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出雲充が薦める、いま読んでほしい本

2020.6.12
出雲充が薦める、いま読んでほしい本

5億年前から存在するユーグレナで食料問題、環境問題に挑むユーグレナ社長の出雲さんは、コロナがもたらした社会的な大変化は持続可能な社会へかじを切るチャンスだと語る。最先端のバイオベンチャー経営者が考える、いま読むべき本とは?

出雲充(いずも・みつる)
1980年、広島県生まれ。駒場東邦中・高校、東京大学農学部卒業。2005年、ユーグレナ創業。世界初、微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養に成功。石油に替わるバイオ燃料としても期待される。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』がある

ドラゴンボールからワンピースの時代へ

幼少期から活字中毒で、食事中に本や漫画を読むのが日課だったという出雲さん。給食のときには牛乳パックに書かれた活字を読むことで“禁断症状”を抑えていたという。そんな出雲さんが絶大な影響を受けた漫画が『ドラゴンボール』。悟空は出雲さんにとってヒーローだったし、大学時代バングラデシュの貧困問題に直面したときには、(ドラゴンボールに登場する)仙豆を探し続け、たどり着いたのが微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)だった。

「修行して強くなり、敵を倒す。悟空はこれを繰り返し、強い敵をどんどん倒していきました。それを当然のようにかっこいいと感じていましたが、僕より後のミレニアル世代は、ひたすら修行をして敵を倒す悟空ではなく、敵をも仲間にして一緒に世界を冒険する『ワンピース』のルフィを読んで育っています。

いま思えば、それは世の中が『強くなって敵を倒そう』ではなく、『敵なんていないから仲間と一緒におもしろいことをやろうよ』という価値観に変わったことを示していたのかもしれません。その両方をリアルタイムで読んだことは、少なからず僕の考え方に影響していると思います」。

緊急事態宣言を受けて手に取った本

そう語る出雲さんが、今回の緊急事態宣言を受けてまず手に取った本が『大震災の後で人生について語るということ』だったという。「多くの人がコロナ前、後という言い方をしているように、新型コロナウイルスは、世界中の人にとって戻ることのできない変化になりました。このような出来事は経済的変化と社会的変化の大きくふたつに分けられ、今回のコロナは社会的変化ととらえられます。

経済的変化は、2008年に世界中が体験したリーマン・ショック。金融資本主義の延長線上に未来がないことがわかりました。さらに日本は、’11年の東日本大震災で社会的な変化も体験。それまで絶対安全とされてきた原子力が人間のコントロール下にはないことがわかり、自然科学の限界を知りました。’08年以降、世界的には、資本主義神話は崩れても自然科学の進歩で乗り越えていけると信じられていましたが、日本は経済も社会も不可逆であることを経験しているのです。

大震災の前後で状況が違うように、コロナ後の社会はこれまでの延長線上にはありません。ということは、ようやく“持続可能な社会に転換できるようになった”とも言えます。私が尊敬するバングラデシュの経済学者のムハマド・ユヌス先生はコロナの事態を受け『世界のほとんどの人にとって最初で最後のチャンスだ』と提言しましたが、日本にとっては2回目。日本は、このチャンスを生かせるかどうか。

2025年には、生産年齢人口の半分以上がデジタルネイティブであり、社会的意識が高いミレニアル世代になります。その大きな変換点を5年後に迎えるいま、何ができるか。『大震災の後で人生について語るということ』には、社会的変化の後でどう生きるかのヒントが書かれています」。

出雲さんが代表を務めるユーグレナ社は、不可能とされていた微細藻類ユーグレナの大量培養を成功させ、バイオ燃料の実用化もはじまった。そこに行き着くまでにさまざまな苦難があったことは想像に難くないが、本や言葉に救われた経験はあるだろうか?

「私は、ヤマト運輸の小倉昌男さん、日清食品の安藤百福さん、リコーの市村清さんの著書や伝記を愛読してきました。3人とも日本に新産業やビジネスモデルをもたらした革新的な創業者ですが、とにかく壮絶な人生を送っています。どのページを開いても悲惨なエピソードばかり。ことあるごとに読み返しますが、彼らと自分を比べることすら恥ずかしくなってきて『これほどの試練はない。自分はまだ大丈夫』と思い直すことができるんです」。

現在も移動時間には本が欠かせない出雲さん。新しく本を買うときは、自分で選ぶとどうしてもジャンルがビジネスや経済に偏ってしまうため、信頼する先輩に選書を依頼し、おすすめされた本は必ず読むことにしているそう。

「選書の半分は話題の本や自分でも読んでみたいと思っていた本なのですが、半分はくせ球揃い。正直言うと食指が動かない本もありますが(笑)、意外と幅が広がったりするんです」。

 

不動産神話、会社神話、円神話など、日本人の人生設計を支配してきた神話が失われた“東日本大震災後”。新時代を生きるための設計図を、経済作家・橘玲が語る。

『大震災の後で人生について語るということ』
著者|橘 玲
価格|1650円
発行|講談社(2011)

哲学者・森信三による「修身」の授業(昭和12〜13年に天王寺師範学校で実施)をまとめた講義録。「論語の教えを学問として体系立てた修身から、いまの時代に必要な哲学や徳の大切さを学ぶことができます」

『修身教授録』
著者|森 信三
価格|2530円
発行|致知出版社(1989)

2500年前に書かれ、多くの偉人に影響を与えた論語は、欧米が注目するマインドフルネスの哲学を言葉でまとめたものでもある。「“徳”が重要視されるこれからの国際社会にこそ、日本人が読んでおきたい」

『仮名論語(新装版)』
著作|伊與田 覺
編集|論語普及会
価格|1760円
発行|論語普及会(2015)

「世界から栄養失調をなくしたい」と考えた出雲さんは、「仙豆」のような魔法の食べ物を探し回り、微細藻類ユーグレナと運命的な出合いを果たす。ドラゴンボールがなければユーグレナは存在しなかったかも?

『ドラゴンボール(完全版)』
著者|鳥山 明
価格|1078円
発行|集英社(2002)


取材=2020年4月14日
text=Akiko Yamamoto photo=Kazuya Hayashi
2020年6月号 特集「おうち時間。」


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