京都の紅葉、見るなら穴場の洛外の門跡寺院へ!
令和初の紅葉を愛でるなら、皇室ゆかりの門跡寺院がおすすめだ。街の喧騒から離れた名刹は自然豊かで、漂う空気も静謐。整えられた草木や枯山水とのコントラスト……、門跡寺院だからこそ見られる美しい紅葉に、思わずため息が漏れてしまうはず。
真紅の紅葉が境内を染め上げる
毘沙門堂
皇族が代々門主を務める門跡寺院は、格式の高さはもちろん、御所の建物が下賜されることも多いため、室内から庭園まで華やかな気品に満ちあふれるのが特徴だ。
天台宗五門跡のひとつである毘沙門堂も同様で、江戸期に洛中から山科に移った際、宸殿や勅使門、霊殿を後西天皇より拝領。鄙びた山間の里で堂々たる風格を漂わせる。中でも「動く襖絵」の異名をもつ宸殿襖絵は必見。機知に富んだ仕掛けに誰もがあっと息をのむはず。雁行する堂宇をめぐりながら、多彩な紅葉の名景を愛でられるのも魅力だ。
住所:京都市山科区安朱稲荷山町18
Tel:075-581-0328
拝観時間:8:30~17:00 (12月~3月15日頃8:30~16:30※受付は閉門30分前まで)
拝観料:境内無料、堂宇内の拝観は一般500円、高校生400円、小中学生300円、小学生以下無料
休館日:なし
http://bishamon.or.jp
※11月23日 「もみじまつり」開催
洛北の“小さな桂離宮”
曼殊院
こちらも千年の歴史をもつ天台宗五門跡のひとつで、江戸初期に良尚法親王の手で現在地の東山に寺域が移され、数寄屋造りの書院と庭園が造営された。親王は桂離宮を造営した八条宮智仁親王の第二皇子で、同離宮を完成させた智忠親王の弟にあたる人物。
それゆえ室内のあちこちで離宮の影響を受けた優美な意匠に出合うことができる。たとえば「月形卍崩し」と呼ばれる大書院の欄間は、月の字をモチーフにした桂離宮の欄間からのアレンジ。建物を小舟に、庭を大海に見立てた小書院の趣向も雅やかだ。
住所:京都市左京区一乗寺竹ノ内町42
Tel: 075-781-5010
拝観時間:9:00~17:00(受付は~16:30)
拝観料:一般600円、高校生500円、中小生400円
休館日:なし
www.manshuinmonzeki.jp
※11月1日~30日は夜間拝観を実施。日没~19:30まで(20:00閉門)
大原の里に広がる幽玄の世界
三千院
かつて梶井門跡と称された三千院は、最澄が比叡山に結んだ草庵に起源をもつ。平安後期以降に皇族が住持する宮門跡となったが、その長い歴史を毎年春に行われる皇室の回向法要(御懺法講)や、御所の旧材を用いて桃山期に造営された客殿がいまに伝える。
客殿の眼前には、皐月の刈り込みと四季の花々が彩る名庭「聚碧園」が、宸殿の前には池泉回遊式庭園の「有清園」が広がる。どちらも山深い大原の自然を取り込んだ景観が見事で、秋は苔のじゅうたんと紅葉のコントラストが胸を打つ。
住所:京都市左京区大原来迎院町540
Tel:075-744-2531
拝観時間:9:00~17:00(11月8:30~17:00、12~2月9:00~16:30)
拝観料:一般700円、高中生400円、小学生150円
休館日:なし
www.sanzenin.or.jp
御寺の名が伝える皇室との御縁
泉涌寺
泉涌寺は「御寺」の尊称をもつ皇室の菩提寺で、京の寺院の中でも別格の存在。14世紀以降に天皇の御火葬所となり、後水尾天皇から孝明天皇までの御陵をはじめ、歴代天皇の御尊牌が安置された霊明殿(非公開)を有す。今年ご譲位された平成上皇が6月に同寺に参拝されたのも記憶に新しいだろう。
いまなお参詣された皇族のご休憩所となるのが御座所で、仏事・皇室行事時以外は一般公開されている。建物は明治期に御所から移築された雅な御殿。庭園は小さいながらも起伏に富み、心癒される風景が広がる。
住所:京都市東山区泉涌寺山内町27
Tel:075-561-1551
拝観時間:9:00~16:30(閉門17:00)、12~2月は~16:00(閉門16:30)
拝観料:一般500円、中学生以下300円 ※御座所拝観(別途)は大人300円、保護者同伴に限り、小学生以下無料
休館日:なし
www.mitera.org
美しい紅葉をひと目見ようと、秋の京都はいつにも増して賑わいを見せる。今年の秋は中心部の喧騒を離れ、自然豊かな門跡寺院でゆるりと紅葉狩りを楽しんでみてはいかがだろうか。
文=山口紀子 写真=水野克比古、マツダナオキ
2019年10月特集「京都 令和の古都を上ル下ル」