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世界ではスタンダード!?
これからはSDGsが投資の対象。
SDG IMPACT JAPAN/​SDGインパクトジャパン

2021.9.24
世界ではスタンダード!?<br>これからはSDGsが投資の対象。<br><small>SDG IMPACT JAPAN/​SDGインパクトジャパン</small>

SDGsと合わせて語られることも多いESG投資。いま投資目線でSDGsを考えることが世界基準になっています。社会課題を解決する“意思のあるお金の流れ”によって、未来はどう変わっていくのでしょうか?

小木曽 麻里(こぎそ・まり)
SDG IMPACT JAPAN 代表取締役 ​CEO。SDG実現のためのビジネス、特にSDGファイナンスに幅広く携わる。世界銀行資本市場部、世界銀行グループ多国間投資保証機関東京代表などを歴任。2017年には国内初のジェンダー投資ファンド・アジア女性インパクトファンドを設立。W20日本デリゲート、国際協力機構海外投融資委員会有識者委員などを務める

Bradley Busetto(ブラッドリー・ブセット)
SDG IMPACT JAPAN 代表取締役 CEO。国連のサステイナブル投資分野において主導的な役割を果たす。直近ではシンガポールにある国連開発計画(UNDP)のグローバルテクノロジーセンター長を務めた。また、国連勤務以前にはインドネシアなどで人道支援に携わり、アルメニアでは同国初の自由で公正な選挙を支援し同国外務省より名誉勲章を授与された

SDGファイナンスに特化した投資会社
「SDG IMPACT JAPAN」とは?

サステイナブルファイナンス(持続可能な社会の実現のための資金活用)に特化した投資アドバイザリー企業。世界的なプロフェッショナル、サステイナブルファイナンスの第一人者など、多様なチームによるSDGsにフォーカスした投資ファンドの組成・運用、金融機関や企業向けインパクト評価ツールの提供、インパクトファイナンスのアドバイザリーを行う。世界のインパクト案件と日本企業や投資家のマッチングも実施する。

SDG IMPACT JAPAN
設立|2021年
メンバー|取締役会長/谷家 衛、代表取締役 ​CEO/小木曽麻里・
ブラッドリー・ブセット、取締役/加藤康之
www.sdgimpactjapan.com

知っておきたい「ESG投資」とは?

投資先(企業など)を選ぶ際、従来の財務的な要素だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の観点から将来性や持続性などを分析・評価した上で行う投資。

SDGインパクトジャパンが掲げる
投資の理念とは?

SDGインパクトジャパン(以下、SIJ)は、お金を使ったり、投資したりすれば、それが少額であっても必ず社会にインパクト(影響)を与えると考え、社会問題を解決するためのお金の流れを日本、そして世界中で増やしていくことを目指す。

——投資の分野において、SDGsにはどのような可能性があるのでしょうか。

小木曽さん(以下、小) これまで、SDGsに取り組むことは利益につながらないと考えられていましたが、世界的にSDGsへの関心が高まる中、そうではないことが明らかになり、欧州を中心にESG投資が急激に盛り上がっています。投資家層が厚くなり、個人向け投資信託も増えてきました。地球規模での気候変動を肌で感じるようにもなってきて、消費者の心理が変わってきていますし、この流れは止まらないでしょう。SDGsに貢献するプロジェクト・企業に対する銀行の融資(インパクトファイナンス)も拡大しています。

——SDGs関連の投融資が普及・拡大する中で、その選定基準となる評価のためのツールの開発も進んでいると聞きました。

ブセットさん(以下、ブ)  そうですね、いろいろなツールが出てきていますが、消費者レベルのツールはまだないように思います。弊社では、ウェブベースの評価ツール「RIMM³」を提供するシンガポールのRIMM社とジョイントベンチャーをつくり、日本向けにカスタマイズした評価ツールをリリースする準備を進めています。

 RIMM³は、ウェブ上でサステイナビリティに関する質問に答えることで評価がフィードバックされる仕組みで、業種に合わせて質問内容をカスタマイズすることもできます。つまり評価のためのツールであると同時に、自分たちに足りないもの、自分たちが求められているものを学びながら分析するためのツールでもあるんです。

 このツールによって、日本におけるサステイナブルの民主化と透明化を進めたいと思っています。

——さまざまな業界がSDGsへの取り組みをはじめていますが、ホテル業界の動きはいかがでしょうか。

 ホテル業界は、エネルギーや水の消費、フード・ウェイストの問題など、サステイナビリティへのインパクトが大きい業界です。そのため、政府からのプレッシャーも大きいでしょうし、消費者の関心の高まりもあって、特に大手チェーンでは、早い段階からSDGsへの取り組みを行ってきました。ただその取り組みは、“連泊の場合はタオルの洗濯をしない”など、表面的なものにとどまっているところが多いように思います。そうではなく、ビジネスモデルや建物、消費の在り方など、もっと根本的なところに新しい発想、新しいテクノロジーを取り入れることが大切です。そもそも、サステイナビリティとラグジュアリーは相性が悪いといわれていて、実際にそういう面もあるでしょう。ただ、インパクトの大きさから考えれば、ラグジュアリーホテルこそ、サステイナビリティに配慮するべきですし、ミレニアル世代を中心に、食事、買物、旅などライフスタイルのすべてを、SDGsをベースに選ぶ時代になっていますから、配慮しないホテルは、お客の心をつかむことはできなくなると思います。

——投融資の面から考えて、ホテル業界を含めた企業は今後、SDGsにどのように取り組むことがポイントになるでしょうか。

 ブラッドリーが言ったように、根本的な発想の転換が求められていると思います。たとえば、CO2削減、水資源保護、農業や食べ物の分野でも新たなサステイナブルなテクノロジーが生まれてきています。日本の企業は世界的に見てもイメージがよく、注目されています。そこを活用して、バリューアップや海外企業とのコラボレーションなどに取り組むのもおもしろいと思います。大切なのは、収益を上げることだけを目的に新しいテクノロジーを開発する、取り入れるのではなくて、それによって、地球のもつ力をどう再生させるかということ。そうして、社会的課題を解決するための“意思のあるお金の流れ”を増やすことが、持続的な社会の構築につながると考えています。

SIJは、お金には“色”があると考える。一人ひとりが使うお金の影響で、社会はさまざまな色に変わる。持続可能な社会を目指すSDGsへの投資で、社会を美しく、素晴らしい色に変えよう。

Topic1
ESG投資の規模が急拡大!

世界の運用資産のうち2025年の想定ESG資産は1/3以上(ブルンバーグインテリジェンス)。2022年以降は米国が最大市場、日本を中心としたアジアが次に続くと考えられている。

Topic2
海外では個別企業のSDGs格付けも

インパクト評価ツール「RIMM³」の中小企業、スタートアップ向けの無償版では、ウェブ上で質問に答えることで、ESGについての分析から報告書の作成までできる。

RIMM³でできること
・分析レポート、改善提言、教育・トレーニングなど
・ESG報告書作成
・無償版のほか上場企業向け、ファンドや金融機関向けもあり

Topic3
サステイナブルなホテルに注目です!

欧州のビオホテル協会の基準を満たして認定を受けたホテルや、ゼロ・ウェイストをコンセプトにした「HOTEL WHY」など、国内外にサステイナブルなホテルが登場している。

text: Miyu Narita
Discover Japan 2021年9月号「SDGsのヒント、実はニッポン再発見でした。」

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