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「天の製茶園」が森の再生として提案実践する“森のお茶会”とは?【前編】

2021.11.27
「天の製茶園」が森の再生として提案実践する“森のお茶会”とは?【前編】

無農薬、無化学肥料のお茶づくりを続ける茶園「天の製茶園」の3代目・天野浩さんは、さらなる新しい挑戦として森の再生や山づくりに取り組んでいる。新たな森の活用法として提案し、全国に伝えている「森のお茶会」の魅力に迫ります。

摘んでしおれさせた茶葉を揉むと、香りが上がってくる。この工程は発酵茶である紅茶ならでは。手揉みなら、もみ加減によって香りや水色の方向性を繊細に設計できる

森をつくり、種をまき、
日本、そして世界中の森でお茶会を

「風土が育む自然栽培のお茶をつくり続けるためには、よい土が必要であり、そのためには安定した山の環境が欠かせない」。その想いに行き着いてから、畑だけでなく山にも目を向けるようになった天野さん。そして目の当たりにしたのが、人間の介入で荒れた森の姿だった。日本では、「お金になる」という理由で杉など1種類の樹木だけを植栽する人工林がつくられてきた。単一の木が並ぶ林は、災害時にいっせいに倒れる、土砂崩れを起こすなどさまざまな弊害を引き起こす。そこに林業従事者の減少も重なり、山は荒れたまま放置されるようになる。

天野さんは人工林に手を入れて森を再生し、自然の山に戻す活動を開始している。その一環として、森のお茶会を行っている。お茶や食べ物などその森にあるものを集めて楽しむのがコンセプト。これまでも仲間とともに全国各地で実施してきた。

「日本の山間部には、山茶と呼ばれる焼畑農業で広がったといわれる茶の木があります。多くは西日本の地域に分布していますが、各地で森を構成する一員となっています。こういったお茶の木から葉を摘ませてもらえば、誰でも簡単にお茶をつくれます。自分たちでつくったお茶やお菓子を持ち寄って、自由に集うのが森のお茶会です。お茶の木は世界中にあるので、世界中のどこでも開催することができる。これまで、森の活用というと木を伐採して使う方向で考えられていましたが、森には中に入って楽しい時間を過ごす使い方もあります。全国には、同じように森の活用に頭を悩ませる地域があると思いますが、森のお茶会が各地で新たな活用法を考えるきっかけになるといいですね」

独自の調査により、沖縄から北海道まで全国に茶の木があることもわかった。地域で茶葉が手に入らないときは、天野さんに山茶を用意してもらうこともできるそう。一度お茶のつくり方を知れば、次からは自分たちだけで自由にお茶会を開催できる。地域ごとのスタイルでお茶会が発展していけば、その土地の新たな地域交流やコミュニティの場として森が機能していくだろう。

お茶とお菓子さえあれば、お茶会はできる。あとは「森がもてなしてくれる」と、天野さんは語る。

今回のお茶会は、森づくりの仲間である「FOLKHOOD」のアーティスト戸村糸希さんと左官職人の宮下空さんが演出を担当。同じく茶農家の「お茶のカジハラ」園主の梶原敏弘さんもお茶を持って参加

お茶会用のお茶はハンドメイドで

茶の木から葉を摘む。うまくお茶をつくるポイントは、葉のサイズを揃えること。バラつきは加工のムラや味に影響する
除湿機をかけて10時間ほど置き、萎凋(いちょう)させる。萎凋とは葉をしおれさせて、少し発酵させ香りの発揚を促すこと
葉を揉む。パン生地をこねるように揉むと、すぐに泡が出てくる。香り重視なら揉みを軽く、濃い水色を出すなら強めに
ぬれ布巾をかけ、30℃以下の多湿な場所で2〜3時間発酵させる。途中、裏表を返して全面を空気に触れさせるといい
発酵止め。家ではフライパンで炒るか、ドライヤーの熱風を当てるなどしてさっと火を入れ、酸化酵素の働きを止める
80℃くらいのホットプレートに二枚重ねのクッキングシートを敷き、茶葉を並べて1時間ほど置いて乾燥させれば完成

 

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text: Akiko Yamamoto photo: Yoshihito Ozawa
Discover Japan 2021年11月号「喫茶のススメ お茶とコーヒー」

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