夏酒を楽しむ“6つ”のキーワードから代表銘柄をピックアップ!
|今こそ知りたい夏酒のこと【後編】
日本酒業界を取り巻く、さまざまな技術革新により令和の夏酒は格段に進化を遂げている。夏に日本酒? いえいえ、夏に日本酒! なのです。
後編では、千葉麻里絵さんに挙げてもらった夏酒を楽しむ6つのキーワードから、代表銘柄をピックアップ!
令和の夏酒を楽しむキーワードは、ラベル、酸味、低アル、スパークリング、スタイル、そして四季。該当する代表銘柄を千葉麻里絵さんに選んでもらったが、前ページでも指摘している通り、「ラベル×低アル」「酸味×スパークリング」、「ラベル×酸味×スタイル」などキーワードの掛け算が起こっているのが、いまのトレンドだ。
夏に飲みたくなる要素が詰まった夏酒が店頭に並ぶ日は、もうすぐそこ。紹介した代表銘柄は、西麻布「EUREKA!」で楽しむことができる。もちろん、好みの一本を見つけて自宅で楽しむもよし。麻里絵さん直伝の“夏飲みスタイル”もぜひお試しを!
01|ラベル
花火や蚊取線香、蝉やカブトムシなどの風物詩をモチーフにしたラベルが、夏の気分を高めてくれる。近年は図柄をプリントした瓶も登場し、瓶が汗をかいてもラベルが剥がれなくなったのも、夏酒の進化のひとつだ。
賀茂金秀 辛口純米 夏純
夏空に浮かぶ入道雲をモチーフにしたラベル。EUREKA!定番の夏酒で「バランス型」と麻里絵さん。汗をかいた後に、ふと落ち着いて整うときに飲みたくなるお酒なんだとか
価格|1595円/720㎖
原材料|八反錦100%
精米歩合|60%
アルコール度数|15度
製造元|金光酒造
Tel|0823-82-2006
www.kamokin.com
02|酸味
夏に爽やかな液体を欲するのは、世の常。新政酒造の亜麻猫、今田酒造本店の海風土(シーフード)など高酸味酒の代表酒は多い。白麹仕込みの酒よりも、夏酒ではリンゴ酸高生産性酵母を使った酒が目立つ。
仙禽 かぶとむし
「大人のレモンスカッシュ」と評される、仙禽ファンが夏の到来を心待ちにする季節酒。リンゴ酸×低アル×夏の風物詩を描いたプリント瓶と、夏酒のキーワードが多数
価格|1950円/720㎖
原材料|栃木県さくら市産山田錦100%
精米歩合|麹米50%、掛米60%
アルコール度数|14度
製造元|せんきん
Tel|028-681-0011
http://senkin.co.jp
03|低アル
低アル夏酒の先駆けといえば「東一 純米吟醸 Nero」。2007年当時の製造部長・勝木慶一郎さんが、加水しない「原酒」で13度の「低アル」を提唱し、世に広まった。昨今では低アル度合いが増し、10度を下回る酒も。
風の森 ALPHA1 夏の夜空
11度の低アル×風の森特有のガス感×夏ラベルと、夏酒要素の掛け算が成立。「スパークリングまではいかないけど、ほどよいガス感があり、のど越しのよさが最高」と麻里絵さん
価格|1430円/500㎖
原材料|奈良県産秋津穂100%
精米歩合|70%
アルコール度数|11度
製造元|油長酒造
Tel|0745-62-2047
www.yucho-sake.jp
04|スパークリング
炭酸を注入したタイプ、瓶内二次発酵のにごりタイプ、シャンパーニュと同じように瓶内二次発酵させて滓抜きしたタイプがある。瓶内二次発酵による発泡性清酒の先駆けは「MIZUBASHO PURE」で、2008年に誕生した。
貴 純米本生 スパークリング
スパークリング×酸味の爽やかな一本。その味わいは、「今年の『貴 純米本生 スパークリング』は違う!」と麻里絵さんが興奮気味に話すほど。グラスに氷を入れて飲んでも◎
価格|2035円/720㎖
原材料|山口県産山田錦100%
精米歩合|60%
アルコール度数|15度
製造元|永山本家酒造場
Tel|0836-62-0088
www.domainetaka.com
05|スタイル
ロックや炭酸割りはもちろん、麻里絵さん考案の「コーヒー氷」や「スパイスミックス」など、日本酒をさまざまなスタイルで楽しむ人が増えている。ひと昔前と違い、日本酒の味を殺さずに楽しむのがいまのやり方だ。
玉川 Ice Breaker
杜氏のフィリップ・ハーパーさんが「グラスに氷を入れて」と推奨し、飲食店でもロックが広まった。夏酒といえば、このペンギンを思い浮かべる日本酒ファンも少なくない
価格|1320円/500㎖
原料米|滋賀県産日本晴100%
精米歩合|60%
アルコール度数|17〜18度
製造元|木下酒造
Tel|0772-82-0071
www.sake-tamagawa.com
06|四季
麻里絵さんが新たに加えたキーワード「四季」。夏だけの季節酒ではなく、その土地の四季を醸すという考え方だ。四季の中の夏酒という提案はまだ主流ではないが、風土を醸す酒蔵が地元の四季に注目していく可能性は高い。
常山 純米吟醸 玄達
9代目蔵元の就任を機にリブランディングした常山。福井の四季を醸す蔵として、夏の福井を表現したのがこの酒だ。夏の白身魚と相性抜群の淡麗芳醇を標榜する一本
価格|1980円/720㎖
原料米|福井県美山上味見地区産五百万石
精米歩合|麹米50%、掛米60%
アルコール度数|15度
製造元|常山酒造
Tel|0776-22-1541
https://jozan.co.jp
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text: Nobuhiko Mabuchi photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2024年6月号「おいしい夏酒」