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クリエイターたちに聞いた
愛用品と一生ものの出合い方
SyuRo|宇南山 加子

2023.1.7
クリエイターたちに聞いた<br>愛用品と一生ものの出合い方<br><small>SyuRo|宇南山 加子</small>

コロナ禍を経て、ものへの価値観が変わってきたように思う昨今。あらためてもの選びのヒントにしたい、自身の愛用品とその出合い方について、「SyuRo」代表、宇南山加子さんにお話をうかがってみました。

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〈うかがった方〉
宇南山 加子(うなやま・ますこ)
1975年、東京都生まれ。’99年に空間ディスプレイや生活道具の企画、ディレクションを行うSyuRoを設立。2008年から台東区に店舗を構え、日本の伝統や職人の技を生かしたオリジナル商品や、五感に響く生活道具をセレクトして販売している

生活の空気さえも変える逸品を選びたい

私がものを選ぶ際に前提としているのは、心地いい感触、シンプルな見た目、やさしい香りといった、〝五感に響く〟もの。素材のよさも重要です。木や土、革、鉄、ガラスなど、自然素材の質感を感じられることで、日常を心豊かに過ごせるからです。

愛用品の「スプレッド チェア」は、座面をヌメ革で特注。ヌメ革は、はじめは硬めで白っぽく汚れも目立ちますが、使い込むほどになめらかにツヤが出て、傷やシミも馴染んでいきます。使って4年ほどですが、これからエイジングしていくのが楽しみ。味わい深いアンティーク家具のように育てていきたいです。匠工芸には、職人の競技会「技能五輪」の優勝者をはじめ確かな技術をもつ方が多い。おすすめに選んだ日進木工も、岐阜県・飛騨伝統の曲げ木技術が際立つメーカーです。こうした日本の職人がつくるものを日常で使うことは、その技を残すことにもつながります。これはSyuRoの商品づくりでも大切にしていることです。

SyuRoのものづくりでは、洋室にも和室にも合うよう海外と日本の要素を融合させることを心掛けています。「CHORUS アームチェア」も、北欧と中国、シェーカーのスタイルが融合されています。そこにSyuRoと共通するものを感じますし、1脚あるだけで空間の雰囲気が変わる存在感も理想的です。オブジェのように周りの空気を変える存在感のあるセレクトを、SyuRoでも目指しています。その考え方は、挿花家の谷匡子さんのアシスタント経験を通しての影響が大きいです。一輪の花を挿すだけで、周りの空気がガラリと変わる。その何もない空間に美を見出す。そんな日本の〝マイナスの美意識〟に呼応する存在感のものを提案したいのです。 そうした存在感のあるものには、生活を変える力があります。たとえば大量生産の椅子ではなく、デザイン性の高い長く使える椅子を取り入れてみる。すると「この椅子のある場に合ううつわを使いたいな」という風に、価値観も変わっていきます。使い捨てではなく何十年も使えるものですし、自然から生まれた素材は循環もしやすいもの。これからの時代、一人ひとりが問題意識を抱いて小さな循環を心掛けることがさらに必要になると思いますが、上質な自然の素材を選ぶことが、おのずと循環にもつながっていくものだと考えています。

宇南山さんの愛用品
「匠工芸」のスプレッドチェア特注品

プロダクトデザイナー・松岡智之のデザイン。牛ヌメ革の座面は特注。「座面が広く座り心地抜群。低座椅子で天井が高く感じられ、気分が落ち着く椅子です」(宇南山さん)

店舗のおすすめ
「日進木工 CHORUS/コーラス」のアームチェア

同じく松岡智之のデザイン。背板は日進木工の高度な曲げ木技術による3D成形。1脚あるだけで彫刻的な佇まいがあり、いろいろな要素によって、どんな空間にも合わせやすい。

Data
価格|チェア13万900円、座クッション1万5400円〜
サイズ|W540×D525×H790㎜

読了ライン

SyuRo
住所|東京都台東区鳥越1-16-5
Tel|03-3861-0675
営業時間|12:00〜18:00
定休日|不定休
Instagram|@syuro_tokyo

 

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《クリエイターたちに聞いた愛用品と一生ものの出合い方》
1|MOGI Folk Art/テリー・エリス & 北村恵子
2|Swimsuit Department/郷古隆洋
3|米富繊維/大江 健
4|SyuRo/宇南山 加子
5|うなぎの寝床/白水 高広

text: Miyu Narita, Ryosuke Fujitani, Jun Yamauchi, Miyo Yoshinaga
photo: Kohei Omachi, Akio Nakamura, Kazuya Hayashi, Hiroshi Mizusaki
Discover Japan 2022年12月号「一生ものこそエシカル。」

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