「遠野醸造」
ホップ農家と醸造家のおいしい関係。
クラフトビールの聖地、遠野へ旅をする
遠野が「ビールの里」を目指すために、重要な役割を果たすホップ農家と醸造家。全4回の《クラフトビールの聖地、遠野へ旅をする》連載2回目の今回は、両者の距離が近いことによって生まれる新たな可能性に迫る。
遠野は世界的に見ても稀有な環境にあるといえる。日本一のホップ栽培面積を誇るホップ畑があり、そして市内には遠野醸造とズモナビールを造る上閉伊酒造という2軒の醸造所もある。ホップ畑と醸造所がこれほどまでに近い距離にあるのは、あまり例がない。この物理的な近さが、ホップ農家と醸造所の新しい可能性をつくり出していると言っていい。
距離が近いということは、収穫したホップをすぐ醸造に使えるということでもある。ホップは収穫すると徐々に水分が飛んでいき、それとともにみずみずしい香り成分までもが揮発してしまう。しかし、遠野のようにホップ畑とブルワリーの距離が近ければ、収穫したばかりのフレッシュホップを醸造に使うことができ、ほかでは飲めないみずみずしい香りをもったビールを造ることができるのだ。
また、その距離の近さを生かして、ビアツーリズムも開催。ホップのグリーンカーテンが見られる夏には、ホップ畑を訪れてビールを飲むこともできる。そこで摘んだ生ホップをビールの泡にのせて味わう体験は、そうそうできるものではないだろう。
そして、物理的な距離の近さが、ホップ農家と醸造家の距離も縮めているのもおもしろい。
「いまホップ農家が畑で飲みたい本気のセゾンを造ろうとしているんですよ」とは、遠野醸造の袴田大輔さん。セゾンとは、もともとベルギーで農作業中の水分補給用として飲まれていたビアスタイル。そんなビールを、ホップ農家とともにディスカッションしながら造り上げるという。このようにホップ農家がビール醸造にかかわるということも、例がないことだろう。これも、ホップ農家とブルワリーが近いからこそできることだ。
遠野がホップでつながり、同じ方向を向いて進んでいく。ホップの力は偉大だと言わざるを得ない。
文=富江弘幸 写真=鍵岡龍門
2019年7月号 特集「うまいビールはどこにある?」
遠野醸造TAPROOM
住所|岩手県遠野市中央通り10-15
Tel|0198-66-3990
営業時間|月・水・木・金曜17:00〜22:00、土曜12:00〜22:00、日曜12:00〜21:00
定休日|火曜
https://tonobrewing.com
《クラフトビールの聖地、遠野へ旅をする》
1|地域一丸で遠野を「ビールの里」に
2|ホップ農家と醸造家のおいしい関係
3|遠野醸造が目指すコミュティブルワリーとは?
4|今年の夏は「遠野ホップ収穫祭」で乾杯!