発酵研究家・料理家 真藤舞衣子さん
忙しくても《料理》で自分らしく。
1日24時間は平等に与えられているのに、時間に忙殺されず輝いているあの人。そんな人たちが考える「癒し」についてうかがってみると、いそがしくても心を亡くさないためのアイデアが満載でした。
発酵研究家・料理家
真藤舞衣子さん
東京生まれ。京都の禅寺で1年生活。その後フランスのリッツ・エスコフィエにてディプロマを取得。発酵食品に造詣が深く、レシピや商品開発など多方面に活躍。著書に『からだが整う発酵おつまみ』(MdN)ほか多数
旬の食材を取り入れて日々の身体を労わる
発酵に関する造詣が深い料理家の真藤舞衣子さん。発酵食品は“腸活”にもいいと注目されているが、「いくら発酵食品を取り入れても、食の基礎ができていなければ意味がありません」と語る。
「一番大切なのは、その時期の旬のものを食べるということ。私は20代の頃、京都・大徳寺の塔頭で茶道を学びながら畑作業や土木作業をして1年間生活しました。それまで土にも触ったことがなく、堆肥づくりも重労働。土を掘れば出て来る親指ほどの太さのミミズに驚きつつも、土が肥えているというのはこういうことかと実感しました。そうしてつくった野菜は本当に味が濃いんです。自然に生まれる旬のものを食べる大切さを、お寺での生活を通して学びました。いまでも、旬ではないものを食べると具合が悪くなってしまうんです。暴飲暴食も身体が疲れる元なので、外食もなるべくせず、外食する際は吟味。ジャンクフードや添加物も子供の頃から避けています」。
とはいえ、あまり細かく気にし過ぎないようにもしている。「神経質になり過ぎるのも不健康な気がしていて。たまにはジャンクフードを食べたっていい。翌日からまた気をつければいいんだから。私も疲れてストレスがたまったら、チートデーとして大好きなポテトチップスを食べたりしますよ」。
食が心と身体に与える影響を見過ごさず、その都度調整してきた真藤さん。コロナ禍で外出を控えて運動量が減った時期から、朝食をやめたという。「年齢とともに太りやすさを感じていますが、職業柄、調整できるのは朝食しかなくて。胃腸を休められるのもいいんです」。
昼と夜は、野菜や発酵食品たっぷり、バランスよく。「炭水化物を抜いても効果は一時的。それよりよく噛んで唾液を出し、消化を促す。基本に忠実なのが一番です」。
料理の基礎となる調味料も大切にしている。「つくれるものは自分でつくったり、信頼できる古来製法のものを買ったり。塩はイタリアの天日塩で酢も料理の味に顕著に影響するので大事ですね。京都『飯尾醸造』の酢や、岐阜『白扇酒造』のみりんなどを愛用しています」。
食だけではなく、生活習慣も基本を大切に。「疲れたときは眠る。普段から6時間以上は睡眠を確保するようにしています。身体を冷やさないように、一年中、毎日湯船に浸かることも欠かしません」。
今回は、忙しい人も実践しやすいご自愛レシピを教えてくれた。「丸鶏はとっつきにくいかもしれませんが、いいスープが取れるし、鍋に入らない分は唐揚げなど別の料理にも使えるので便利。入手が難しければ手羽元などの骨付き鶏でも代用できます。材料を全部鍋に入れるだけなので簡単だし、カレーのほか、ほぐして和え物やチキンサラダにしたり。いろんな料理に展開もできます」。
時間のある週末につくっておけば、翌週の自分を救ってくれるだろう。
丸鶏薬膳スープ
【材料】
丸鶏(中抜き)…1羽分1.2〜1.5㎏くらい
塩…鶏肉の1%分の分量12〜15g
水、酒…大さじ2
ニンニク…1片(つぶす)
ネギの青い部分…1本
ショウガ…1片(つぶす)
干しシイタケ…4つ(1カップで戻しておく)
ナツメ…2個
乾燥キクラゲ…2個
大根…角切り4㎝くらい
松の実…10g
八角…1個
クコの実…10粒
クローブ…3つ
鷹の爪…1本
塩麴…適量
【つくり方】
①塩を丸鶏の表面と腹の部分にまんべんなく塗り、1時間以上置いたらキッチンペーパーなどで水気を拭く
②鍋に①を入れ、入らない場合は4〜6つくらいに切ってニンニク、ネギ、ショウガ、鷹の爪を入れる。3ℓ入れたら、蓋をして火にかけ、煮立ったら中弱火で1時間ほどゆっくり煮る(圧力鍋なら25分ほど)
③鶏肉はほかの料理にも使えるので、使いたい分は別に取っておく。スープも好みで取っておく
④鶏スープ1.5ℓと干しシイタケの戻し汁、ほぐした鶏肉適量、ナツメ、キクラゲ、松の実、下ゆでした大根と、干しシイタケ、八角、クコの実、クローブを入れ、15分ほど煮た後、塩麹(なければ塩)で味を調える。余ったスープはカレーへ
薬膳カレー(スパイス煮込み)
【材料】
タマネギ…1個
ニンニク…1片
カレー粉…大さじ2
ほぐした鶏肉…150gくらい
塩麹…大さじ2
好みの野菜、太白ゴマ油…大さじ3
塩、黒コショウ…適量
薬膳スープの残り…600㎖くらい
【つくり方】
①鍋に太白ゴマ油を入れ、ニンニクのみじん切りを入れてから熱し、香りが立ったらひと口大に切ったタマネギを入れしっかりとキツネ色になるまで炒める
②カレー粉を入れ、炒め合わせたら鶏スープ(薬膳スープの残り)、ほぐした鶏肉、季節の野菜を入れ、塩麹、足りなければ塩と黒コショウで味を調える。材料は冷蔵庫に残っている旬の野菜を使うことが大切。スープで使った大根を入れるのもおすすめ
真藤さんの癒しのMyルール
▶︎朝食は胃を休めるための調整枠
▶︎食事は季節のものを取り入れる
▶︎よく噛んで食べる
▶︎睡眠・入浴時間は必ず確保
真藤さん自家製の発酵食
読了ライン
1|SANUブランドディレクター・本間貴裕さん
2|タレント・女優 清水みさとさん
3|編集者・本屋B&B運営 原カントくん
4|モデル 柴田紗希さん
5|発酵研究家・料理家 真藤舞衣子さん
text: Miyo Yoshinaga photo: Asami Endo
Discover Japan 2023年2月号「癒しの旅と温泉。」