クリエイターたちに聞いた
愛用品と一生ものの出合い方
MOGI Folk Art|テリー・エリス & 北村恵子
コロナ禍を経て、ものへの価値観が変わってきたように思う昨今。あらためてもの選びのヒントにしたい、自身の愛用品とその出合い方について、「MOGI Folk Art」より、テリー・エリスさん、北村恵子さんにお話しをうかがってみました。
〈うかがった方々〉
テリー・エリス
北村 恵子(きたむら・けいこ)
1986年より「ビームス」ロンドンオフィスのトップバイヤーとして数々の海外ブランドを日本に紹介。「ビームスモダンリビング」や「フェニカ」を通じて国内外の手仕事の魅力を発信し2022年に独立。東京・高円寺に「MOGI Folk Art」を開業
時をかけて“つながる”美しさを重要視します
北村 「ビームスモダンリビング」や「フェニカ」のバイヤーとして30年以上活動してきた私たちが、ものを選ぶ際に大切にしているのは“つながる”という要素。まだ世の中は気づいていないけれど、手放しても捨てられずに誰かが次に愛用してくれる魅力を宿しているものを提案したい。それは昔からずっと一貫しています。
テリー この七尾詩子さんのうつわが、まさにそう。まず、使い込まれたような佇まいが美しく、独特のざらっとしたテクスチャーで、一つひとつ、少しずつかたちやサイズが異なる。何を盛っても素材そのものの魅力を引き立ててくれるので、毎日愛用しています。
北村 このうつわはしっかりした重量感も魅力なのですが、それは現代の日本が過剰に追い求めている“便利”とは相反するもの。利便性を追求することによって、ほかにはない美しさや豊かさを失ってしまうことがあります。そもそも長く拠点として暮らしてきたイギリスをはじめヨーロッパは、よいものを大切に使い、壊れたら直し、何百年と世代を超えて受け継ぐ文化。なので、いまでは日本でも日常的な言葉になったサステイナブルな視点が自分たちにとっては当たり前なんです。一生ものと出合うには、先入観にとらわれず自由な感覚で、いろいろなものを見ることが大事。勉強や情報は後でいい。言葉にできないくらい心に響いたら多少無理をしてでも買ってみて、使いながら変化を楽しみ、自分の色にしていく体験をしてほしい。そのおもしろさや、一つひとつの背景にあるストーリーを伝えたくてショップをはじめました。
テリー 「MOGI Folk Art」にあるのは、すべて私たちが実際に使って、着て、心から紹介したいと思った国内外のクラフトやヴィンテージ、フォークアートです。作家さんの定番アイテムを別注のカラーやサイズでつくってもらったオリジナルも展開しています。その中でも、私が“キング・オブ・キャンバス”と呼ぶ松野弘さんと一緒につくったトートバッグは、ハイクオリティな国産の帆布生地で耐久性が高い。無駄な装飾が一切なく、ベーシックに立ち返ったデザインで、使いこむほどに愛着がわきます。時代や世界が変わっても、モノの価値は自然と正しいところに戻ってくる。そういった色褪せないものを発信していきたいですね。
テリーさん、北村さんの愛用品
七尾詩子さんの丸皿
滋賀県長浜市木之本で作陶する七尾詩子さんの作品。「七尾さんは、北海道・江別でれんがをつくる際に使用している素材を用いて、古い本や映画に出てくる登場人物の暮らしなどからイマジネーションを広げ、感性でうつわをつくる作風。たとえ完成してもご自身で納得できなかったら世に出さない本物のアーティストです」。(北村さん)
Data
価格|1万1000円
サイズ|φ230×H45㎜
※MOGI Folk Artでも扱う
店舗のおすすめ
MOGI Folk ArtのHDBC tote bag
ほうきやちりとり、ざるなど、長きにわたり日本に根づいてきた職人ものの日用道具を扱う「松野屋」の3代目・松野弘さんと共同開発したトートバッグ。ポケットはひとつでどんなシーンでも使える“ありそうでない”サイズ感と、縁の裏にコットンウェビングを施すことで自立し、ものを入れやすくした機能性が魅力的。生地が異なるホワイトも展開。
Data
価格|9900円
サイズ|W420×D130×H350㎜(本体部分)
読了ライン
MOGI Folk Art
住所|東京都杉並区高円寺南3-45-12 1F
Tel|080-8058-1761
営業時間|12:00〜19:00
定休日|火・水曜
Instagram|@mogi_folk_art
1|MOGI Folk Art/テリー・エリス & 北村恵子
2|Swimsuit Department/郷古隆洋
3|米富繊維/大江 健
4|SyuRo/宇南山 加子
5|うなぎの寝床/白水 高広
text: Miyu Narita, Ryosuke Fujitani, Jun Yamauchi, Miyo Yoshinaga
photo: Kohei Omachi, Akio Nakamura, Kazuya Hayashi, Hiroshi Mizusaki
Discover Japan 2022年12月号「一生ものこそエシカル。」