TRAVEL

徳島のディープな魅力に触れる旅。
歴史・風土と吉野川に育まれた発酵文化をめぐる【前編】

2023.2.2 PR
徳島のディープな魅力に触れる旅。<br>歴史・風土と吉野川に育まれた発酵文化をめぐる【前編】

四季折々の恵み豊かな自然に育まれ、いくつもの文化が花ひらいた徳島県。中でも、その中心を東西に流れる清流・吉野川が山々からもたらす肥沃な土壌が、この地に豊かな発酵文化を根づかせてきたことは、意外に知られていない。かつてこの地に、現在の徳島の礎となる経済的な発展をもたらしてきた藍染をはじめ、日本酒や醤油などの発酵をキーワードに、徳島のディープな魅力に触れる旅へ出た。

豊かな水流が多くの恩恵をもたらしてきた清流・吉野川

吉野川沿いに息づく発酵文化をたどる
「阿波藍」

徳島は大小約500の川が流れる水の都。徳島県を東西に流れる吉野川は、その豊かな水流が恩恵をもたらすと同時に、「日本三大暴れ川」の異名をもつほどに、有史以来数多くの水害をもたらしてきた。人々を苦しめた氾濫も、ひとたび農作の面から見れば、上流の山から自然に運ばれてくる栄養たっぷりの土を「客土」といって歓迎した。暮らしを翻弄した氾濫が、逆に人間の生活に恵みをもたらしてくれてきた歴史をもつ。

吉野川流域は、水害により稲作には不向きな土地ではあったが、山がもたらす栄養たっぷりの土で栽培されたのが、染料に使われる葉藍だった。海外でジャパンブルーともいわれる、日本の藍を代表する徳島の藍は、その起源を室町時代まで遡る。戦国〜江戸時代にかけて、高い収益性をもつ藍の栽培がさかんに行われるようになった。その後、木綿が広く普及したことと相まって、吉野川を船で下り、鳴門から淡路島、大阪から京都へと荷車に乗せて、反物を染める染料として高値でよく売れたという。

春と夏に収穫した葉藍は乾燥後、100日ほどの時間と手間暇をかけて発酵させ、茶葉のような「すくも」という藍染めの染料に加工。それに木灰を煮出してつくる灰汁やふすま、石灰などの天然の材料を混ぜてアルカリ性の液体をつくり、さらに菌に糖分を与えて発酵させて藍染の染液をつくる。「阿波藍」といわれる阿波の藍は、20世紀初頭までこの地の発酵文化を担う特産品として、吉野川の流れとともに、徳島の発展に大いに寄与するようになる。

明治期以降は海外からの安価な染料におされ、藍の栽培は徐々に衰退したが、現在でも藍染の原料となる葉藍は、吉野川中下流域で栽培が続いている。阿波藍を用いた藍染の技術も、県内にいくつかある藍染工房で大切に受け継がれている。今回の旅で立ち寄った「藍染工房ルアフ」は、現代的なコンクリート打ち放しのビルの中にある藍染工房。清潔な環境で化学薬品などは使わない、昔ながらの藍染技法「天然灰汁発酵建」による本格的な本藍染を体験することができる。

発酵させて出来る藍染めの染料「すくも」
約30℃に管理された染液で満たされた藍床の中で繰り返し染めていく度に、次第に濃い藍色に変わっていく白い布。それを目の当たりにして、およそ800年にも渡って連綿と営まれてきた発酵の歴史の一端に触れているような気持ちに。「藍は菌を発酵させて色を出します。いい色が出るかは菌次第。八百万の神に祈らないとできないところがあります。温度や周辺環境によって日々変化する藍はまさに生き物です」という、代表・林広さんの言葉にうなずいた

藍染工房ルアフ
住所|徳島県吉野本町6-42
Tel|088-626-0536(体験予約080-2983-7550)
営業時間|9:00~17:00
定休日|不定休
藍染め体験|可(要事前予約)
見学|可(要事前予約)
www.indigo-dyeing.sakura.ne.jp

「醤油・味噌」

徳島・鳴門は製塩業が盛んで、藍の栽培の裏作として大豆が栽培されていた。醤油、味噌の材料が近郊で手に入りやすいことと、温暖小雨な発酵に適した気候も手伝って、古くから質の高い醤油味噌の産地として知られている。

四国遍路の第一番札所にあたる古刹・霊山寺からほど近い鳴門市大麻町で、1826年に創業した「福寿醤油」。当時から変わらぬ仕込蔵で、いまも昔ながら製法でつくられる醤油は、色味と切れ味のよいやさしい味わいが特徴だ。

醤油づくりには原料を発酵させてつくる麹が欠かせない。大豆を蒸したものと炒ってあら砕きした小麦を、室温約30度、湿度約80%の中で発酵カビを育て、手揉みをしたり混ぜ合わせること丸3日。約1週間かけて黄色い醤油麹をつくる。その後、麹と塩水を合わせた「もろみ」を通常半年のところ、福寿醤油では最低1年かけて発酵。その後は殺菌、濾過と計1年2カ月かけて、県民馴染みの徳島ラーメンや味付け海苔にも使われる醤油、すなわち徳島誇りの“味”が生み出される。

現在は9代目・松浦亘修さんが福寿醤油を切り盛りする。徳島に発酵文化が栄えた背景をたずねると、「温暖な気候と、吉野川由来のよい水があるおかげで、発酵文化が根付いたのではないでしょうか」と教えてくれた。
同蔵では、醤油と味噌がつくられる様子が見られる見学ツアーも行っており、使い込まれた100年ものの大きな木桶は必見だ。また、日本一の生産量を誇る徳島の酢橘を使った、無添加・無香料の「すだち醤油」はぜひ手に入れてほしい。

福寿醤油の9代目・松浦亘修さん

福寿醤油
住所|徳島県鳴門市大麻町池谷字大石8
Tel|088-689-1008
営業時間|8:30~17:00
定休日|日曜、祝日
見学|可(要事前予約)
www.fukujyu1826.com

発酵文化を支える「大谷焼」の里へ

鳴門市にある大正元年創業の「大谷焼窯元 森陶器」は、国内でも珍しい平地につくられた登窯が残る製陶所。1780(安政9)年にはじまったとされる大谷焼は、醤油、酒、塩、藍染と、徳島の発酵文化とも密接に関わる。
「うつわありきで育ってきた町」とは福寿醤油・松浦さんの言葉だが、戦後の頃までは台車や自転車で各家庭に、その日に使う醤油を訪問販売する時に使っていた醤油甕も大谷焼だったという。さらには、かつて鳴門の海で製塩していた塩甕も、日本各地の藍染産地で使われている藍染には欠かすこともできない大きな藍甕も大谷焼だ。

大谷焼の窯元が数ある中でも、 森陶器は湯呑みなどの小さなものから、職人が二人がかりでつくる伝統技法“寝ろくろ”で制作される藍染に使われる藍甕、水蓮鉢などの大物陶器などを幅広く手掛けている。登窯がある景色、熟練した職人が働く作業場など、焼物の里の雰囲気を堪能できるのも森陶器ならではの魅力だ。
同工房を訪れたなら、日々の暮らしに適した民藝のうつわを手に入れることはもちろん、陶芸体験(要事前予約)にも参加してほしい。大谷焼の土を使って、オリジナルの絵付けやうつわづくりを丁寧な指導のもと体験することができる。

大谷焼窯元 森陶器の前には、出荷を待つ藍甕がずらり

大谷焼窯元 森陶器
住所|徳島県鳴門市大麻町大谷字井利ノ肩24
Tel|088-689-0022
営業時間|8:30~17:00(日曜9:30~16:30)
定休日|なし
陶芸体験|可(要事前予約)
工房見学|可(要事前予約)※日曜除く
https://morigama.jp

建物から歴史を感じる「うだつの町並み」

「うだつ」とは、屋根の両端を高くして火災の延焼を防ぐためにつくられた防火壁のこと。富の象徴ともいわれ、「うだつが上がる・上がらない」という言葉の語源になっているという

藍などで栄えた徳島の歴史を語る上で外すことができないのが、県内にいくつか残る「うだつの町並み」。中でも徳島県美馬市脇町は、84棟の歴史的建造物が残る、うだつの上がる町並みとして知られる。うだつとは卯建や宇立とも書かれ、約300年前の大火をきっかけにつくられるようになった歴史をもつ、延焼防止のために建てられた防火壁のこと。建築形式としては中国雲南省から伝わったといわれ、ひとつ上げるのに、現在価格で100万円以上かかったことから、富の象徴という側面もあった。脇町のうだつの町並みを形成した豪商には、藍を扱う藍商も多く、藍商は藍染師を兼ねることもあったという。

美馬市指定文化財にも指定されている吉田家住宅。全25部屋の主屋と蔵が見学できる

その中でも、屋号に「佐直」を掲げる吉田家は一、二を争う豪商として知られ、「吉田家住宅」は一般公開もされている。間口十一間、奥行き三十間といった往時の面影をいまに伝える建物として、徳島の藍での繁栄を物語る貴重な歴史遺産のひとつである。

うだつの上がる町を歩いていると、かつて藍で栄えた名残がそこかしこで見受けられるので、そんな目線で町歩きを楽しむのがおすすめだ。
現在徳島では、交通券付き旅行商品に適用される全国旅行支援「みんなで!徳島旅行割」に加えて、県独自の旅割として宿泊料金の一部がキャッシュバックされる「みんなで!徳島旅行割プラス」も実施中しているので、徳島への発酵をめぐる旅にはぜひ活用してほしい。

吉田家住宅
住所|徳島県美馬市脇町大字脇町53
Tel|0883-53-0960
開館時間|9:00~17:00(最終入館16:30)
料金|大人510円、子ども250円
休館日|年末年始

うだつの上がる町並みで長年酒屋を営んできた女将に昔話をうかがい、脇町唯一の劇場「オデオン座」では、吉野川沿いに栄えた芸能文化の残り香を感じる。この町に移住してきた若い人たちや、これからの徳島について語り合う時間も、心に残る楽しい思い出となった。
町の人と会話をし、その歴史とそこでの暮らしを知ること。そんな何気ないひとときは、名所旧跡を訪れたり、その街の名物を味わったりすることとは異なる、旅の豊かさをもたらしてくれる。本質的な旅の魅力をあらためて実感させてくれた徳島への旅だった。

読了ライン

 


まだある!おすすめ立ち寄りスポット
 
≫続きを読む

 

text:Takashi Kato

徳島のオススメ記事

関連するテーマの人気記事