日本の伝統工芸の未来は“MADE with JAPAN ”にあり!
Made in Japanだけにこだわるのではなく、世界中にある工芸品に、日本の伝統技術をかけあわせるという新しい発想から生まれた言葉、Made with Japan !
クリエイティブ・ディレクター戸村亜紀さんが仕掛ける海外(ラトビア)と日本の技をつなぐ取り組みが、日本の伝統工芸の在り方に一石を投じる。
〝日本の漆 ラトビアの木工品〞プロジェクト始動!
海外の良質なプロダクトと日本で受け継がれてきた伝統技術を用いて、いままでにない新しいコラボレーションのかたちをつくるプロジェクトがスタートしました! それぞれの知見と技術をもち寄って、新しいプロダクトを生み出しています。
メンバーは上記写真の4人
右から
ランドスケープ・プランナー
戸村糸希
1999 年生まれ。日本独自の植生、里山の在り方などを研究、世界各地の旅を続ける。現在、京都造形芸術大学ランドスケープデザインコース在学中。「FOLKHOOD」のメンバー
漆塗り職人
内田 徹
越前漆器「漆琳堂(しつりんどう)」を継ぐ8 代目。2013 年、福井県内最年少で伝統工芸士に認定。「越前漆器はいかに早くきれいに仕上げるかが勝負。工夫も職人の知恵です」
クリエイティブ・ディレクター
戸村亜紀
墨絵作家として活動後デザイナーに。現在はトータルブランディングや商品開発などを手掛ける。国境を越えた次世代の「居場所」と「出番」を生み出す活動「FOLKHOOD」の代表
デザイナー
古庄良匡(ふるしょう・よしまさ)
伝統工芸と環境共生をテーマにデザインワークを行う。工芸の世界で受け継がれてきた木工ろくろの技術に、失われつつあったネジ切りの技術を加えたMokuNejiシリーズが好評
ラトビア中の職人が集まる〝森の民芸市〞へ
日本から約8000㎞。ラトビア共和国は手工芸を大事に守ってきた北欧の国。日本とラトビアの手仕事の挑戦がはじまった。
2017年6月、バルト海に面した国、ラトビアの首都リガにクリエイティブ・ディレクターの戸村亜紀さんは、娘の糸希さんとともにいた。ラトビア最大のハンドクラフトの祭典、「森の民芸市」で買い付けをするためだ。
毎年6月第1土曜・日曜の2日間だけ開かれる市は、40年以上の歴史がある。会場のリガ郊外、ユグラ湖畔にある野外民族博物館には、ラトビア全土から選りすぐりの製品を持って職人が集まる。
森林が国土の半分を占めるラトビアは、知る人ぞ知る手仕事大国。人々は森の恵みを生かしたうつわやカトラリーなどの木製品をつくってきた。また、草木を編んだ籠、陶器、ニットやミトン、リネン製品など生活に寄り添うかたちで育まれてきた手仕事は数知れない。
「パリの展示会などに行くと、ラトビア産リネンの人気が高くて、昨年はじめて森の民芸市を訪れたのですが、ラトビアの手仕事の世界観と価値観に日本に近いものを感じました。自然を崇拝する共通点があるのも大きな理由です」と戸村さん。
訪問の真の目的は、現在進めるプロジェクト「Made with Japan」を日本とラトビアを舞台に実践するため。
海外で仕入れた良質なプロダクトに日本の技術を組み合わせる、これまでにない取り組みだ。
戸村さんは次世代のための居場所と出番を、働きながら生み出していくことを仕事の目標に掲げている。
「いろんな職業と世界を結んで、次世代の仕事を再編集する必要があります。日本と海外をつなぎながら新しいマーケットと価値を提案したいんです」
民芸市会場には多くのブースが並び、プロダクトが山積みに。戸村さんは早速、木製のコマやけん玉、カトラリー類を品定め。
「フォルムが美しいですね。カトラリーの、手にしっくりなじむ具合が心地いい。生活の中で使われ、使い勝手を極めたかたちがこの姿になっているのだと思います」
それでいながら、製品はどれも日本に比べてリーズナブル。
「一般に新興国の製品は安価な分、質が低いと思われがちです。しかし、安さの観点だけで製品をとらえるのではなく、本当に良質なものと優れた技術という『いいもの同士』を組み合わせれば新しい道が生み出せると思います」
職人の世界の外にいるからこその視点と発想は戸村さんの得意とするところ。帰国後、彼女は多くの戦利品を抱えて、日本の工芸産地へと向かうのであった。
(text:Discover Japan photo: Yuichi Noguchi, Atsushi Yamahira)