松本栄文さんが案内する、雅やかな「有職料理」の世界
御所周辺では公家の食文化の名残を感じさせる「有職料理」が堪能できる。公家と武家の文化が合わさり変化を遂げた有職料理は日本料理の歴史そのもの。松本栄文さんの案内の下、美食をめぐった。
花冠陽明庵主人、作家。日本食文化会議理事長。「日本文化を愛でる会」を主宰し日本の伝承・伝統文化の普及に努める。著書『日本料理と天皇』は、料理本のアカデミー賞と称されるグルマン世界料理本大賞の2015年度最高位を受賞
これがないとはじまらない!
有職料理は舞台が命
日本料理と天皇についての著書もある松本栄文さんは「有職料理は神事や年中行事と密接な関係があります」と語る。古来、日本人が食してきたのは「節振る舞い」と呼ぶ、神事や年中行事の供物(神饌)の下げ渡し。それをいただく儀式(直会)が、現在伝わる御節料理のルーツだという。
「貴族社会が訪れると、その御節料理より遥かに豪華な大饗料理が成立するのですが、後に台頭する武家は、それをさらにアレンジした本膳料理を確立します」。力を見せつける目的もあった本膳料理は脚付き膳で料理を提供。多い時には47膳も用意するほど贅沢なものだった。
「その文化が公家社会に入り込んだのが有職料理。けれども当時の公家たちは質素で、武家のような贅沢はできません。そこで考えたのがお飾り。本膳料理のようにたくさん御膳を用意するけれど、中には飾りだけというものもありました。ですから有職料理は、お飾りという知恵をもって継承された料理といえるのです」。
西陣の老舗・萬亀楼で食せる有職料理もまた、一般的な和食コースに見られない飾りが、華やかで雅やかな公家の世界を表現している。
有職料理大解剖
重用の節句の献立例①先付②煮物椀③お造り④嶋台⑤焼物⑥比呂女(昆布)⑦煮物椀(通常煮物椀は1種。今回特別に2種紹介)
文=古都真由美 写真=板野賢治
2019年10月号 特集「京都 令和の古都を上ル下ル」
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