京都《大原野神社》紫式部が訪れた
“京の春日さん”【後編】
|源氏物語ゆかりの定番名所①
長岡京遷都の際、春日大社の分霊を歓請したことにはじまり、文徳天皇によって社殿が造営された「大原野神社」。一条天皇など多くの天皇が行幸し、藤原氏の氏神として紫式部も心を寄せていた場所であった。
後編では源氏物語ゆかりの定番名所である「大原野神社」の見どころをご紹介。名画風の池を配し、随所で鹿に出会える境内や五穀豊穣と平和を願うお祭とは?
名画風の池を配し、随所で鹿に出合える
京の春日さんといわれるように、境内には春日大社の眷属、鹿の姿もあちらこちらで見掛ける。本殿前には明治期につくられた雌雄の鹿の像が立つ。
手水舎を見守るのも鹿である。手水舎の水は、昔と同じ水脈からくみ上げられ、境内の瀬和井にも清水が湧き出ている。この水は、三十六歌仙の一人、大伴家持も愛飲したと伝わり、古来歌枕として数多の歌に詠まれてきた。
境内の鯉沢池は、奈良の猿沢池を模したもの。祖父・藤原冬嗣の思いを引き受け、奈良の社の壮麗さを求めた文徳天皇は、境内に池を配して大和の趣を取り入れた。
上から見るとハート形にも見えるという池は、夏になるとビッシリと睡蓮で埋め尽くされ、フランスの印象派の巨匠、クロード・モネの名画を思わせるという声も。かたわらには心身の端麗や美容向上、生命力向上のご利益をうたう若宮社がある。
五穀豊穣と平和を願う御田刈祭
祭礼は例年9月に行われる御田刈祭が広く知られている。境内の土俵で行われる神相撲は、勝敗を競うのではなく、助け合うことを誓う儀式。300年以上続く特殊神事を見ようと多くの人が訪れる。
毎秋の豊作に感謝する特殊神事。この日奉納される「神相撲」は1717年に実施された記録が残り、京都市無形民俗文化財に登録されている。
「神相撲」は、氏子地域の北春日町と南春日町の神力士が清めの塩を包んだ紙をくわえて立ち合い、必ず1勝1敗で引き分ける。
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大原野神社
住所|京都市西京区大原野南春日町1152
Tel|075-331-0014
拝観時間|なし(社務所の受付は9:00〜17:00)
定休日|なし
拝観料|無料
https://oharano-jinja.jp
text: Mayumi Furuichi photo: Takuya Oshima
Discover Japan 2024年11月号「京都」