伝統を進化させながら継承する「FOLKHOOD」のプロダクト。
大島紬の技が世界と出合う
大島紬の技法のひとつである「泥染め」を学びに奄美大島に来た一人の女性とクリエイティブチームの「FOLKHOOD」。この出会いが日本の伝統に新しい息吹を吹き込むこととなった。《大島紬の技が世界と出合う》後編は、伝統を進化させながら継承する「FOLKHOOD」のものづくりを追った。
「大島紬」の起源は天智天皇の時代、7世紀にまでさかのぼる。鹿児島では養蚕を行っており、その染色に藍染など植物を利用していた。反物の美しさには目を見張るものがあり、朝廷へも献上していたという。
現在の「黒大島」と呼ばれる泥染めの手法は江戸時代、村人が薩摩藩にその織物を取り上げられまいと田んぼの中に隠したところ、美しい色に染まったことがはじまりといわれている。
まず図案を起こし、設計図を元にした糸づくりから大島紬の工程がはじまる。タテ糸、ヨコ糸はそれぞれ地糸と絣糸(模様を施す糸)に分けられる。大島紬は先染め。織る前に図案通り泥染めや染料を刷り込む作業をし、糸を組み合わせることにより柄を生み出す。
大きく分けて40にも及ぶ工程それぞれに熟練の職人技が必要とされる日本の伝統工芸だ。基本はすべてが手作業で、前ページで泥染めについて紹介したが、それはほんの一部に過ぎない。
精緻できめ細やかな大島紬の反物のために、何人もの職人が技をつなぐ。1反の糸づくりには約8カ月、織りにも2カ月要する。気が遠くなるような作業が1年間続いてようやく完成するのだ。すべては「柄の美しさ」の追求のために職人たちは手間を惜しまない。
「今回の商品を通じて、これまで大島紬を知らなかった方々へまず認知をしてほしいと思いました。中でも後継者が減っている泥染めの手法を使い、リトアニアのリネンやラトビアの木工品を染めました。身近にその技術を感じていただければうれしいですね」と戸村さん。
大島紬は1反で数十万円以上する高級品だ。ほとんどの人がなかなか手にする機会はないだろう。であれば、いかに近い存在にするか、戸村さんはその方法を考えた。
伝統をそのまま伝えるのではなく、時代に合わせたものづくりこそがこれからの時代に必要となってくる。結果、伝統も進化しながら継承される。
染めるのは布だけではなく木工品も。「染め=布」という固定観念を取り払った新しい価値観が創出された。布は夏八木さん、木工品は糸紀さんが染めを担当する。
それぞれの商品は12月中旬頃、「FOLKHOOD」のウェブサイトにて販売開始の予定だ。大島紬の技術をぜひ身近に感じてほしい。
【問い合わせ】www.folkhood.com
文=中野和香奈 写真=内藤貞保
2018年12月号 特集「目利きが惚れ込む職人の逸品」