金沢 森八の「長生殿」
民藝運動と関わりの深い老舗の落雁
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は日本三大銘菓に数えられている、金沢の老舗・森八の「長生殿」を紹介する。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍する。8年間にわたり続けている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
古都金沢の菓子舗「森八」は、1625(寛永2)年創業という老舗です。中でも有名なお菓子といえば、日本三大銘菓に数えられる「長生殿」。口に含めば、じんわりと解け、上品な甘みがお茶の味わいをさらに深めてくれます。
長生殿は四国産の和三盆糖と北陸産のもち米でつくられた紅白落雁の一種。加賀藩3代藩主前田利常の命を受けて、3代目店主の八左衛門が創作し、遠州流の開祖である大茶人・小堀遠州の命名により長生殿が誕生しました。さらに遠州が篆書で書いた文字を彫り込んだ菓子型で抜き、落雁に静謐な美しさを与えました。
森八と民藝運動とのかかわりは菓子型です。1972年発行の機関誌『民藝』は、加賀の菓子型の特集号で、1979年に日本民藝館で開催された、柳宗理の渾身の企画展「日本の菓子型展」にも森八は多くの菓子型を貸し出しています。この展示の再現はかないませんが、金沢の森八本店2階には素晴らしいコレクションを有する「金沢菓子木型美術館」が併設されていて、必見です。
森八
住所|石川県金沢市大手町10-15
Tel|076-262-6251
営業時間|9:00〜18:30(1〜2月は〜18:00)
定休日|なし
text : Ricca Fukuda photo : Wakana Baba
2019年5月号 特集「はじめての空海と曼荼羅」