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和空 法隆寺に泊まって、
奈良の特別な文化体験を楽しむ

2020.10.13
和空 法隆寺に泊まって、<br>奈良の特別な文化体験を楽しむ

奈良の名刹・法隆寺の名前はもちろん知っているでしょう。でも、そこに何があるかと問われると言葉に詰まってしまう……そんな人にオススメの宿が「門前宿 和空 法隆寺」です。今回は、仏教のふるさとであり、郷土文化が色濃い奈良を深く味わう体験メニューをご紹介。時間が許す限り、目一杯チャレンジしてみましょう。

願いを込めて、筆を運ぶ「絵写経」

「聖徳太子は日本初の香り判定師といわれているんですよ」そんな意外なエピソードが聞けるのは、匂い袋づくり体験。なんでも595(推古天皇3)年、淡路島に流れ着いた木を、太子は香木だと言い当て、その木で観音像をつくったのだそう。体験の部屋では、入り口に白象をかたどった香炉が置かれ、そこをまたいで入る。足の裏にお香の煙を当てることで身を清めるのは、僧侶も行う正式な作法。その歴史や文化に触れつつお香を調合し、自分だけの匂い袋をつくるひとときは、古代と現代がつながる時間だ。

文化体験はほかにも、写仏と写経の両方に挑める「絵写経」や、奈良の郷土玩具・張子に絵付けをする「“張子鹿”絵付け体験」、苔玉や大和ポプリづくり、古代衣装体験など多彩なメニューがある。

そしてぜひ参加したいのが、宿泊者限定トークショーだ。古代史や仏教文化を専門スタッフがおもしろおかしく45分で解説。取材時のテーマは「本当は面白い古代史[飛鳥編]」で、聖徳太子が「冠位十二階」や「十七条憲法」といった制度をつくった背景、日本が隣の大国・隋と対等外交にこぎつけるまでの歩みがすっきり頭に入り、まさに「飛鳥時代が日本の礎をつくった」ことに合点がいった。ここでしかできない文化体験で、法隆寺詣でへの気持ちが盛り上がること、間違いなしだ。

写仏と写経を組み合わせた「絵写経」。輪郭のみ描かれた仏の絵に、心の赴くまま色鉛筆で色を塗り、そのあと薄く印刷された般若心経の文字を一文字一文字筆ペンでなぞり書く。いつしか無心になって集中。所要約2時間だが、完成したときの達成感はひとしおだ。

奈良の郷土玩具・鹿の張子に、色紙をちぎって貼り合わせたり、アクリル絵具で色づけていくと出来上がる愛らしい張子鹿はファミリー客にも人気。匂い袋づくりでは、約10種のお香の原料を好みで混ぜ合わせる。

法隆寺参拝前に必聴! のトークショー

ラウンジでは奈良の歴史や仏教文化についてのトークショーを開催。より気軽なクイズ形式の回もある。話を聞きながら奈良のクラフトビールが楽しめ、法隆寺ゆかりの書籍が硬軟取り揃えられた本棚もある。

大和(やまと)の美味で活力をチャージ

旅の楽しみに欠かせないものといえば、食事。和空法隆寺でいただける夕食は和食の匠・神田川俊郎さんがオープン時より監修している。さらに2020年秋からは料理長・松浦修さんをはじめ神田川門下の料理人が集結し、よりグレードアップ。

特別門前懐石で供されるのは「一に心、二に材料、三に細工。色・かたち・味を大切にしながら地産地消を大事にし、季節に応じた献立」と神田川さん。随所に盛り込まれるのはもちろん奈良の食材で、中でも生産量が限られるため奈良以外ではほぼ出合えない大和牛は「一度食べたら忘れられない個性的な味。それでいて脂は強過ぎず、あっさり食べよいんです」。また「みずみずしい食感と濃い味わいが共存」と神田川さんがたたえるナスをはじめ大和の採れたて野菜や果実が、先付からはじまる全9品で、たっぷり味わえる。

奈良の地酒が豊富に揃うのもうれしいところ。奈良は日本清酒発祥の地ともいわれ、室町時代に菩提山正暦寺で生まれた醸造法を現代によみがえらせた鷹長をはじめ、老舗蔵元による個性的な酒がラインアップ。上品な甘みと深い味わいが調和する大和の酒をぜひ飲み比べてほしい。

朝食には伝統の茶がゆも登場。大和の美味を朝夕ふんだんに取り込んで、心身のエネルギーを満タンにしよう。

【先付二種】ゴマの風味がコク深いクリームとナス・芋茎の食感が調和した「秋茄子・白芋茎の胡麻クリーム掛け」と、酢の物「菱蟹菊花浸し」。
【八寸】鮭いくら和え、蓮根、松茸、五分玉子、車海老、むかご真丈、焼栗、衣かつぎ、豆腐みそ漬、かます寿しと、旬のものが豊かに彩りよく。
【煮物椀】帆立真丈菊花仕立てに、ウニ、松葉ユズを添えて。コリっとしたホタテ入りの真丈とともにいただく菊の花弁の軟らかい舌触りが新鮮。
【造り】天鯛昆布〆、中トロに可憐な花穂紫蘇や菊花を添えて。品のよい旨みが印象的な鯛に、脂ののったトロはのど越しもよくするりと入る。
【焼肴】あっさりした味わいの子持ち鮎甘露煮に、揚げ銀杏と酢とり茗荷。銀杏の食感と酸味がすがすがしいみょうががよいアクセントに。
【箸休め】「神田川」特製のすっぽん煮こごり。柑橘で色づけされ目に舌に爽やかな煮こごりは、ひんやり口当たりがよく、のどを潤す滋味。
【小鍋】大和牛ときのこの小鍋仕立て。奈良の特産・大和牛はほどよくサシが入り、弾力性に富む肉。斑鳩町産のポン酢であっさりいただく。
【御飯・香物・汁】シメには「神田川」流新秋刀魚と奈良県産ヒノヒカリを炊いた白飯に、奈良漬など漬物3種、そして三輪そうめんのにゅうめん。
【水物】上品な甘みのブルーベリーソースがけココナツプリン、ブドウ・梨など季節の果実にさっぱりした口当たりのジュレで後口も爽やか。

特別メニュー&地酒飲み比べも

松茸など旬の味覚や造りなど、予算に応じて特別メニューも用意してくれる。また日本酒通スタッフのおすすめ、奈良の地酒がいろいろ試せる「大和おまかせ飲み比べ3種」2000円も試したい。

身体に優しい大和の朝ごはん

奈良名物の茶がゆに鮭、卵焼き、揚げと小松菜の煮浸し、味噌汁に湯豆腐など、起き抜けの胃にもやさしい和朝食。地元・斑鳩町産の「大和ぽんず」、「法隆寺醤油」はロビーでも買える。

翌日は、いざ法隆寺へ

心身の清めを終えた翌朝は、いよいよ法隆寺へ。自他ともに「法隆寺オタク」と認めるスタッフによる濃密ツアーに参加!

朝9時、宿泊者限定の法隆寺ガイドツアーがはじまる。案内してくれるのは、法隆寺の魅力に15歳で目覚め、ガイド歴18年を誇る中江太志さんだ。「世界最古の木造建築群が1300年残るのは、時代ごとに見つめ修理する人がいたから」と中江さん。「だから法隆寺では、全時代の様式が見られる。いわば仏教寺院ミュージアムなんです」。

まずは南大門へ。「古代のお寺には必ず南に門がある。北にいる仏さまのもとへ真正面から向かうためです」。次に待つ中門を含め、ふたつの門があるのは飛鳥〜奈良時代前期の特徴だとか。中門をくぐれば西院伽藍をぐるりと囲む廻廊だ。有名なエンタシス(胴張り)の柱を前に往時の宮大工の技を教わった後、向かったのは「一番大事なご本尊を安置する」という金堂。「右の薬師如来座像は用明天皇の病気平癒祈願でつくられ、これを納めるため推古天皇と聖徳太子は大伽藍をつくったんです。真ん中は聖徳太子のためにつくられた釈迦三尊像で、面長にアーモンド型の目は飛鳥時代の特徴。それに比べ左の阿弥陀如来座像はふっくらした顔つきでしょ? 聖徳太子の母のためにつくられたのですが、盗難に遭い鎌倉時代につくり直されたものなので様式が違う」。千年を超える仏像の変遷を前に、静かに感動。

続いては五重塔。内部の東西南北には釈迦の逸話を描く塑像がある。人間対仏の問答バトル、入滅した釈迦を囲む人間と仏の表情の違いなどを、中江さんはいきいきと解説。とそこに「ゴーン」という音が。「1分ごとに時の数だけ鳴る『時鐘』です。正岡子規も『柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺』と詠んだ。変わらない法隆寺の音ですね」。

さらに大講堂で仏教由来の言葉など目からウロコの話を次々聞くうち、あっという間の2時間が終了。もっと聞きたいと連泊する人やリピーターが絶えないのも納得! のツアーである。

門前宿 和空 法隆寺
住所|奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺1-5-32
Tel|0745-70-1155
客室数|58室
料金|仏像と過ごす部屋 1泊2食付3万4980円〜(税・サ込)、デラックスルーム 1泊2食付3万5530円〜(税・サ込) ※2名1室利用時の1名分
カード|VISA、Master、JCB、AMEX、Diners
IN|15:00〜18:00 OUT|11:00
朝食|和朝食 夕食|懐石
アクセス|車/西名阪自動車道法隆寺ICから北へ5分   電車/JR法隆寺駅から徒歩20分またはバス「法隆寺参道」下車
施設|浴堂、大広間、ギャラリーバー、Wi-Fi、駐車場(23台 ※要事前予約)

 

門前宿 和空 法隆寺

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text: Kaori Nagano(Arika Inc.) photo: Sadaho Naito
2020年11月号 特集「あたらしい京都の定番か、奈良のはじまりをめぐる旅か」

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