坂東玉三郎主演・演出による幻想的な美の世界がシネマ歌舞伎に!
泉鏡花 生誕150年《海神別荘/高野聖》
歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。毎月、バラエティに富んだラインナップで全国34の映画館で上映中。10~11月の上映作品は泉鏡花作、坂東玉三郎 主演・演出による4作。『海神別荘』と『高野聖』は2023年10月20日(金)~11月2日(木)にかけて上映される。見に行く前にあらすじや作品背景を予習しよう。
泉鏡花(いずみ きょうか)
1873(明治6)年11月4日生まれ。明治・大正・昭和にかけて浪漫と幻想の世界を紡ぎ出し、多くの小説や戯曲を生み出した浪漫主義文学の大家。今回上映される作品の原作のほかにも、『義血俠血』、『婦系図』、『歌行燈』など、独自の世界観を持つ傑作の数々は度々舞台化や映画化され、生誕150年を迎える現在も人々に愛され続けている。
(泉鏡花記念館学芸員 穴倉玉日 『坂東玉三郎 泉鏡花抄4作品』チラシより引用)
坂東玉三郎×泉鏡花
ふたりの関係性は?
明治から大正、昭和にかけて活躍し、いまもなお多くの人々に読み継がれる浪漫主義文学の大家・泉鏡花。生誕150年を迎える今年、坂東玉三郎の主演・演出による4作が期間限定でスクリーンに登場する。
坂東玉三郎は養父・守田勘弥が出演した『天守物語』で泉鏡花作品と出合って以来、ライフワークとして泉鏡花による舞台にたびたび出演・演出、さらに映画の主演や監督も務めてきた。泉鏡花作品が持つ唯一無二の幻想的な世界観と、坂東玉三郎の圧倒的な美意識が織り成す作品は、多くの人々を魅了してきた。
今回の上映では、2週間ごとに2作品ずつ、計4作品のシネマ歌舞伎を上映。前半は海底の宮殿を舞台にした煌びやかな舞台『海神別荘』と、泉鏡花の怪奇幻想小説の代表作『高野聖』を、そして後半は異界の姫と人間の青年の恋を美しく描いた『天守物語』と、花柳界に生きる女の恋物語『日本橋』というラインアップだ。
『海神別荘』、『高野聖』、『天守物語』の3作の冒頭には、坂東玉三郎への特別インタビューも収録され、自身の泉鏡花作品への想いが語られている。
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海に捧げられた美女が、海底で清絶な魂と出逢う
『海神別荘』
海底にある宮殿・琅玕殿(ろうかんでん)の公子のもとへ、地上の美女が、公子に仕える女房や黒潮の騎士たちに伴われて、輿入れのために向かっている。
公子は博士や沖の僧都(そうず)と語り合いながらこの様子を眺め、その美しい姿に嘆息する。宮殿に到着した美女に公子は優しい言葉をかけて、美酒でもてなすが、美女はその幸福感を語りつつも地上への未練を訴え続ける為、公子は不機嫌となり…。
本作は琅玕殿の公子と、地上の美女の恋を描いた物語。
幻想的な宮殿での幕開きに続いて、黒潮騎士に囲まれた美女の輿入れへと、美しい場面が絵巻物を広げるように展開する。公子と美女が対面し、水底の世界の素晴らしさを語り聞かせる公子と、俗世界への未練を残す美女との対話は名場面であり、鏡花ならではの美しい台詞を楽しめる。そして伴奏音楽にハープを用いて、より幻想味を高めているところが坂東玉三郎演出の特色だ。
深山の孤家に住む女に魅せられた、若き僧の一夜
『高野聖』
修行僧の宗朝(そうちょう)は、飛騨から信濃へ抜ける山道で道に迷い、日も暮れた頃に孤家(ひとつや)にたどり着く。この家に住むのは妖艶で気高い女と、女が養っている次郎、そして親仁の3人。一夜の宿を乞う宗朝を、女は一度拒むが、思い直してその願いを聞き届けると、人が変わったように優しく接しはじめる。
女の案内に従い、宗朝が谷川で体をぬぐっていると、女が背中を流しはじめ、自らも着物を脱いで寄り添ってくる。宗朝は慌てて女の手を振り払い、川から上がるのだが…。
本作は泉鏡花の代表作である小説を、石川耕士と坂東玉三郎が脚本と演出を担い、2008年に歌舞伎座で初演。勧進の旅をする信仰心篤い若い僧と、魔性と聖性の二面性を持つ女のやりとりから描き出される、恐ろしくも美しい世界に注目だ。
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天守物語・日本橋の見どころは?
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月イチ歌舞伎2023 上映作品
『海神別荘』『高野聖』
上映日|2023年10月20日(金)~11月2日(木)
上映館|東劇ほか全国の映画館にて
料金(各作品)|一般2200円、学生・小人1500円
出演(海神別荘)|美女・坂東玉三郎/公子・市川海老蔵(現・市川團十郎)/博士・市川門之助/沖の僧都・市川猿弥/女房・市川笑三郎(平成21年7月 歌舞伎座公演)
出演(高野聖)|女・坂東玉三郎/宗朝・中村獅童/親仁・中村歌六(平成23年2月 博多座公演)
https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/
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