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“復興のシンボル”三陸鉄道リアス線ひとふで書きの旅

2019.8.22
“復興のシンボル”三陸鉄道リアス線ひとふで書きの旅
白井海岸~堀内間の大沢橋梁を走る三陸鉄道の列車。海を背景に全長156m、高さ30mの橋を渡る姿が美しい。撮影の名所で、車内からの景観も見事である
写真:アフロ

2019年3月23日、復旧工事を進めていたJR山田線釜石~宮古間の路線が三陸鉄道に移管され、久慈駅から盛駅を結ぶ三陸鉄道リアス線が開通した。163㎞という距離は日本の第三セクター鉄道の最長路線。リアス線を堪能すべく、久慈~盛間を乗り降りなしで乗車する“ひとふで書き”の旅に出掛けた。

唐丹駅から吉浜駅へ向かう車窓。東日本大震災発生時、吉浜駅近くの鍬台トンネル内で緊急停車し、津波を免れた列車は「奇跡の車両」と呼ばれ、いまも現役だという

三陸鉄道の設立は1981年。1984年には久慈~宮古間を結ぶ北リアス線、釜石~盛間を結ぶ南リアス線の運行をスタートした。東日本大震災により全線運行不能になるも、わずか5日後の3月16日には久慈~陸中野田間で運転を再開。

その後も早い段階で一部区間の運行を開始し、2011年3月中は震災復興支援列車として運賃無料で地元住民の足になり続けた。列車が走行する姿は、沿線に暮らす方々の希望になっていたと聞く。

車掌さんは皆、気さくで優しい。ユニフォームには「36(さんりく)」や特産品である鮭と「大漁」の文字、三陸鉄道のシンボルカラーの青・赤・白などが刺繍されている

2014年には全線が復旧し、2019年3月23日、久慈~盛間を結ぶリアス線が開通。当日は釜石~宮古間を記念列車が2往復運転、各駅のみならず沿線にも多くの人々が集まったという。大漁旗や小旗を振りながら、リアス線開通を喜び、歓迎したのだ。

旅の目的は久慈~盛間を通しで乗車すること。約4時間30分の道のりに美味しい彩りを添えるべく、久慈駅内にある「三陸リアス亭」でうに弁当を購入。弁当箱いっぱいに5、6個分の蒸しウニが敷き詰められた名物駅弁だ。

「三陸リアス亭」のうに弁当(1470円)。塩ウニの製造過程で取れるエキスで炊いたご飯の上に、ウニがたっぷり。売り切れ必至のため、事前予約がおすすめだ

列車に乗り込むと、観光客だけでなく、通学する高校生や通院・買い物で利用する住民など、ワンマン運転の車内はアットホームな雰囲気。会話を楽しむ人、弁当を広げる人、車窓からの景色を眺める人、それぞれが思い思いに過ごしている。まさに地域に愛されている路線なのだ。

列車は三陸海岸沿いを走り、深く美しい青をたたえる海と空、緑豊かな山間部、復興が進む街並みなど、変化に富んだ風景が流れていく。トンネルが多く、暗がりを抜けた先で出合える土地ごとの景観にも胸が高鳴る。

36-R1/R2、36-R3のクラシカルな雰囲気が漂う車内は、大きな固定窓とテーブルを配したボックスシート。貸切やイベント時に多く使われるが、定時に運行することもある

野田玉川~堀内間の安家川橋梁、堀内~白井海岸間の大沢橋梁、宮古~磯鶏間の閉伊川橋梁などの絶景ポイントでは停車や徐行をしてくれ、ひとつの駅を出発すると次の駅の見どころや特徴を紹介する車内アナウンスが流れるという粋な計らいもうれしい。

沿線各所では住民が手を振ってくれ心が温かくなる。“復興のシンボル”とされる三陸鉄道だが、元気をもらえるのは旅人側。実際に乗ることで実感できる、リアス線の魅力を体感したい。

文=大森奈央 写真=中村香奈子
特集「夢のニッポンのりもの旅」


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