FOOD

熊本の銘酒「産土」を起点に。
橘ケンチが巡る
“地酒”探しの旅【後編】

2022.2.12
<small>熊本の銘酒「産土」を起点に。</small><br>橘ケンチが巡る<br>“地酒”探しの旅【後編】

独自の食文化と歴史が古くより根づいた熊本県。県北の菊池川流域にあり、丘陵地に囲まれた豊かな大自然の中で、1902年より酒造りをしている「花の香酒造」は、伝統に独自の哲学を取り入れた〝原点進化〟の酒造りで注目を集めている。橘ケンチさんがその酒蔵を起点に、地域のテロワールを探りに巡ります。

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1泊2日で
熊本の美味と文化を堪能。

花の香酒造を後にして訪れたのは、車で約10分の木彫家・上妻利弘さん一家が営むギャラリー&カフェ「kinon」。国内の高級ホテルや海外でも高く評価されているバターナイフ「テタール」をはじめとした作品を鑑賞した後は、奥さまの貴子さんがプロデュース、娘の野乃花さんがレシピ開発などを手掛ける無添加玄米スコーンをいただきながら談笑して寛ぐ。その日の夜は、知る人ぞ知る名宿「豆富屋やまと」へ。全5棟すべて離れ一棟建ての部屋はラグジュアリーながらも、寝室が客室内の中庭にしつらえた露天風呂に直結する遊び心あふれるつくり。ケンチさんは心からリラックスしながら、手づくりの豆腐や馬肉料理、地元の銘酒に舌鼓を打っていた。

翌日は和水町三加和地区に点在する霊験あらたかな「八つの神様」や92の出土品のほとんどが国宝だったことで名高い江田船山古墳などの史跡をめぐる。最後は市内に戻り「商工クラブ .know」へ。薪や炭の熾火だけで仕立てる県産食材のイノベーティブな料理を堪能しながらケンチさんが振り返る。

「銘酒をはじめ、食や温泉、人、文化を感じる熊本の旅は、とても1泊では足りないくらい魅力が多彩。ひとつのスポットだけでなく一緒にめぐることで、ここにしかない豊かなテロワールを体感することができました」

1泊2日のおすすめルート

<1日目>
10:00 阿蘇くまもと空港

13:00 「花の香酒造」で美酒を堪能

15:00 「kinon」で買い物&軽食

17:00 「豆富屋やまと」で夕食&宿泊

<2日目>
10:00 「豆富屋やまと」出発

11:00 「八つの神様」めぐり

14:00 「和水町の古墳」めぐり

18:00 「商工クラブ .know」で夕食

世界的な木彫家の作品を販売
木の温もり漂うギャラリーカフェ

国内外のレストランや高級ホテルで使用されるバターナイフやカトラリー、うつわなど上妻さんの手彫り作品や奥さまセレクトの雑貨を販売。素材一つひとつにこだわった無添加スコーン(300円〜)もぜひ。

2時間以上炒って粗挽きにした無農薬玄米やOMEGA3卵など素材も製法もこだわったスコーンは、SNSで即日完売するほど人気

kinon
住所|熊本県玉名郡和水町板楠2224
営業時間及び定休日|要事前問合せ
Instagram(@kinon09)にて問合せを受付。カフェは2021年春オープン予定。

美肌の湯と山鹿の美味を
プライベートな空間で味わう

全5棟離れの客室に内湯と露天風呂をしつらえたハイエンドな隠れ宿。アルカリ性単純硫黄温泉のとろとろな肌触りは「美肌の湯」と称されるほど心地よい。国産の地大豆と深海から採れたにがりでつくる至高の豆腐をはじめ、稀少な山鹿牛や馬肉料理が静寂の森の中で楽しめる。

馬刺しや熟成山鹿牛、馬肉の豆乳しゃぶしゃぶなど質も量も満足度が高い

豆富屋やまと
住所|熊本県山鹿市平山211
Tel|0968-43-8255
料金|1泊2食付4万2500円〜
IN|15:00
OUT|11:00
客室数|5室
www.yamato-ryokan.jp

趣深い庭園を眺めながら美食を堪能
築100年以上の町家を改装して誕生した複合施設「商工クラブ」内のレストラン。黒毛和牛や新鮮な魚介など熊本県産食材の魅力を、囲炉裏だけで丁寧に引き出した斬新なフュージョン料理が、美酒とともに満喫できる。

商工クラブ .know
住所|熊本県熊本市中央区西阿弥陀寺町6 商工クラブ1F
Tel|096-201-2041
営業時間|18:00〜(最終入店〜20:00)
定休日|水・日曜
https://showkoclub.jp/gourmet/know

熊本県産黒毛和牛のサーロイン
ウエットエイジング

日替わりコースは7〜8皿。この日のメインはウェットエイジングで赤身の旨みを引き出し、人参のクリームでいただく熊本県産黒毛和牛のサーロイン
天草の天然タイ
カリフラワー キャビア

天草産の天然鯛を炭火で焼き、クリーム仕立てのカリフラワーとキャビアを合わせたひと皿。素材の持ち味をシンプルに引き立てる絶妙な火入れ加減が魅力
ホタテのババロア
殻付きホタテをバターで焼き、ゼラチンで固めた前菜。なめらかなテクスチャーの中に、ホタテ本来のやさしい甘みと旨み、バターのコクが融合

隠れたパワースポット
「身体にまつわる八つ神様」めぐり

目の神様
(熊本県玉名郡和水町)
戦国時代に惨殺された岩本と名乗る武将を奉った、通称「岩本さん」。無病息災の祈願所で、特に目の病に御利益があるとか
イボの神様
(熊本県玉名郡和水町大田黒)
いぼ取りに効能があるとされる。年齢の数だけ煎った大豆を献上し、御神体の巨石をなでた手で患部をさする習わしがある
胃の神様
(熊本県玉名郡和水町野田)
胃病に御利益がある神さまとして伝わる。胃弱の人がお参りを続けると、元気を取り戻すという逸話をもつ神さま
性・腰の神様
(熊本県玉名郡和水町西吉地148)
農耕生産増強に寄与した坂梨七郎右衛門を祀る「性」の神さま。子孫繁栄や安産、夫婦和合の神として崇められている
歯の神様
(熊本県玉名郡和水町西吉地23)
歯がうずくときに白砂、または米をお供えして参拝すると、歯の痛みを鎮めてくれると伝わる日本でも珍しい神さま
命の神様
(熊本県玉名郡和水町西吉地1289)
生死に関わる病気のとき、一生に一度だけ平穏を願えば必ずかなうといわれている、異色の「命」の神さま。御神体は石
耳の神様
(熊本県玉名郡和水町東吉地)
肥後国衆一揆が起こったとき、耳が不自由で戦死した柳川由布大炊助の墓が御神体。火吹き竹を借り、耳に当てて参拝する
手足の神様
(熊本県玉名郡和水町板楠2759)
上益城郡嘉島町の足手荒神を分霊して祭祀したと伝わる。白い池は「竜神がくれた乳の水」としていまも語り継がれる

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」

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