大分サステナブル・ガストロノミー
|風土と歴史が紡ぐ食の未来
豊かな自然と知恵が息づく大分。生産者や職人の情熱に触れ、一つの食材や料理の背景にある大分の食文化と持続可能な未来へのヒントを紐解く「大分サステナブル・ガストロノミー」。その最前線で尽力する3人の取り組みに迫る。
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大分サステナブル・ガストロノミーとは?
サステナブル・ガストロノミーとは、食材の産地から食卓に至るまで、持続可能な循環を育む考え方である。大分県が目指すのは、土地ならではの歴史や環境を守り、現代の感性でアップデートすることで、未来の食卓を豊かにし続けることだ。

もともと人は自然とともに生き、土地の恵みと向き合いながら暮らしてきた。大分県の各地には、その原点に立ち返り、人と人、地域と自然をつなぎ直そうとしている生産者たちがいる。
昔の知恵を生かしながらもいまの時代に寄り添う工夫と、自然と調和していこうとするその姿は、速さや便利さを価値としている時代にあって新鮮に映る。そんな生産者たちの想いが詰まった食材や生み出されるひと皿には、よりよい食の未来へのヒントがありそうだ。
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持続可能な食文化を支える事業者たち
01|鶏と人が心地よく共生し、循環
久住高原の「風のたまご」
(グリーンファーム久住 荒牧大貴さん)

標高700mの場所にある竹田市・久住高原。風と光が溢れるこの地に、三代にわたり“良い循環”を育ててきた「グリーンファーム久住」がある。代表の荒牧さんが追求するのは、鶏が心地よく生きる場所だ。鶏舎は「平飼い」という昔ながらの手法を貫き、鶏たちは冬は陽だまり、夏は木陰と、四季の変化に合わせて、のびのびと時を過ごす。

2024年に誕生した新ブランド「風のたまご」は、この土地の風土への敬意そのものだ。ここでは平均年齢約38歳の若い世代が活躍し、直営のカフェや菓子作りを通じて地域に新しい循環を生み出している。鶏、人、自然が無理のない関係で共生する姿に、サステナブルな食の原点が宿る。

02|一本釣りの誇りと、変化する海を活かす
(漁業協同組合 佐賀関支店 佐藤京介さん)

ブランド魚「関あじ・関さば」の産地、佐賀関。漁協の佐藤京介さんは、この海の豊かさと伝統を次世代へつなぐべく奔走している。荒々しい「速吸の瀬戸」で育つ魚を傷つけぬよう一本釣りで揚げ、魚体を“面”で見て価値を決める「面買い」は、漁師と漁協の信頼が生んだ職人技である。

しかし今、海水温の上昇によりメジロザメ属のサメが増加するという環境変化に直面している。佐藤さん達はこのサメを単に駆除するのではなく、「海のジビエ」として活用する道を選んだ。

身は学校給食や「シャークバーガー」へ、皮はなめして小銭入れへと、命を余すことなく使い切る仕組みを整えたのである。アジ・サバ・イサキ・ブリ・タイ・太刀魚の6つの伝統的な“関の魚”に、時代の変化が生んだ“第7の魚”のサメが加わったといえる。
さらに、2025年11月の大火災で大きな被害を被った港町は、いま復興の道を歩み始めている。自然環境の変化や予期せぬ災禍に直面しながらも、変化を受け入れ、海と共に生きるその姿勢は、持続可能な漁業の未来を力強く照らしている。
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03|江戸の知恵を世界へ。
発酵の扉をひらく「こうじ屋ウーマン」
(糀屋本店 浅利妙峰さん)

佐伯市で元禄時代から続く「糀屋本店」の代表・浅利妙峰さんは、自らを「こうじ屋ウーマン」と称し、日本の食を支えてきた“こうじ”の力を世界へ発信している。大きな転機は江戸時代の文献『本朝食鑑』との出合いであった。そこに記された「塩麹漬」をヒントに、2007年、現代の台所に馴染む万能調味料として「塩糀」を復活させたのである。

こうじが持つ酵素の働きは、食材のうまみを引き出し、私たちの健康をも支える。浅利さんはこうじを単なる商品ではなく「微生物と共に生きる知恵」として伝え、その熱意はいまや国境を越え、世界中の人々の幸せを願う活動へと広がっている。伝統を重んじながらも、現代のライフスタイルに合わせて知恵を更新し続ける彼女の歩みは、食文化の継承そのものであると言える。
土地と人が重なり、
大分の食文化は未来へとアップデートされる

「大分サステナブル・ガストロノミー」を支えているのは、単なる食材ではなく、それに関わる多様な「人」の熱意と創意工夫である。食は、人と自然、そして歴史が深く関わる。それぞれのフィールドで土地の記憶を慈しみ、創意工夫を凝らすことで、大分の食文化は新しく生まれ変わり続け、次世代へと受け継がれていく。多様な思いが重なり合う食材や料理を味わうことは、この土地の未来そのものに触れる体験になる。食を通して土地と出会う旅へいざ。
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