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皇室献上級のカニは福井にあり!【前編】
冬の味覚の王様「越前ガニ」

2020.12.9
皇室献上級のカニは福井にあり!【前編】<br><small>冬の味覚の王様「越前ガニ」</small>
身の厚みがあって、脚がしゅっと長いのが越前のズワイガニの特徴。よく見ていただくと、ほかの地方のズワイと違うことがわかるはず。黄色いダブルタグが最高級の越前がにである証だ

冬の味覚の王様といえばカニ。とくに、みずみずしい甘さと淡いけれど深い旨みは越前がにが随一。そのため、皇室献上を許されています。なぜ献上に値するのでしょうか。11月6日解禁になったばかりの三国港の夕セリと名宿をたずね、そのわけを探ってみました。前編では、活気ある夕セリの様子と、極上のカニの秘密をお届けします。

※越前ガニの解禁期間は、2020年11月6日~2021年3月20日

新鮮な理由は夕方18時からのセリにあり!

真夜中に出航した船はその日の夕方には港に戻り、18時にセリがはじまる。これがおいしさの大きな理由。ここで仕入れたものがすぐに宿や料理屋のテーブルに並ぶ

競り子と仲買人の真剣勝負。昔は、この量の2倍も4倍もあったという。ますます稀少価値が高くなる越前ガニ。それゆえ競りは熱くなる。しかも、食卓には、いまかいまかと待つ客人がいる。いま仕入れたものがそのまま宿の食卓に並ぶのが越前がに「夕市」の魅力なのだ。

三国港と漁場の近さが
極上のカニの秘密

夕焼けで染まる中、次々と港に戻る漁船群。カニは船の中で仕分けされ、越前がにの証である黄色いタグがつけられ競り場におろされる。一年のうちでもっとも活気とエネルギーがみなぎる季節だ

なぜ越前がにが、全国のカニファンから、食通といわれる食に感度の高い人たちから支持されるのか。そのわけはあまり語られることがなかった。今回は解禁に合わせて秘密を探ってみた。なるほどとうなる理由がそこにはあった。

この美しい淡い朱色が本当の越前がにの色。黄色いタグは15年前からで福井が発祥。ほかのカニの産地も同じような色違いのタグをつけはじめている

11月6日午前0時。福井県三国港。時報とともに真夜中の海に浮かぶ十数隻の漁船が漁を開始する。待ちに待った越前がに漁が解禁する瞬間だ。そして同日夕方、赤い宝石を山積みにして大漁旗をはためかせ漁船が戻ってくる。透き通るような朱色に輝いたカニは大中小に仕分けされ、越前がにの証である黄色いタグがつけられ整然と市場に並ぶ。

同日18時。すぐさまセリがはじまる。競り人たちの威勢のいい声が場内に響き渡る。あっという間に競り落とされ、仲買人からそれぞれの店へ、宿へと運ばれお待ちかねの客人の食卓に並ぶ。驚くべきこの速さ。獲れてから食卓に届くまですべて同日。越前ガニのおいしさの理由はまさにこれだ。沖に何日も停泊し、冷凍して港に持って帰るということをしないから新鮮なのだ。

もちろん、カニが育つ水温、潮の流れ、エサ、土壌などの条件が満たされた最高の漁場が港から近い条件も味方している。ズワイガニは、北は北海道からロシア、南は山陰まで広く分布しているが、なかでも福井県で水揚げされ厳選されたオスのズワイガニは「越前がに」と呼ばれ、身に厚みがあって脚がひときわ長い。その身の甘さ、みずみずしさが格段に違う。淡い、けれど深い旨みが越前がにならでは。カニファンにはこの違い、明確にわかってしまうのだ。

港から近い最良の漁場で、小型の船が行って帰って行って帰ってと繰りかえすことによって、とにかく新鮮な越前がにを市場に出すシステムが構築されている。それが越前がにの美味しさを全国一、いや世界レベルにしているのだ。

もうひとつ美味しさの秘密を付け加えるなら浜茹での技術をあげておこう。昔から福井では「カニ見十年、茹で一生」といわれている。カニの良し悪しを見分けるには10年かかるが、おいしく茹でるには一生かかるほど高度な技術と経験がいるという意味だ。福井のカニの美味しさは実はここにもある。地元でその価値を体験するもよし(温泉とともに!)、最近充実してきたカニのお取り寄せでの購入もよし。味の違いをご堪能あれ。

これらいい条件がそろっている越前がには、全国で唯一、皇室献上を許されたカニでもある。献上に値するカニは、当然ながらさらに特別な条件が加わる。味がのる年明け1月以降のもので、十分に成熟した1・1㎏以上の色艶、形のいいものだけが献上ガニに選ばれる。通常、越前がにには黄色い認証タグがつけられるが、献上ガニ級にはふたつ目の黄色いタグがつけられる。この“ダブルタグ”こそ食通、垂涎の印なのだ。タイミングさえよければ献上ガニを食すことも可能。もちろんお値段はそれなり。お覚悟を。

そしてセイコガニのことも付け加えねばならない。セイコガニはズワイガニのメスのこと。オスより小ぶりだが、凝縮した身の甘み、なにより外子内子の濃厚な旨みが、それはもう感動的な美味しさ。本当のカニ通はこちらを好むという。1杯1000〜3000円程度で比較的お手頃。ただし漁獲期間は11月6日から1月10日までと短い。ズワイガニは3月20日までが漁獲期間だが、セイコガニ目当てならお早めに。

この日揚がった越前がに。甲羅部分は17㎝、脚を広げると70㎝ほど。11月は時化が少なく漁をしやすいが12月から1月は味がいいとか
仲買は37軒。競り子は4人で2年以上の修行が必要。1杯3〜4万円という値がつくことも

越前がにお取り寄せ情報

福井まで行けないけれど、越前がには食べたい!という方は取り寄せるという手も! おすすめのお取り寄せ先をご紹介。

蟹の坊
名旅館「望洋楼」のカジュアル姉妹店。越前がにはお手頃なものから献上ガニまで幅広く対応してくれる。主人自ら厳選したカニをお届け。
住所|福井県坂井市三国町宿1-16
Tel|0776-82-3925
www.echizengani.jp

天たつ
日本三大珍味のひとつ「汐雲丹(しおうに)」で知られる老舗。越前がには水揚げ当日に浜茹でしその日に発送。甘海老の昆布〆など旬の肴も豊富。
住所|福井県福井市順化2-7-17
Tel|0776-22-1679
www.tentatu.com

福井県沖の海の豊かさをSDGs視点で解説!

人間、地球及び繁栄のための行動計画として、持続可能な開発目標として国際的に採択されたSDGs。17の目標のうちゴール14の「海の豊かさを守ろう」に注目してみると、福井県は「漁獲量及び養殖収獲量の前年比増減率(2019年度)」で全国第3位です。

漁獲量及び養殖収獲量が増えたことを示すデータは、福井県沖の海の豊かさをあらわす一つの指標と言えるでしょう。おいしい越前蟹をこれからもずっと楽しみ続けられるように、海の生態系を守る行動を意識したいですね。
(解説協力:サステナブル・ラボ株式会社

≫後編を読む

text:Akiko Tomoda photo:Akito Ochiai
2012年12月号 特集「冬の味覚でおもてなし」


≫越前がにを満喫できる「開花亭」。犬養裕美子の新・レストラン名鑑

≫カニの概念を変えた松葉ガニフルコース「かに吉」。ローカル美食旅・鳥取県

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