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奈良で新しいコミュニティ「はじまりのムラ Coto Coto」がスタート!
|はじまりのムラ CotoCoto 第1回

2021.11.28
奈良で新しいコミュニティ「はじまりのムラ Coto  Coto」がスタート!<br><small>|はじまりのムラ CotoCoto 第1回</small>

Discover Japanの奈良支部に認定されたコミュニティ「はじまりのムラCotoCoto」。ここでいう「ムラ」というのは仮想の「ムラ」で、このコミュニティには奈良県を中心に、全国各地、海外に活躍している人もいます。そんな「ムラ」では月1回、奈良を舞台に勉強会を開き、さまざまな人が考える奈良と、その奈良の未来についてお話する場があります。この連載ではその活動を紹介していきます。

三浦雅之さん
京都府出身。1998 年から奈良県内の在来作物の研究や栽培保存をはじめ、2002年に農家レストラン『清澄の里 粟』を、2012年に『粟 ならまち店』をオープン。大和野菜を中心とした第6次産業による事業展開に取り組む。妻・陽子さんとの共著に『家族野菜を未来につなぐ レストラン「粟」がめざすもの』(学芸出版社)がある。www.kiyosumi.jp

地域のことを足下から学び、
生業に生かすコミュニティ

――本連載「はじまりのムラ Coto Coto」のスタートにあたって、Discover Japan編集長・高橋とともに、その前段となった雑誌での連載「はじまりの奈良」を振り返りたいと思います。

三浦 もともとは2014 年夏頃、高橋さんから新店舗のご相談をいただいて。

高橋 そうなんです、奈良市の観光事業のひとつをプロデュースするというお話をいただき、その場づくりを我々が引き受けさせていただくことになって、運営者として三浦さんを頼ったわけです。快く引き受けていただきました。

三浦 2015年5月にオープンし、コロナを経て奈良市の「賑わいづくり」を目的としたこの事業が終了するまでの約6年間運営させていただきました。

高橋 その店名を『coto coto』としたのは、古都と、地元の人が盛り上がる「ことを起こす」という意味、さらにインバウンドを意識して外国人でも呼びやすいように音を連続させたという理由がありました。地元でコミュニティができるといいなと考えていたので、三浦さんが「はじまりの奈良フォーラム」という勉強会のコミュニティを立ち上げてくださって、感謝しています。

三浦 高橋さんがcoto cotoのオープニングに向けて打ち合わせを重ねていく中で「奈良には全国に、世界に自慢できるものがたくさんある」ということをお会いする度に熱く語っておられて(笑)。コンセプトは「奈良自慢」だと。その言葉にインスパイアされて足元を見つめ直してみると、かつて都があったからこそ律令制に国技の相撲、そして食文化としては饅頭、清酒、奈良漬、工芸として奈良墨、奈良晒、奈良筆などその歴史を紐解けば 多くのはじまりを奈良に見出すことができました。 温故知新あるいは不易流行という言葉があるように、奈良に数多くあるはじまりを学ぶことが地域の歴史・文化資源を生かし、新たな魅力を創造する種になるはずという思いが重なりDiscover Japanとのコラボレーションではじまりの奈良フォーラムがスタートしました。そして、毎月開催した勉強会の内容をアーカイブスとして雑誌で記事にしていただき、トータルで45回も連載させてもらいました。奈良の歴史文化資源アーカイブスの完成ですね。

高橋 これからは本質的なコミュニティが求められる時代だと思っていて、「はじまりの奈良」のコミュニティはお手本になるのではないかと。いろいろな分野の方が地域のことを足下から学び、前を向いてそれぞれ生業に生かしているところがすごいし、本質だと思っています。

三浦 はじまりの奈良フォーラムでは勉強会の後に、懇親会を通じて参加者の親交を深めてきました。 地方創生というのは何をやるかと同じくらい誰とするかが大切になってきます。 coto cotoという拠点が生まれたことで、理念をもって奈良で活躍をされている行政職員、メディア関係者、農家、シェフ、 そしてさまざまなクリエイターに研究者といった方々とのご縁がつながって、いつの間にか100名を超えるコミュニティに育っていました。

ウェブとリアルが融合したコミュニティ
はじまりのムラ Coto Coto

はじまりの奈良フォーラムでさまざまな有識者を招いて登壇いただく勉強会を開催していく中で、「はじまりのムラCotoCoto」へと発展するコミュニティが誕生した

三浦 これからのコミュニティは、価値観の共有が大きな鍵になると感じています。
僕はコミュニティの遷移って、「ち」という言葉で表せると思っています。最初はコミュニティって「血」、つまり血縁で成り立っていたのが、農耕がはじまることで「地」、地縁になります。それが次に高度経済成長で企業社会の「知」に変わり、やがてリーマンショックを経て価値観の「値」に移り変わってきていると。「地」から「知」へ変わるタイミングでは、農村から企業社会へと受け継がれてきた年功序列と終身雇用というエッセンスが受け継がれていきました。そしてリーマンショックを経てそれらが消えていった後に到来した「値」の時代を促進しているのがモータリゼーションとSNSというふたつのインフラの進化だと思います。いわば、血縁関係や土地に縛られず、会社組織にも縛られず、はじめて人が個としての価値観に基づいたコミュニティをつくれる時代が到来したのではないかと考えています。
移住だけでなく、関係人口、交流人口が増えることで、新たなつながりが生まれて個人も地域も幸せに近づく。地方創生というのは、人が幸せに生きていく場所の再構築だと思っていますが、奈良にはそうなるべき場所と可能性がたくさんあるように感じています。その実現の為には血縁、地縁、知縁、値縁という多層的なコミュニティを紡いでいける新しいうつわが必要なのではと。
そこではじまりの奈良フォーラムで生まれたコミュニティを「はじまりのムラ Coto Coto」にアップデートしようと考えました。

三浦 はじまりのムラ Coto Cotoの名称は漢字が伝わる以前に日本で使われていた大和言葉を参考にして決めました。村の語源を調べると、「む」は大和言葉で「群れる」とか「物事がつながる」、「集まる」という状況を表していて、「ら」はそれが変化するという意味があり、物事が結びついて集まっていながらも固定していない、というのがまさに村だと考えれば、新しいウェブとリアルが融合したコミュニティによるムラづくりのイメージにピッタリだなって思ったのです。

高橋 「ムラ」というのが新しいですよね。土地に縛られない「ムラ」になるんじゃないかなと。

七つの風でコミュニティを紡ぐ、
七つの自給率でコモンを紡ぐ

三浦 ウェブとリアルが融合したムラづくりでは、「七つの風でコミュニティを紡ぐ、七つの自給率でコモンを紡ぐ」をテーマにしています。七つの風とは気候風土の「風土」、営まれる農業や漁業の「風味」、その追求で生まれる景観の「風景」、自然と調和して生きていくための知恵の「風習」、生活工芸の「風物」、生活文化の「風儀」、以上6つの風の中で培われる価値観の「風情」を表し、七つの自給率とは人が生きていくために不可欠な水、土、木の恵みを合わせた「水土里の自給率」、「食料自給率(種の自給を含む)」、「学びの自給率」、「健康の自給率」、自然素材から生活工芸を生み出す「生業の自給率」、「助け合いの自給率」、以上6つの自給率の中で生まれる「豊かさと幸せの自給率」を表しています。
奈良にご縁深いさまざまな能力をもつメンバーとともに生きることを豊かに、楽しみな仕事も生み出していけたらと構想しています。

――「はじまりのムラ Coto Coto」は Discover Japan の奈良支部に認定されたそうですね。

高橋 全国第1号です。いまのところ、ほかに支部はありません(笑)。

三浦 ありがとうございます。今後はウィズコロナの状況も考慮しつつ、月一回の勉強会・交流会に加え、SNSを活用して勉強会のアーカイブス化などを行う予定です。
私はオーガナイザーを務めさせていただきますが、高橋さんはじめDiscover Japanのスタッフの皆さんには奈良のスーパー交流人口として引き続き気持ちをともにしていただけるとうれしいです。
高橋:化学反応が今後も起こっていくことを期待しています! 活動についてはウェブで連載していきましょう。

三浦 Discover Japan×はじまりの奈良の第二章のはじまりですね。引き続きよろしくお願いします !

planning cooperation: Masayuki Miura text: Yoshino Kokubo, Masayuki Miura photo: Yuta Togo

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