遠野醸造が目指すコミュティブルワリーとは?
クラフトビールの聖地、遠野へ旅をする
ホップを軸に、市やホップ農家が一体となって、「ビールの里」を目指す遠野市。全4回の《クラフトビールの聖地、遠野へ旅をする》連載3回目は、「ビールの里」プロジェクトの過程で移住者3人が立ち上げた「遠野醸造」に迫る。彼らが目指す遠野の未来とは。
「ホップなどの地域資源をつなげて、醸成できるような場所にしたい。ここでただビールを造るだけでなく、コミュニティの中心となるような場所にできれば」。袴田大輔さん、太田睦さん、田村淳一さんの3人はこんな思いから遠野醸造を立ち上げた。
実はいままた、地方がビールに目を向けつつある。1990年代後半の地ビールブームでは、クオリティが伴わず、値段も高いといった理由で、すぐに沈静化。地域おこしの意味合いもあったが、長期的視点に立って醸造していたブルワリーは少なかった。
そして、2010年前後からクラフトビールが人気に。IPAのようなアメリカのビールに影響を受けており、醸造家たちの「自分たちの造りたいビールを」という思いを込めたビールも多い。それが、ここ最近また「地」に回帰する傾向が見られる。
以前の地ビールブームと異なるのは、ただのお土産ビールではなく、地域を巻き込んでともに成長していくという視点。その先頭を走っているブルワリーのひとつが遠野醸造だ。
その遠野醸造の3人が「地域の人に飲んでもらうにはどうしたらいいか」を考えた結果が、ビールをただ造って飲んでもらうという「点」ではなく、遠野のコミュニティとして「面」での役割を果たすことでもあった。その具体的事例がビアツーリズムであり、ハスカップヴァイツェンのような地元とのコラボにも現れている。
現在、遠野醸造のビールは、イベントを除いて遠野醸造タップルームでしか飲むことができない。地域の人が飲むだけでなく、市外・県外から遠野醸造を目的に訪れる人も。「遠方から泊まりに来る人が増えて、民宿の人からも感謝されたんですよ」と田村淳一さん。遠野醸造はコミュニティブルワリーとして、2年目の夏を迎える。
文=富江弘幸 写真=鍵岡龍門
2019年7月号 特集「うまいビールはどこにある?」
遠野醸造TAPROOM
住所|岩手県遠野市中央通り10-15
Tel|0198-66-3990
営業時間|月・水・木・金曜17:00〜22:00、土曜12:00〜22:00、日曜12:00〜21:00
定休日|火曜
https://tonobrewing.com
《クラフトビールの聖地、遠野へ旅をする》
1|地域一丸で遠野を「ビールの里」に
2|ホップ農家と醸造家のおいしい関係
3|遠野醸造が目指すコミュティブルワリーとは?
4|今年の夏は「遠野ホップ収穫祭」で乾杯!