世界遺産《屋久島》との共生を感じながら、
島の美味と自然を堪能する。
|島を味わい、ととのえる。
海に囲まれた環境で、独自の風土や歴史によって築き上げられた3つの島は、それぞれが唯一無二の文化を形成している。“絶景”や“美食”などの楽しみだけではない、各島に息づく文化に触れる大人のリトリート旅へいざ。
鹿児島本土から約65㎞南下した東シナ海に浮かぶ屋久島は、〝洋上のアルプス〟と称される山岳島だ。神秘的かつ特異な森林で形成された世界自然遺産をめぐる癒しの旅へ――。
絶景を望むヨガ&サウナ
唯一無二のモーニングルーティン
島の9割を森が占める屋久島には、九州最高峰の宮之浦岳を中心に1000m級の急峻な山々が連なり、古よりそれぞれのふもとに広がる集落で山岳信仰が根づいている。日本一の雨量を誇る豊潤な水が樹齢数千年の縄文杉をはじめ、数々の巨木や老樹が広がる太古の森を育み、特異な生態系と優れた自然景観を有することから日本初の世界自然遺産に登録された。
その南東部、麦生エリアに位置する「sankara hotel&spa 屋久島」は、神々がすまう世界遺産と共生するオーベルジュ型のリゾートホテルだ。空港に到着し、迎えの車に乗り込んでからその至極のステイがはじまる。
館内に入ってまず、目に飛び込んできたのは海と一体化したようなインフィニティプール。燦々と降り注ぐ太陽の光が水面にきらめき、眼前には大海が広がる。
「屋久島は日本で最初に黒潮が流れ込む場所。冬から春にかけて目の前の海にクジラの親子が渡る様子が見られることもありますよ」
在来種のハイビスカスや月桃、ポインセチアが彩る広大な敷地をカートで移動し、バトラーとの会話を楽しみながら、最新の客室「マナサヴィラ」へ。アジアンモダンで統一された開放的な空間には、シーリングファンや寛げるデイベッドが配され、自然と調和したテラスに漂うのは濃厚な森の匂い。「何もしない贅沢」を享受し、島のリズムと身体がリンクしていく時間に心が解き放たれていく。
ゆっくり休息した後に訪れたマジックアワーが美食の合図だ。屋久島から得たインスピレーションで仕立てる自然派のフレンチフルコースが楽しめる「okas」は、海・山・里の恵みを軽やかに独創的な口福へと昇華させている。
翌朝、夜明け前に目が覚め、訪れたプールサイドの光景に息をのんだ。刻々と黄金色に染まりゆく空の下、水平線から昇る御来光を全身に浴びながら大地とつながるヨガ、そして絶景を望みながら屋久杉を使用した唯一無二のサウナでととのう喜び――。屋久島ならではの風土を感じながら浄化される至福の時間がここにある。
地産を味わう、屋久島キュイジーヌ
sankara hotel&spa 屋久島
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町麦生字萩野上553
Tel|0800-800-6007
客室数|29室
料金|1泊2食付4万7000円~(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAなど
IN|15:00
OUT|12:00
夕食|プリフィックススタイル(ayana)、フレンチ(okas)
朝食|洋食(ayana)
アクセス|車/屋久島空港から約40分
施設|レストラン、サウナ、スパ、ショップ、ラウンジなど
www.sankarahotel-spa.com
圧倒的な大自然、
その恵みと文化に出合う
名宿でのステイはもちろん、屋久島の魅力を堪能する上で外せないのが秘境トレッキングだ。今回訪れた白谷雲水峡は「苔むす森」で名高い自然休養林。約700種類の苔を有する屋久島の中でもひと際濃く美しい苔が森を覆い、奥深い森林へ足を踏み入れると幽玄な光景に引き込まれてしまう。その非日常の世界に加え、島の成り立ちや地勢からひも解く森の美しさの起源、生育場所による屋久杉の違いなど「屋久島メッセンジャー」菊池淑廣さんの長年培われた経験と確かな知識によるガイドが知的好奇心を深く刺激する。
そして、ローカルに根ざした店での交流では、屋久島の〝素顔〟が垣間見られる。全国のアーティストが屋久島を想ってつくったプロダクトを通して島の魅力を発信する「YAKUSHIMA BLESS」の金田さん夫妻はこう話す。
「屋久島は、〝足るを知る〟場所。県道から一本外れるだけで景観が変わるので、ゆっくり歩いて等身大の島を体感してほしいです」
家族経営の飲食店「PANORAMA」で、学校帰りの子どもが店内で宿題をしている光景は、まさに島のありのままの日常だ。
「海、山、川だけじゃなく〝人〟も近い。それが屋久島の魅力です」と店主・藤森敏宏さん。大自然と文化を味わい、人、モノに触れる。その旅は本質的な豊かさに立ち返る時間に満ちていた。
白谷雲水峡 トレッキング
参加者それぞれの目的を重視したホスピタリティと屋久島の神髄を味わえる、ほかにはないツアーが魅力の「屋久島メッセンジャー」のガイドは、ガイドブックには載っていない白谷雲水峡の知られざる世界を堪能できる。
屋久島メッセンジャー
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町小瀬田413-76
Tel|0997-43-5630
営業時間|10:00~18:00
定休日|不定休
料金|1万2600円(保険料込)
※小学生以下は半額
開催時間|8:00~16:00頃
https://yakushima-messenger.com
定食・ぱすた かたぎりさん
肩ひじ張らずに手づくりの美味がいただけるローカル食堂。地魚を使用したパスタから鹿児島県産黒豚をはじめとした和定食のほか、地酒や酒肴が気軽に楽しめるのがうれしい。キッズスペースも充実し、ファミリーにも人気。
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町安房540-62
Tel|0997-46-4282
営業時間|11:00~15:00(L.O.14:30)、17:30~21:00(L.O.20:30)
定休日|日曜
https://katagirisan.com
YAKUSHIMA BLESS
屋久杉を伐採する林業をルーツとした老舗「武田館」が母体のブランドショップ。「もので、ひとで、伝えていく屋久島。」をコンセプトに、作家それぞれの想いや物語を宿した少量生産のプロダクトで屋久島の魅力を伝えている。
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町安房650-18
Tel|0997-46-2899
営業時間|9:00~17:00
定休日|不定休
https://yakushimabless.jp
PANORAMA
寿司割烹や洋食など多彩な経験をもつ店主・藤森さんが、その日捕れた地魚や島野菜、肉などを独自のスタイルで美味に仕立てる古民家レストラン。気軽な前菜から屋久鹿肉入り餃子など個性的かつ豊富な一品、がっつり丼やもつ鍋まで充実。
PANORAMA
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦60-1
Tel|0997-42-0400
営業時間|18:00~23:00(L.O.22:30)
定休日|水曜
http://panoramayakushima.com
3泊あっても足りない!
屋久島のおすすめスポット、まだまだあります。
屋久島いわさきホテル
屋久島の雄大な山を望む硫黄泉の天然温泉をはじめ、リゾート気分が味わえるジャグジー付きのプール、自然の滝から鹿園、ヤシ園など自然豊かな敷地の散策も楽しめるリゾートホテル。屋久島旅の拠点のひとつとしてぜひ。
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町尾之間1306
Tel|0997-47-3888
料金|1泊2食付2万1000円~(税別・サ込)
客室数|125室
https://yakushima.iwasakihotels.com
尾之間(おのあいだ)温泉
350年前に開湯したと伝わる、地元人憩いの名湯。岩風呂の足下から湧き出る49℃の源泉かけ流し温泉はトロトロの単純硫黄泉で、神経痛やリウマチ、婦人科疾患に効能があり、身体の芯から旅疲れを癒してくれる。
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町尾之間1291
Tel|0997-47-2872
営業時間|7:00~21:00、月曜12:00~
料金|大人300円、子ども150円
定休日|不定休
屋久杉自然館
屋久杉の自然文化に触れることができる博物館。樹齢数千年の縄文杉の「いのちの枝」をはじめ稀少な屋久杉の実物展示や森と人の物語映像、ジオラマやCGで学べる屋久杉利用の歴史など、屋久島の森をめぐる前に立ち寄りたい。
住所|鹿児島県熊毛郡屋久島町安房2739-343
Tel|0997-46-3113
開館時間|9:00~17:00(最終入館16:30)
入館料|大人600円、大高生400円、中小生300円
休館日|第1火曜、年末年始
www.yakusugi-museum.com
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人、営みの豊かさを再発見する。
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1|《奄美大島》の自然と伝統文化を見て、触れて、魅了される滞在。
2|世界遺産《屋久島》との共生を感じながら、島の美味と自然を堪能する。
3|《徳之島》で暮らすような滞在で、人、営みの豊かさを再発見する。
text: Ryosuke Fujitani photo: Kenji Okazaki
Discover Japan 2023年2月号「癒しの旅と温泉。/秘湯、湯治宿、銭湯、サウナ37」