置する「御所まち」は、江戸時代初期に形成された陣屋町。ひとつの川を挟んで西岸の商家町、東岸の寺内町のふたつで形成されるこの街は、江戸時代の検地絵図がいまでも使えるほど町のかたちが残され、伝統的建造物が軒を連ねる風情豊かな街並みが守られている。
「GOSE SENTO HOTEL」は、近世をベースに昭和の香りを色濃く残した街で、暮らしの息遣いを感じながら滞在できる「泊・食・湯」分離の分散型ホテルだ。4棟の再生古民家が一体となったこのホテルの中心となるのが、1916年創業と伝わる「御所宝湯」だ。地域で愛されながらも2008年に廃業を余儀なくされた街の社交場が復活し、創業当時の浴槽を残しつつ、フィンランド式サウナや露天水風呂といった新風を取り入れ、“懐かしくて新しい”癒しの時間が満喫できるようになった。
宿泊施設は、趣の異なる2棟。「RITA御所まち」は、大正に創業し、〝幻の逸品〟として愛好家から支持されている国産万年筆ブランド「モリソン万年筆」の本店跡の古民家をリノベーション。歴史を感じさせるクラシカルな空間には静謐が漂い、心安らぐ時間を過ごせる。
一方、アクティブな人におすすめなのが「宿チャリンコ」だ。こちらは、かつての自転車店の面影を残す古民家を改修した昭和レトロな空間。愛車とともに泊まれる客室やレンタサイクルも完備され、古代より神々を祀る聖地とされていた御所の大自然の風を感じながらサイクリングを楽しんだ後、御所宝湯で汗を流し、地域住民との交流も楽しめる。
御所ならではのカルチャー体験は食もしかり。「洋食屋ケムリ」では、御所を代表する食材の鴨、芳醇な水が育んだ四季折々の奈良県産野菜といった大地の恵みを、新進気鋭のシェフが地域の営みを感じられるローカル・ガストロノミーへと昇華。ノスタルジックな空間で奈良の銘酒とともにいただけば、口福のひとときが待っている。
ゆったり流れる時間の中でローカルのヒト、モノ、コトと出合い、身体が内側から満たされる滞在を楽しんでほしい。
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GOSE SENTO HOTEL
住所|RITA御所まち/奈良県御所市西町1069
宿チャリンコ/奈良県御所市鴨口町1087
御所宝湯/奈良県御所市御国通り2-361-5
洋食屋ケムリ/奈良県御所市西柏町1296
Tel|0745-49-0854
客室数|RITA御所まち4室/宿チャリンコ4室
料金|RITA御所まち/1泊2食付3万300円〜(税・サ込)
宿チャリンコ/1泊2食付1万8200円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAほか
IN|15:00
OUT|11:00(宿チャリンコは10:00)
夕食|洋食
朝食|和食
アクセス|車/京奈和自動車道御所ICから約5分
電車/近畿日本鉄道近鉄御所駅から徒歩約5〜10分、JR御所駅より徒歩約5〜10分
施設|銭湯、サウナ、洋食店
www.gosemachi.com
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text: Ryosuke Fujitani
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」