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長崎県《対馬島》
自然の恵みと保存の知恵が伝統の味に
島の達人・加藤庸二さんが選ぶ
大きく、深呼吸したくなる5つの島旅

2023.10.13
長崎県《対馬島》<br>自然の恵みと保存の知恵が伝統の味に<br><small>島の達人・加藤庸二さんが選ぶ<br>大きく、深呼吸したくなる5つの島旅</small>

大小無数の島々で構成されている島国ニッポン。島へ降り立てば、ゆるやかに流れる島時間に癒され、自然のもつ美しさや力強さを全身で体感できる。いままで見たことがないほど深遠な自然、大地の鼓動を感じさせる景色との出合い。未知なる祭りやその島ならではの伝統の食文化。そんな島々で大きく、深呼吸したくなる5つの島旅から、今回は、自然の恵みと保存の知恵が伝統の味、長崎県「対馬島」を写真家・加藤庸二さんが案内する。

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対馬の「せん」を使う伝統料理
サツマイモを水に浸けて発酵させ、でんぷんを取り出した「せん」でつくる伝統食「ろくべえ」

国内では3番目に面積の大きな島だ。実は南北に長く、端から端までは車でも2〜3時間近くかかるため、行き先によって交通手段を決めるのがいいだろう。船で着く厳原港は対馬島の下半分を回るのに好適。飛行機は、空港がちょうど島の東側の真ん中にあるので北へも南へも便利な手段だ。
 
国境の島であり、隣国との長い歴史に彩られる対馬島で、もうひとつ際立つものがある。それは食の豊かさだ。伝統的な知恵で、長い時間をかけて生み出す郷土食にはさまざまなものがあるが、筆頭に挙げるのは「ろくべえ」である。
 
一見かけ蕎麦のようにも見えるが、蕎麦ではない。サツマイモのでんぷんからつくられる「せん」というものからできた郷土食だ。その弾力のよい麺は、サツマイモを発酵・乾燥させた後、水で戻しながらこね、細切れの麺状に練ったもの。「せん」という名称は “千の手間がかかる”ことからついた名で、素朴な食べ物だが実に味わい深い対馬の味覚といってよいだろう。

冠婚葬祭で食べる対馬流寄せ鍋
魚を使うこともあるが、多くは地鶏を1羽つぶしてネギ、ニンジン、白菜などが入った鍋料理「いりやき」
実はそばの栽培も盛んな地域
対州(たいしゅう)そばは対馬の伝統的なそばで、地粉で打つ。勢いよく箸でつまむとポソポソと切れる崩れやすいそば

<加藤さん流・対馬島のめぐり方>
◎豆酘の赤米神田を訪ねてまず拝礼
◎食事は対馬のソウルフード「ろくべえ」
◎地粉のそば、地鶏のいりやきを食す

ツシマヤマネコは山の多い対馬島山中にすむヤマネコで、国指定天然記念物。対島野生生物保護センターで情報が得られる

<island data>
人口|2万7845人
面積|708.63㎢
周囲|832.9㎞
※2023年6月現在
問い合わせ|対馬観光物産協会(Tel|0920-52-1566)
 
<access>
飛行機/福岡空港から対馬やまねこ空港まで約35分、長崎空港から対馬やまねこ空港まで約30分
 
フェリー・高速船/博多港から厳原港までジェットフォイルで約2時間15分、フェリーで約4時間40分、博多港から比田勝港まで約5時間
フェリー・高速船問い合わせ先|九州郵船(https://kyu-you.co.jp

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鹿児島県「与論島」
 
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島の達人・加藤庸二さんが選ぶ
大きく、深呼吸したくなる5つの島旅

1|北海道《礼文島》
2|山形県《飛鳥》
3|東京都《神津島》
4|長崎県《対馬島》
5|鹿児島県《与論島》

text, photo: Yoji Kato
Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」

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