ラトビアの工芸品に日本の伝統技術をかけあわせたら?
鯖江の漆塗り職人と生む、世界基準の工芸品
縄文のころから日本での漆の利用ははじまっていたとされ、漆芸の歴史は古い。日本の技法はラトビアの木工品をどう変えるか?
今回、クリエイティブディレクター戸村亜紀さんが現在進めるプロジェクト「Made with Japan」で日本とラトビアを舞台にするため、ラトビア最大のハンドクラフトの祭典「森の民芸市」で仕入れた木工品が、漆塗り職人内田 徹さんの手によって新たなかたちに生まれ変わる。
「日本」と「ラトビア」両方にとって利点となるコラボを発案
「Japan」でラトビアの木工製品が生まれ変わる。Japanはいうまでもなく日本を指す英語だが、漆や漆器をいう場合にも使われる。それほどに、漆芸は日本を代表する工芸品として世界で認められた存在だ。戸村さんはラトビアの木工品と組み合わせる技術として日本の漆芸を選んだ。
「この取り組みは2年前に開始しました。ラトビアから持ち帰った木製品を一年間、木地だけの状態で使うテストをしたところ、多湿な日本の風土ではカビが発生。そこで考えたのが漆の使用です。漆を塗ることで防腐、抗カビの効果を高めることにしました。
一方、ラトビアではアジア産の金属製カトラリーや食器がメインになり、木製の食器が実際に使われるシーンは失われています。両者が単なる価格だけの経済活動を超え、双方に利となるコラボレーションを考えた結果なのです」と戸村さん。
今回のパートナーは「漆琳堂」の内田徹さん。福井県鯖江市の漆塗り職人だ。デザイナーの古庄良匡さんがつないだ。「越前漆器は丸物と呼ばれる椀物と、角物と呼ばれる重箱などを塗る職人が分れているのが特徴。
漆琳堂では丸物を中心に手掛けています。越前の漆塗り職人は短期間で数多くきれいに仕上げるための工夫をしています。結果、クオリティは保ちつつ、コストを抑えた製品につながっています」(内田さん)
業務用漆器の国内シェアの約8割が越前漆器。同地は伝統工芸の技法の継承と同時に生活の場での使用を主眼に多彩な試みを行っている。漆琳堂でも食卓をポップに彩る色漆の製品づくりに積極的だ。
「この木のスプーン、独特の手仕事感がいい味ですね」(古庄さん)
「ラトビアでは教会や古い木造の建物にゴールドが使われていて、朽ちた佇まいが美しいんです。金や銀の漆を使い、カトラリーを金属風に仕上げてみたらおもしろそう。金属に見えるけど実際は木だから、持ったら『軽!』というの試してみたい」(戸村さん)
「ならば最初に漆を塗り錫粉を蒔く方法がありますよ」(内田さん)
実験的な取り組みの成果はいかに? プロジェクトでは次年度以降のパートナーを募集中。産地や技法を変えながら続く予定だ。
進行中のプロジェクトを、ちらりとご紹介
1回目のサンプルが戸村さんに届いた。「これ欲しい!」と多くの人に思わせる製品に仕上げるため、さらにブラッシュアップさせていく。年末に販売予定。
詳細はwww.folkhood.com
(text:Discover Japan photo: Atsushi Yamahira)