温泉カメラマン・杉本 圭が選ぶ
名建築に浸れる温泉
完全保存版!プロ厳選のいい風呂とサウナ【Part 2】
それぞれの道に精通する4名の愛好家がおすすめする秘湯、湯治宿、銭湯、サウナを紹介。Part 2は、温泉カメラマン・杉本 圭さんが「名建築に浸れる温泉」5つをセレクト。伝統を守りながら、独自の美学を貫いてきた温泉宿にはそれぞれの地域に根づいた文化が凝縮している。
杉本 圭
1975年、福岡県生まれ。地元出版社でレジャー情報誌の編集、デザイン、営業を経験。退職後、専門学校でウェブ知識を学び、カメラマンとして独立。温泉ソムリエの資格をもち、現在は温泉カメラマンとして活動
《温泉愛好家歴》
約30年
《温泉にハマったきっかけ》
学生時代、バイクで走る目的地として温泉に行き、その記録として写真を撮るように。さまざまな温泉地を旅するうち、どんどん温泉にのめり込んでいった
《温泉旅に決まって持っていくもの》
一澤信三郎帆布の「湯道かばん」にサウナ用の今治タオルを入れて。ポケットには500円玉を
《独自の入浴法》
風呂に入るより撮りたい気持ちが勝つため、脱衣所でほかの利用客がいなければ、カメラを持って真っ裸で風呂場へ。湯船に浸かって見える景色を収める
長野県・山ノ内町
歴史の宿 金具屋
風呂よし、建築よし、温泉郷の湯めぐりよし!
泉質のよさで知られる信州・渋温泉にある登録有形文化財の宿。「歴史ある宿でも近代化に伴って湯船が端に追いやられることが多いですが、金具屋は変わらない景色を守っています」。源泉は3つ。館内に8つの風呂があり、1950年につくられた浪漫風呂はローマの噴水を模して洋風に。湯船の脇、地下3mほどから湧く源泉が湯船に満ちている。
《施設Data》
住所|長野県下高井郡山ノ内町平穏2202(渋温泉)
Tel|0269-33-3131
料金|1泊2食付1万8700円〜(税・サ込) ※日帰り入浴はなし
客室数|28室
IN|15:00
OUT|10:00
定休日|不定休(月3日間程度)
《温泉Data》
泉質|ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉ほか
泉温|50.0〜98.0℃
湯の色|無色透明、微黄濁色
加温|なし
加水|なし
かけ流し|〇
適応症|アトピー性皮膚炎、切り傷、皮膚乾燥症など
風呂の種類|露天風呂、大浴場内湯、貸切風呂
福島県・会津若松市
会津東山温泉 向瀧
会津藩の美意識が息づく文化財の宿
「かつて会津藩の指定保養所だった建築は、国の登録文化財第1号。質素倹約を徹底した藩の美意識が随所に受け継がれています」。湯治湯の風情を残す「きつね湯」は、まず風呂の顔ともいえる湯口が美しい。天井に彫刻が施され、排水溝さえ市松のような模様の一部に。3つの貸切風呂や、もちろん客室でも日本の美に触れることができる。
《施設Data》
住所|福島県会津若松市東山町大字湯本字川向200
Tel|0242-27-7501
料金|1泊2食付1万9950円〜(税・サ込) ※日帰り入浴はなし
客室数|24室
IN|15:00
OUT|10:00
定休日|なし
《温泉Data》
泉質|硫酸塩泉
泉温|57℃
湯の色|無色透明
加温|なし
加水|なし
かけ流し|〇
適応症|神経痛、筋肉痛、関節痛など
風呂の種類|大浴場内湯、貸切家族風呂
広島県・廿日市市
庭園の宿 石亭
オーナーの粋なセンスと遊び心にファン多し
宮島の対岸で、瀬戸内の海を彼方に見下ろす名旅館。日本庭園を囲むように客室が連なり、書斎や庭には隠し部屋のような小空間もある。「大浴場も客室風呂もオーナーの美意識が貫かれています」。湯上がりは北欧の名作椅子に座って冷えたシャンパンを。穴子飯などといった料理も定評あり。冬は牡蠣が美味しく、食後のデザートも大満足。
《施設Data》
住所|広島県廿日市市宮浜温泉3-5-27
Tel|0829-55-0601
料金|1泊2食付3万8500円〜(税・サ込) ※日帰り入浴はなし
客室数|12室
IN|15:20(11:00のプランもあり)
OUT|10:20(12:00のプランもあり)
定休日|なし
《温泉Data》
泉質| ナトリウム-炭酸水素塩泉
泉温| 69.3℃
湯の色|透明
加温|なし
加水|あり
かけ流し|〇
適応症| 筋肉痛、疲労回復、切り傷など
風呂の種類|混浴露天風呂(脱衣所は男女別)
群馬県・みなかみ町
法師温泉 長寿館
貫禄ある木造の湯殿で足元湧出を堪能する
鹿鳴館を模して、明治時代に建てられた混浴の大浴場「法師乃湯」。「木造建築でありながら広い空間に支柱は1本もなく、日本の粋と洋の意匠が見事に調和しています」。源泉は足元に。湯船の下に敷き詰めた玉石の間からポコポコと湯が湧き出ており、4つの浴槽は微妙に温度が異なる。国登録有形文化財の宿自体も魅力にあふれている。
《施設Data》
住所|群馬県利根郡みなかみ町永井650
Tel|0278-66-0005
料金|1泊2食付1万9950円〜(税・サ込)、日帰り入浴大人1500円、日帰り入浴3歳〜小学生500円
客室数|33室
日帰り入浴利用可能時間|11:00〜14:00
IN|15:00
OUT|10:30
定休日|水曜、ほか不定休あり
《温泉Data》
泉質|カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
泉温|41.0℃
湯の色|無色透明
加温|なし
加水|なし
かけ流し|〇
適応症|やけど、切り傷、動脈硬化症など
風呂の種類|大浴場内風呂、野天風呂、混浴内風呂
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1|温泉カメラマン・杉本 圭が選ぶ、大自然と一体化できる秘湯
2|温泉カメラマン・杉本 圭が選ぶ、名建築に浸れる温泉
3|温泉ビューティ研究家・石井宏子が選ぶ、心身の悩みを解決する湯治宿
4|『銭湯図解』の著者・塩谷歩波が選ぶ、日常のごほうびに行きたい東京銭湯
5|プロサウナー・松尾 大が選ぶ、人間から動物に還れる自然派サウナ
text: Yukie Masumoto photo: Kei Sugimoto
Discover Japan 2023年2月号「癒しの旅と温泉。」