髙島屋「TSUNAGU ACTION」
漆文化を紡ぐ《浄法寺漆》に出会う
後編|岩手・浄法寺の世代を超えて愉しむうつわ


日本の漆器は、かつて世界の貴族が愛したことで知られ、国産の漆は国宝の修理にも使用される稀少な素材だ。その約8割を占める「浄法寺漆」は、岩手県北部の二戸市浄法寺町を中心に採れる。その名産地で紡がれる文化を、髙島屋のサステナブル活動「TSUNAGU ACTION」を通して紹介する。
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漆器は、世代を超えて愉しむうつわです。

漆は、湿度と温度で化学変化を起こす唯一の自然素材だ。浄法寺塗の塗師は、漆それぞれの個性を見極め、自ら精製し一つひとつ手作業で塗り重ねる。
「ただ塗るのではなく、その日の温度、湿度や漆の粘度、乾く時間などを見ながら微調整します。刷毛目を出さずムラなく塗れるようになるまで10年近くかかりました」と話すのは、岩舘隆さんの息子で塗師の巧さん。数カ月かけ研磨しながら塗り重ねること6回。

重要文化財の修復にも使用されている貴重な浄法寺漆を上塗りに使用した漆器は、温もりと奥ゆかしい色つやをまとっている。使い続けることで自然と磨かれ、透明感が増す〝経年美化〟の特性は、漆ならではの魅力だ。
浄法寺漆を使ったうつわを製造販売しながら、後進となる職人を育成しているのが「滴生舎」だ。所長の小田島勇さんは熱く語る。

「浄法寺漆にかかわるすべての人は、普段の生活の中でこそ使ってほしいと願っています。先人から受け継いだ伝統を次世代につないでいくのが我々の使命です」


髙島屋の「TSUNAGU ACTION」を通して、日本が誇る美しい文化や伝統に触れ、心豊かなライフスタイルを送るきっかけにしてみてはいかがだろうか。
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「漆文化を未来へつなぐアクション」
が髙島屋で進行中!
アクション1『漆の苗木寄付』
~漆の木を増やそう~

髙島屋WAGOTO売場での浄法寺塗の販売点数1点ごとに、漆の苗木1本分の金額を「岩手県二戸市漆の郷づくり推進課」へ寄付。
アクション2『親子で使う浄法寺塗モニター募集』
~子供と一緒に国産漆に触れよう~

漆器を使う家庭を増やしたいという思いから、浄法寺塗の「こども椀」と「端反椀」を1客ずつモニタープレゼント。
募集期間|2025年3月12日(水)~ 31日(月)
募集数|計30名
※応募多数の場合は抽選となります。
≫応募フォーム
浄法寺塗は、髙島屋のWAGOTO売場
またはオンラインストアで販売中!

端反汁椀 溜/朱
(浄法寺漆器工芸企業組合)
価格|各1万2650円
(天然木・漆塗装、全工程浄法寺漆使用)
※2025年4月1日(火)より価格改定いたします。
※店舗・時期により在庫状況は異なります。
≫購入はこちら
髙島屋WAGOTOとは?

髙島屋のリビングフロアで展開している編集ショップ。「日本のものづくりの技・文化を未来につなぐ」をコンセプトに、いまの暮らしを心豊かに楽しむ品々を取り揃えている。
展開店舗|日本橋店、新宿店、玉川店、横浜店、柏店、大阪店、京都店
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岩手・安比川流域
(二戸市・八幡平市)の漆の歩み
728年 天台寺観音堂が建立。寺の僧侶の手で自家用の什器を制作したことが浄法寺塗の起源とされる。
1910年 二戸漆器伝習所を開設。荒沢村漆器生産販売購買組合を設立。
1912年頃 浄法寺での生産が、漆器から生漆中心となる。
1948年 浄法寺町内だけで漆掻き職人が200名を超える。
1949年 岩手県が「漆造林五ヶ年計画」を実施。二戸郡で漆の植林が進む。
1975年 岩手県浄法寺漆生産組合が設立。1978年から同組合が漆の植林をはじめる。
岩手県工業試験場が地元の漆掻き職人や塗師とともに浄法寺塗を復活。
1979年 浄法寺漆器工芸企業組合が設立される。
1985年 浄法寺塗が国の伝統的工芸品に指定。
1986年 金閣寺の修理に浄法寺漆が約1・5t使用される。
1987年 浄法寺歴史民俗資料館所蔵の「浄法寺の漆掻きと浄法寺塗の用具及び製品」3832点が国の重要有形民俗文化財に指定。
1995年 浄法寺漆芸の殿堂「滴生舎」が設立。
1996年 日本うるし掻き技術保存会を設立(事務局・浄法寺町)。
1999年 安比塗漆器工房がオープン。
2008年 浄法寺漆認証制度が開始。
2016年 二戸市地域おこし協力隊(うるしびと)を採用。
2017年 安比塗企業組合を設立。
2018年 浄法寺漆が、農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」に登録される。
2019年 2025年度までに年2万本の植栽を行う「ウルシ林創生植栽計画」策定。
2020年 「奥南部漆物語〜安比川流域に受け継がれる伝統技術〜」が日本遺産に認定。
漆掻き技術を含む「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産に登録される。
浄法寺塗の女性塗師が、浄法寺うるしび合同会社を設立。

TSUNAGU ACTIONは髙島屋が顧客や取引先と取り組むサステナブル活動。「PLANET(美しい地球と豊かな資源を、未来へ)」、「SOCIAL(地域の伝統や文化を伝え、広げていく)」、「PEOPLE(すべての人の自由と平等、笑顔に寄り添う」の3つの基本テーマを掲げ、よりよい未来につながる商品や企画を提案している。
text: Ryosuke Fujitani photo: Hiroyuki Jyoraku
2025年4月号「ローカルの最先端へ。」