山口県《大谷山荘》
長門湯本温泉の老舗旅館が新提案するラグジュアリーな滞在
山口県北西部に位置する老舗旅館「大谷山荘(おおたにさんそう)」。これまで国内外のVIPをはじめ、多くのゲストをもてなしてきた。新しい道を切り拓き続ける、この名宿の魅力に迫る。
おもてなし&Luxury
趣のある大型旅館で過ごす
約600年もの昔から、人々の暮らしに寄り添い、心と身体を癒してきた長門湯本温泉。緑豊かな山あいには穏やかな音信川(おとずれがわ)が流れ、木々のささやきと水の音が、温泉郷一帯に優しく響き渡っている。「大谷山荘」が佇むのは、この美しき温泉郷の入り口。1881年の創業から約80年経った1960年、現在の場所に移転し、移りゆく時代に応じて軽やかに、独自性のある進化を続けてきた。
大谷山荘が目指すのは、「こころの場所」であること。長門湯本温泉に根ざす、人、自然、日本文化との調和を大切にする。滞在中、ゲストはあらゆる場面でそれを感じられるだろう。館内の随所で目にする萩焼の花器に生けられた草花は、「野に咲く花のように、心和むもてなしを」という大谷山荘の想いを体現。温かな気配りは細部まで行き届き、距離感も非常に心地よい。
大谷山荘は、山が間近に迫る曙館と音信川に面した芙蓉館で構成されており、“ダイナミズム”という大型旅館ならではの魅力を堪能できるのも特筆すべき点だ。滝を有する庭園が望める吹き抜けのロビーラウンジ、数種類の湯船を備えたふたつの温泉大浴場、自然と一体になれるテラスに加え、ベーカリー、ショップ、天体ドームなど胸躍る充実した施設を備え、どこも「老舗」と呼ぶにふさわしい上質な趣をまとっている。
多様なニーズをかなえる、
3つの新・客室
2023年、大谷山荘はさらなる進化を遂げた。さまざまな旅のスタイルに応える多様な客室の一部を、3つのタイプにリニューアルし、宿全体の客室グレードをクラスアップさせたのである。
ひとつは、山の緑に抱かれた「大谷山荘スイート」。セルフロウリュウができるサウナと水風呂、源泉かけ流しの露天風呂、外気浴のできるテラスがシームレスにつながり、至福のひとときを独占できる。開放感あふれるリビング・ダイニングと2室に分かれた寝室も、過ごしやすく機能的だ。ふたつ目の「ガーデンジュニアスイート」では、露天風呂とテラス、室内から美しい山景色が望め、上質な滞在を約束。そして、大谷山荘の新たなスタンダードルームとなるのが「曙プレミアム」だ。和の寛ぎと洋室の快適さを併せもつモダンな空間で、素足に馴染む琉球畳も心地よい。窓の外に広がる風光明媚な風景も実に見事である。
旬とうつわを味わう、
暦の料理
また、滞在を彩る夕食にも注目したい。大谷山荘では「その土地で採れたものを、その土地の料理法で、その土地で食す」という「三土料理の哲学」を基本としている。長門の会席料理の献立は月ごとに替わり、春夏秋冬の美味を提供。大型旅館としては珍しく漁港の仲買権を取得しているため、萩甘鯛や仙崎イカなど山口県が誇る旬の魚介類も存分に堪能できるのだ。京都で日本料理の技を磨いてきた料理長・武田純一さんは、「直接仕入れる魚介や野菜に加え、食材はこだわりの品ばかり。山口県の食材の美味しさを感じてもらえたらうれしいですね」と語り、この土地の風土を繊細な料理で表現している。
長門湯本温泉のまちめぐりまでが、
リゾート旅館の楽しみ
客室、食事、施設、もてなし、すべてに共通するのは長門湯本温泉にしか存在しない地域性だ。未来へ向けたまちづくりが進む温泉街を散策すると、それがより深く伝わってくる。「神授の湯」として親しまれる公衆浴場「恩湯」、古民家をリノベーションした飲食店、音信川に浮かぶ川床など、街と人と自然が共存する光景は、大谷山荘の魅力と重なり合う。
大谷山荘は連泊のリピーターが多い。理由は十人十色であるが、確かなのは、ゲストの「こころの場所」になっているからであろう。
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大谷山荘
住所|山口県長門市深川湯本2208
Tel|0837-25-3300
客室数|98室
料金|1泊2食付2万7800円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、UC、VISAなど
IN|15:00 OUT|11:00
夕食|和食(レストランまたは食事処)
朝食|和・洋食ビュッフェ(レストラン)
アクセス|電車/JR長門湯本駅から送迎バスで約5分 飛行機/山口宇部空港から車で約75
分施設|レストラン、川床テラス、ショップ、スパ、プールガーデン、天体ドームなど
text: Nao Ohmori photo: Norihito Suzuki
2023年10月号増刊「ニッポンの一流ホテルリゾート&名宿 2023-2024」