「天の製茶園」が森の再生として提案実践する“森のお茶会”とは?【中編】
無農薬、無化学肥料のお茶づくりを続ける茶園「天の製茶園」の3代目・天野浩さんは、さらなる新しい挑戦として森の再生や山づくりに取り組んでいる。新たな森の活用法として提案し、全国に伝えている「森のお茶会」の魅力に迫ります。
「狙いのないお茶」が、
お茶の世界を広げる
森での活動を発足するにあたり、天野さんは、お茶本来の味を知ってほしいと、天の製茶園のラインアップとは異なる「森と種とお茶」ブランドの展開もスタートさせた。こちらは、いわば「つくり手の狙いがない」お茶だ。
「山茶でつくったお茶の味は、身体に染み入るような自然の味わいです。森のお茶会や『森と種とお茶』の商品を通してその美味しさを知れば、お茶選びの判断基準ができて、市販のお茶の見極めもできるようになる。飲み手が生産者を厳しく見るようになれば、つくる側も手が抜けないし、お茶業界にとっても、いい循環が生まれます。それに加え、『自分でつくるレベルでは出せない味がある』と実感してもらうことで、お茶の価格への意識も変わるはず。栽培方法や加工技術など、何にお金を払うのか納得して茶葉を購入していただけるようになると思います」
ナチュラルワインや自然派の日本酒は、個性が尊ばれ、飲み手も市場もほどよく成熟してきている。さてお茶は、同じような感覚で楽しめているだろうか? まずは天野さんのお茶を知り、眼を鍛える必要がありそうだ。
text: Akiko Yamamoto photo: Yoshihito Ozawa
Discover Japan 2021年11月号「喫茶のススメ お茶とコーヒー」