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陶磁器の可能性を次世代に伝える「zen to」
第三弾 プロダクトデザイナー8名の”カレー皿”

2021.7.11
陶磁器の可能性を次世代に伝える「zen to」 <br><small>第三弾 プロダクトデザイナー8名の”カレー皿”</small>

「zen to(ゼント)」から、8名のプロダクトデザイナーが手がける「カレー皿」を、2021年7月12日(月)から「zen to」オンラインショップ、セレクトショップ「ブリック&モルタル」にて発売する。

日本有数の陶磁器の産地、長崎県波佐見町。1917年創業の中善は、この地に根ざして窯業を生業とし、江戸時代から続く波佐見焼の技術と精神を継承してきた。創業以来、zen toは国内ブランドの製造に従事するなど裏方に徹したが、創業100周年を迎えたことを機に、肥前地区(長崎、佐賀のやきもの産地の総称)の技術とその可能性を次世代に伝えるべく、表舞台に立つことを決意。初となるオリジナルブランドの構想に着手する。

ブランドディレクターには、日本を代表する陶磁器デザイナーとして知られる阿部薫太郎氏を招聘。“多様な嗜好に応える、多彩な個性”をブランドコンセプトに掲げ、2020年に産声を上げたのが「zen to」。ブランド第一弾として、2020年8月に小宮山雄飛氏(ミュージシャン)、ツレヅレハナコ氏(フード編集者)監修の「カレー皿」を発売。その後コロナ禍において当初の予定を大幅に変更し、2021年4月に第二弾して、ユザーン氏(タブラ奏者)、吉田愛氏(建築家)監修の「カレー皿」を発売してきた。

zen to プロデューサー / 株式会社中善 中尾善之氏よりコメント
「zen to」のコンセプトにある、「多様な嗜好に応える、多彩な個性(的なモノ)」。現在発売中の4名のクリエイターは、違ったジャンルで活躍されている方達であり全く違うものが創造されることは、ある程度予想ができた。

今回、「プロダクトデザイナー」として活躍される8名に依頼したのは、業種で分けると同じ「プロダクトデザイナー」の8名が、カレー皿という1つのテーマに対して、どのような答えを出すのだろうという、ある意味好奇心によるものが大きい。人選に関しては、「zen to」を企画するにあたっての根幹にある、「繋がりを大事にする」ことから、私やエンジニアが企画時点で既に繋がりのある方達から選ばせて頂いた。8人なのは、単純に私が1番好きな数字が8だったからである。

「zen to」は元々の発想の時点で、1社(中善)だけでは成し得ない事業である。それは、波佐見焼だけではなく「肥前」でと言ってしまっていることから想像していただけるかもしれないが、前述でも触れたように「繋がり」を大事にし波佐見、有田、etcという産地にとらわれず、肥前で考え、ものづくりを続けていきたい。

そのような想いで生まれた「zen to」が、活動を続けていくことによって、人と人や産地間の「繋がり」を広げ、肥前の、ひいては日本の焼き物の未来を明るく照らす存在のひとつになることを目指している。

阿部薫太郎
「daily spice plate」

阿部薫太郎さんからのコメント
移動式屋台のお皿の収納に感動したことがあります。スペースを無駄にしないよう長角のお皿が多かったのですが、横にも縦にもきれいに収まっていて、当然狭いカウンター上には多くの料理で賑わっていました。家の食器棚も同じこと、楕円は奥行きが短いことで収納には重宝する形。カレー皿は楕円のものが多く、また楕円だとカレーを連想させます。皿とは言いつつボウルのような形状も多い。奥、手前にすくえばは角度がありスプーンに収まるボウルのような皿。

忙しい方、ミニマリストに常に食卓の前線で活躍する、波佐見らしい皿を目指しました。(本来、食器を生 業にしているので色々揃えて貰いたいのですが…)ふちはしっかり厚めで、持って軽く、スタッキングもしっかり底で重なるよう計画しております。毎日フルに使って欲しい一品です。

阿部薫太郎(あべ・くんたろう)
陶磁器デザイナー・エンジニア。1975年花巻市生まれ、大学院修了後、2000年 KONST FACK K&G(スウェーデン)に留学。2年間のタイ国陶磁器メーカー勤務を経て2006年に帰国後、長崎県波佐見町を拠点とする。以降、陶磁器デザイナー、エンジニアとして国内外の企業、デザイナーとプロダクトを発表。2016年よりセルフメイドブランド「REDUCTION FACTORY」を展開。代表作に「HASAMI PORCELAIN」「Common」「sabato」「ha porcelain」がある。https://tokyosaikai.com/

エンジニアとしてのコメント
波佐見焼のこれからの技術伝承も意識し、手描きの絵付けすると最初から決めていました。馴染みのある絵柄を配したことにより波佐見焼本来のアノニマス感が出せた思います。

「daily spice plate」
価格|2420円(税込)
材質|磁器
サイズ|W220×D190×H60mm
カラー|ブルー・ブラウン

角田陽太
「Curry Circle」

角田陽太さんからのコメント
円で構成された幾何学的なオブジェクト。キッチンカーで出でくるようなキッチュなイメージも持ちつつ、機能的な仕切り皿になっています。カレーとサンバル、ラッサムにサラダでも良いですし、カレー2種にトレーンとチャツネでも◎。想像力は膨らんでいき、お腹は減っていきます。

角田・陽太(かくだ・ようた)
デザイナー/クリエイティブディレクター。仙台生まれ。2003年渡英し安積伸&朋子やロス・ラブグローブの事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)デザインプロダクツ学科修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年角田陽太デザイン事務所を設立。2016年にはHUBLOT DESIGN PRIZEに日本人として初めてファイナリストに選出される。代表作にキリンホームタップ、Common、SNIDEL BEAUTYなど。https://www.yotakakuda.com/

阿部薫太郎さんからのコメント
陶磁器製品でのこのようなアプローチは理想値まで何度となく微調整していきますが、価格帯も加味し、また少し揺らぐ部分を陶磁器らしさと許容していただいたことでうまく着地できたと思っております。

「Curry Circle」
価格|3960円(税込)
材質|磁器
サイズ|W305×D203×H33
カラー|ホワイト

篠本拓宏
「oval curry bowl 」

撮影協力:小山 匡志(FORRESTER)

篠本拓宏さんからのコメント
僕にとってのカレー皿は楕円だ。小学生の時、池袋駅の食堂街で毎週食べたカレーはステンレスの楕円皿だった。そして、80年代背伸びをしながら通った原宿の外れにあるレゲエが流れるカレー屋の皿も楕円だった。それらの思い出をもとに、現在の自分にとってのベストの楕円カレー皿を作ってみた。ライスを中心に二種類のカレーを盛りつけたり、カレーとサラダを盛りつけても良い。もちろん一種類のカレーでも美しい。僕にとっての理想のカレー皿だ。

篠本拓宏(しのもと・たくひろ)
1988-2001年、株式会社イデー勤務。商品開発部、家具のディレクション、デザイン、国内外デザイナーとのプロジェクト等。2003年、アメリカ、ロサンゼルスに移住。日本のデザイン、工芸、クラフト、文化を伝える店 tortoiseをオープン。2008年、tortoise general storeオープン。2011年、西海陶器株式会社hasami porcelain ブランドディレクション、商品デザイン。2015年、株式会社能作s/nブランドディレクション、商品デザイン。2018年、株式会社日本香堂 elemenseブランドディレクション、商品デザイン。日本とアメリカの2つの視点で日本のメーカーと取り組み、世界標準の商品開発をする。https://tortoiselife.com/

撮影協力:小山 匡志(FORRESTER)

阿部薫太郎さんからのコメント
盛り付けのイメージもしやすい、長いお皿。長い直線部分がストレートを保った方が美しいので、成形時の取り扱いに気を遣っていただく事、製品の厚み調整で形状を保てました。

「oval curry bowl 」
価格|3630円(税込)
材質|磁器
サイズ|W305×D155×H48mm
カラー|アイボリー

清水久和
「機内食の皿」

清水久和さんからのコメント
カレーで思い出すのは、出張でよく乗っていた香港便の機内食です。国際線に乗る機会が少なくなった今、機内食の楽しさを自宅で味わうカレー皿を作りました。機内食が出てきたときに、あれっ小さいな、と思いませんか。これで足りるのかなと思わせるコンパクト感がとりわけ印象に残ります。せまいギャレーのカートの中で芯まで温めるための機能的な小ささなのです。ギラギラしたアルミの質感の中にご飯が入っているというのも意外な気がします。

アルミ箔容器の四隅に出ているシワは、製造工程上どうしても出てしまうものです。この取るに足らないシワを造形のポイントにしたカレー皿を新たに磁器でデザインしました。アルミ箔の蓋を剥がす時の期待感や高揚感、あるいはガッカリ感。あの気持ちを思い出しつつ、蓋の柄も三種類作りました。飛行機の懐かしい旅を思い出させてくれるお皿です。

清水久和(しみず・ひさかず)
S&O DESIGN株式会社代表取締役/プロダクトデザイナー。キヤノンのデジタルカメラ「IXY Digital」のチーフデザイナーとしてプロダクトブランディングを構築。ドイツiF賞やグッドデザイン賞を多数受賞。2012年S&O DESIGN設立。新たな3Dデザイン手法「コンティニュアス・デザイン」の実践・教育。日常の取るに足らないものにスポットライトを当てるデザインリサーチ「愛のバッドデザイン」ワークショップや、瀬戸内国際芸術祭への参加など、多彩な活動が注目されている。桑沢デザイン研究所・東京藝術大学非常勤講師。https://sandodesign.com/

阿部薫太郎さんからのコメント
特に蓋と本体のクリアランスに厳しい方ですので、本来、別々に焼く事、釉薬の厚み、多少の歪みを加味し、安全策を取るのですがかなり攻めたクリアランスにしております。満足して頂けたかと思います。

「機内食の皿」
価格|2980円(税込)
材質|磁器
サイズ|W178×D105×H34mm
カラー|ホワイト・ブルー・グリーン

辰野しずか
「co-mu」

辰野しずかさんからのコメント
「co-mu(コミュ)」は、カレーという一つの料理が、今ではその枠を超え、人と人とをつなぐコミュニケーションツールの一つになっている、ということに注目して作られたカレー皿です。女性でも片手で持ちやすく、いろいろなカレーを少しずついただくのにもぴったりの、少し小さめのサイズが特徴です。

お皿の縁には返しがついていて、カレーがすくいやすいようにデザインされています。アウトドアに、ホームパーティー、もちろん日々の食卓や、レストランのビュッフェスタイルでも、気軽にお使いいただけます。カレーといえば想起する楕円形のデザインは、どこか懐かしいようなほっとした気持ちをもたらします。

辰野しずか(たつの・しずか)
クリエイティブディレクター / プロダクトデザイナー。1983年生まれ。英国のキングストン大学プロダクト&家具科を卒業。デザイン事務所を経て、2011年に独立。2017年より株式会社Shizuka Tatsuno Studioを設立。家具、生活用品、ファッション小物のプロダクトデザインを中心に、企画からディレクション、ブランディング、付随するグラフィックデザインなど様々な業務を手掛ける。ELLE DECOR日本版「Young Japanese Design Talents」賞、グッドデザイン賞など受賞多数。https://www.shizukatatsuno.com/

阿部薫太郎さんからのコメント
手に持って使う想定では熱伝導が良い磁器は熱く持てなくなってしまいます。持った時の指のかかり具合や、熱くて持てないことが解消されるということで、情報の多い裏面、使用面へのヒケと不安もありましたが、本来不要な、広い使用面をフラットにする為に用いる2重高台(2つの接地部)を採用しました。

「co-mu」
価格|2090円(税込)
材質|磁器
サイズ|W180×D140×H45mm
カラー|ブラック・アイボリー・グレー

寺山紀彦
「kohan」

寺山紀彦さんからのコメント
ご飯山の麓にあるルー湖。ランドスケープのようにルーとご飯を分けれるプレートを作りました。食べる前にルーとご飯が付いてしまっているのが少し嫌だなと思ってる方多いのではないでしょうか。自分のタイミングでご飯山をルー湖に浸らせ新しいランドスケープを作りましょう。カレーのみならずソースと野菜など、何かを付けて食べる際に使用して頂けると嬉しいです。

寺山紀彦(てらやま・のりひこ)
デザイナー・美術作家。日本にてデザインを学んだ後、オランダ‘Design Academy Eindhoven’に留学。在学中にオランダのコンセプチュアルデザインを体感し、 ‘Studio Richard Hutten’‘MVRDV’にて研修。帰国後‘studio note’を立ち上げ、プロダクトをメインに‘CLASKA Room701’内装デザインや店舗アートワーク、クライアントデザイン業務など、多岐に渡りデザイン活動を行なう。‘21_21 DESIGN SIGHT(デザイン展、コメ展、単位展、雑貨展)’への参加やギャラリーでの作品展示など、作家としての活動を行なっている。http://studio-note.com/

阿部薫太郎さんからのコメント
見た目以上に複雑な成形になるため、石膏型制作にかなり時間がかかってしまいました。見所の使用面のカーブは少し力技で押さえ込んでいます。

「kohan」
価格|5280円(税込)
材質|磁器
サイズ|W240×D240×H35mm
カラー|グレー

吉冨寛基
「内玉縁カレー皿」

吉冨寛基さんからのコメント
最後のひとすくいのためのカレー皿です。カレーを食べていくと、最後の数粒をすくう時にだけ返しが欲しい時があります。極力ふつうなお皿で少しだけ返しが付いていて欲しい。そんなわがままをかたちにしたのが内玉縁カレー皿です。

玉縁とは本来、お皿の縁を外側に向かって丸みと厚みを持たせる技法ですが、お皿の内側に向かって丸みを持たせました。この丸みのおかげでささやかな反りと引っ掛かりのある返しが生まれます。逆に外側にはスタッキングがしやすいように段差を付けて内側の玉縁とのバランスを取りました。食べ始めから食べ終わる直前までふつうに食べれて、最後のひとすくいを少しだけ手助けする贅沢なカレー皿ができました。

吉冨寛基(よしとみ・ひろき)
プロダクトデザイナー。1980年福岡県糸島市生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科を卒業後まもなく、フリーランスでデザイン活動を開始。2009年に自身のデザインスタジオであるYOSHIO GOODRICH DESIGNを設立。時代の流れの中でヒトとモノとの関係性を紐解き、日々のライフスタイルに新たなワンシーンを生み出すプロダクトを多岐にわたり手掛けている。受賞歴にはiFデザインアワードにおいての最高賞であるiFゴールドアワードや、Red Dot デザインアワードの中でも特に優れている作品に贈られるベスト・オブ・ザ・ベストなどがある。https://www.yoshiogoodrich.com/

阿部薫太郎さんからのコメント
“すごく使いやすそう”が図案のイメージ。フチに”返し”があるので成形方法は一択でした。シンプルですが意外に成形技術の粋が詰まっております。

「内玉縁カレー皿」
価格|2860円(税込)
材質|磁器
サイズ|W225×D225×H32mm
カラー|アイボリー

吉行良平
「d plate」

吉行良平さんからのコメント
カレーが、一番すきな料理です。カレーの日は、食べる量をいつもより気持ち多めにしたくなります。茹でたブロッコリー等の野菜をそえたり、惣菜のコロッケ、トンカツなんかを配置を気にしてのせたり。よそっているだけで、特別な気持ちになります。自分や家族、仲間の好みにあわせて、お米とルー、具、トッピング等、余裕をもって盛り付けられるサイズ、日々の食卓で調和する形状、色を試行しました。縁をたたせた、ゆったりとした深さをもつ楕円の皿です。

吉行良平(よしゆき・りょうへい)
プロダクトデザイナー。オランダ、Design Academy Eindhoven在籍時より現地のデザイン事務所で経験をつみ、卒業後様々なプロジェクトに参加。帰国後「吉行良平と仕事」設立。国内外のクライアント、製造会社、職人との協働で行う家具、日用品の設計を中心に、建築空間、美術館での展示計画にも携わる。手で素材を動かし、実験、検証を繰り返しながらあるべき色、形を探る。http://www.ry-to-job.com/

阿部薫太郎さんからのコメント
陶磁器製品の設計は初めてとの事でしたので、色々と守るべき部分を尊重しつつ意見させていただきました。各部分、厚みを細かく変え反復生産に対応できるよう調整しています。

「d plate」
価格|2640円(税込)
材質|磁器
サイズ|W195×D158×H51mm
カラー|ホワイト・ベージュ

zen to オンラインショップ
http://www.hi-zento.jp/

セレクトショップ「ブリック&モルタル」
住所|東京都目黒区中目黒1-4-4
営業時間|12:00〜19:00 ※日曜・祝日 18:00close
定休日|なし
Tel|03-6303-3300
http://www.brickandmortar.jp/


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