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湯治っていつからあるの?
歴史と効能、日本人と温泉の関係
|日本人と温泉にまつわるエトセトラ①

2024.2.15
湯治っていつからあるの? <br><small>歴史と効能、日本人と温泉の関係<br>|日本人と温泉にまつわるエトセトラ①</small>

多くの火山を有し、全国各地に多様な温泉をもつ日本。日本人にとって温泉は野戦病院として利用されるほど、病気やけがの治療の選択肢として大切にされてきた。
 
今回は、湯治(とうじ)の歴史、日本人にとっての温泉の存在について紹介する。

監修・文=松田忠徳(まつだ ただのり)
1949年、北海道・洞爺湖温泉生まれ。東京外国語大学大学院モンゴル文学専攻修了。温泉学者、医学博士、旅行作家。「温泉教授」の異名で知られる、温泉学の第一人者。『全国温泉大全』など著書は約100冊

湯治っていつからあるの?

1811(文化8)年に成立した箱根七湯の案内書。湯本など箱根にある7つの温泉の効能や、当時の観光スポットが紹介されている 『七湯集』/国立公文書館デジタルアーカイブ

「温泉の原点は“湯治”にある」といわれるが、その湯治はいつ頃からはじまったのだろうか? 最初に「湯治」の文字が出てくるのは、保元の乱で有名な平安後期の公卿・藤原頼長の日記『台記』だ。1147(久安3)年の条に「今日から湯治をはじめる。風邪を防止するため」とある。ただし、水湯と潮湯によるものだった。温泉では『新古今和歌集』の選者で鎌倉時代の歌人・藤原定家の日記『明月記』の1226(嘉禄2)年の条に「藤原範基が木崎へ湯治に出掛けたが、深酒がたたって亡くなった」との記述。木崎とは現在の兵庫県城崎温泉のこと。

温泉は禊の場だった!

画像はイメージです

天皇が御神体を清められる水を斎川水という。斎は身を清くする意の「清」からきている。また湯と同音で、禊には川や滝の水だけでなく、湯も使われていた。湯の峰温泉や湯川温泉は熊野三山詣での際の湯垢離(温泉による禊)の地として広く知られていた。

温泉を敬う日本人の “温泉DNA”

温泉地: 玉造温泉(島根)、施設: 界 玉造

温泉が古来から重んじられたのは、禊の場所であったからだけではない。『出雲国風土記』(733年)に、島根・玉造温泉のことが記されている。「川辺に温泉が湧いている。この湯で一度洗えば容貌も美しくなり、重ねて洗えば万病すべて治癒してしまう。昔から例外なく効験を得ており、これを神の湯と呼んでいる」。天平年間、人々は温泉で禊をし、心身の穢れを清めただけでなく、温泉で病気が治癒することも知った。そこに信仰心が芽生え、“神の湯”と呼んで崇めたとしても不思議はない。その血が受け継がれてきたのだ。それを日本人の“温泉DNA”と呼んでもいいだろう。確かに現在、「(温泉で)万病すべて治癒してしまう」とは言い難くなった。一方で、薬では癒し難いストレスや肩凝り、首凝り、眼精疲労をはじめとする症状に温泉がもつ医学的な役割が高まっていることも、また事実だろう。首都圏や関西圏をはじめ、都市部の温泉の隆盛がそれを示唆している。

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text: Tadanori Matsuda
Discover Japan 2024年2月号「人生に効く温泉」

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