世界初の包括的回顧展
「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」
京都とウィーンの二拠点デザイナー・上野リチの全貌
豊かな色彩のテキスタイルデザインを中心に、20世紀初頭に活躍した上野リチ。ウィーン工芸学校でヨーゼフ・ホフマンらにデザインを学び、彼の下で働いていた京都出身の建築家・上野伊三郎と結婚。その後、ウィーンと京都を往復して多くの作品を生み出した。三菱一号館美術館で開催中の本展は、貴重なリチの作品がウィーン、京都、ニューヨークから集結する世界初の大規模回顧展。日本でも愛された彼女の作品に触れながら、約100年前に二拠点で活動したデザイナーの生き方も学びたい。
ウィーンに生まれ、
海を渡った女性デザイナー
1893年、世紀末芸術の爛熟期にあったウィーンで生まれたフェリーツェ・リックス(後の上野リチ・リックス)。ウィーン工芸学校に進んだリチは、先進的なデザインを生み出したウィーン工房のヨーゼフ・ホフマンらに師事し、才能を開花。卒業後は工房の一員となり、デザイナーとして頭角を現した。その後、ウィーン留学中の建築家・上野伊三郎と出会い、結婚して来日。第二次世界大戦前は京都とウィーンを往復して活動を続け、戦後は京都でデザイナーとして活躍するとともに、後進の指導にも励んだ。
独自の感性で生み出した
20世紀の新しいデザイン
19世紀末のウィーン工房は、色数を限り、直線を組み合わせる、整然としたデザインを特徴としたが、リチは体の動きを利用した柔らかく滑らかな曲線を用いて天賦の色彩感覚を発揮。多彩なモチーフを自在在に組み合わせたデザインを数多く生み出した。
リチがモチーフとしたのは、アネモネ、スイートピーなどの草花、にわとり、象、魚などの動物、麦、蕪、人参などの農作物、キャンディーや殻といった身の回りの品々。誰もが知るものを組み合わせた絶妙な配置のデザインは、どれも密度の濃い構成でありながら全体として優しく温かな雰囲気に満ちている。
また、リチが創り出すテキスタイルや壁紙は、青系、緑系、赤系など、色のバリエーションが豊富。同じ図柄でも、大人っぽかったり、かわいらしかったりと、その幅広さも彼女のデザインの魅力のひとつだ。
あくまでもウィーンのデザイン、
そのむこうに日本の姿
1926年に京都に移住してから1967年に没するまで、リチのデザインの基点はウィーンにあった。日本の伝統工芸の技法に学んで七宝の小品を制作したり、夫・伊三郎の設計した住居や店舗などのインテリアに携わるなど、その活動領域を広げたものの、日本の意匠の影響を露骨に受けたり、日本独特のモチーフを描いたりすることはほとんどなかった。
それにもかかわらず、リチのデザインが日本でも広く受け入れられたのは、ウィーン工房に大きな影響を与えていた日本の美術品や工芸品の特質が彼女のデザインの底流にあるからかもしれない。
上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー
会期|2月18日(金)~5月15日(日)
※展示替えあり
会場|三菱一号館美術館
住所|東京都千代田区丸の内2-6-2
時間|10:00~18:00(祝日を除く金曜及び会期最終週平日、第2水曜、4月6日は~21:00)
※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜(2月28日、3月21・28日、4月25日、5月2・9日は開館)、4月12日
料金|一般1900円、大高生1000円、中学生以下無料
Tel|050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://mimt.jp/lizzi