《ENOWA YUFUIN》で感じる大地の恵み
世界の美食家を魅了する、
大分・湯布院の循環型オーベルジュへ。①
旅のスタイルの多様化とローカルへの注目度で年々人気が高まっているオーベルジュ。その中で、2023年6月に大分・湯布院で産声を上げ、圧倒的な食材へのこだわりと至福の滞在体験で美食家を虜にしている唯一無二の“循環型オーベルジュ”「ENOWA YUFUIN」を訪れた。
足を踏み入れたら、
美味しい時間ははじまっている。
ローカルに位置し、宿泊施設を備えたエレガントなレストランで美食が堪能できるオーベルジュ。その地域独自の食文化を取り入れ、地産地消で現代的解釈の郷土料理を表現し、風土を感じる滞在体験も提供する。食と旅の多様化が進むいま、国内外でそういった施設が増えている。その中で、日本を代表する温泉の街、大分・湯布院に、これまでにない〝循環型〟のオーベルジュが誕生したことはご存じだろうか。2023年6月にオープンして以来、食感度の高いフーディたちがこぞって訪れているその目的地が、「ENOWA YUFUIN」だ。
湯布院町の高台にある雄大な自然に囲まれた敷地に、市街地や由布岳を望む露天風呂とプールを配したヴィラ、多彩なガーデン、絶景を見晴らすことができるサウナなどを備えたENOWA YUFUINのコンセプトは、「ボタニカル・リトリート」。大地の恵みを生み出すファーム、湯布院の豊かな自然が育む命、そして水や風、植物、人、すべての〝縁の輪〟をつなぎ、ゲストは満ち足りた自分と出会う。
その核となる食体験を担っているのが、エグゼクティブシェフのタシ・ジャムツォさんだ。農場から食卓へ届けるという〝Farm to Table〟の先駆けであり、NYのミシュラン二つ星レストラン「Blue Hill at Stone Barns」で4年間スーシェフを務めたタシさんが、ENOWAの思想に共鳴。自ら農作物を栽培するENOWAファームを立ち上げるところから物語ははじまった。師事したのは、オーダーメイドの野菜づくりで食材を〝食財〟に変える匠、「石割農園」の石割照久さん。畑の土壌づくりから取り組み、約3年かけてトライアンドエラーを繰り返して、いまは多種多様な季節の野菜や果物、ハーブ、植物をすべて無農薬で育てている。タシさんは、その素材を余すことなく使用し、ポテンシャルを最大限に引き出して五感を呼び起こすイノベーティブ・キュイジーヌへと昇華させる。真のサステイナビリティを取り入れた美味しい時間のプロローグは、施設内のインドアガーデンに足を踏み入れた瞬間からはじまる。
自然が循環する輪をイメージしたナチュラルな空間には、ファームで育てている野菜やハーブなどが植えられている。そこで目の当たりにするのは、食材の生きた姿だ。
そして、空が赤く染まった夕暮れに、ガーデンに隣接するバーで3皿のアペリティフが供され、美食劇場の幕が上がった。
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“その日の畑が決める料理”
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text: Ryosuke Fujitani photo: Sadaho Naito
取材協力=九州観光機構
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」