旅のスタイルの多様化とローカルへの注目度で年々人気が高まっているオーベルジュ。その中で、2023年6月に大分・湯布院で産声を上げ、圧倒的な食材へのこだわりと至福の滞在体験で美食家を虜にしている唯一無二の“循環型オーベルジュ”「ENOWA YUFUIN」を訪れた。
今回は、メニューありきではない、その日の畑の状況に応じてアレンジする料理の数々をお見せする。
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その日の畑が決める料理、すべて見せます。
アペリティフを楽しんだ後、移動したレストラン「JIMGU」のテーブルでは、その日収穫した野菜やハーブのブーケが迎えてくれた。
「決まったレシピはありません。毎朝ファームへ足を運び、色や感触、味のコンディションを見てアレンジします」
メニューありきではなく、すべての料理はファームが決める。セオリーのサイズではなく、たとえ新芽の状態でも旨みや香りがピークに達していれば収穫し、生産地からテーブルへ最速の鮮度で美味しさを届ける〝FARM-DRIVEN〟が、タシさんの哲学だ。
ひと口いただくだけで濃厚な味わいがほとばしるアスパラガス、同じトマトをセミドライ・ピクルス・コンフィと調理法を変えて合わせ、異なる食感で旨みを凝縮させたタルタルなど、みずみずしい素材の生命力と、創造性豊かな組み合わせで表現された料理は驚きと発見、そして未体験の美味に満ちている。ハイライトは、シグネチャーであるブーケだ。ガーデンの素材を見た後にいただく経験は格別なことこの上なく、風土への気づきを与えてくれる。その一皿ひと皿の料理に合わせて厳選された世界のワインと日本酒のペアリングを楽しめば、心が自然に歓喜していく。
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《ENOWA YUFUIN》が
湯布院生まれの食材だけを使う理由
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text: Ryosuke Fujitani photo: Sadaho Naito
取材協力=九州観光機構
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」