《新道工房》のうつわ
“古典技法 × 遊び心”で食卓を和ませる
先人たちの技やセンスに敬意を払い、独自の遊び心を交えて現代風にアレンジする新道工房。彼らのうつわを食卓に並べれば、たちまち空間に笑顔が生まれる。
渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、2023年3月25日(土)~4月9日(日)にかけて「新道工房 個展」を開催! 公式オンラインショップでも3月27日20時より順次取り扱い開始します。
新道工房(しんどうこうぼう)
神奈川県出身の宮本茂利(もり)さんと三重県出身の妻・智子さん。二人はともに愛知県立窯業高等技術専門校を卒業後、茂利さんは石川県の「山背陶房」、智子さんは「青窯」でそれぞれ九谷焼の制作に励む。お互い2000年に瀬戸市に戻り、結婚。2002年に新道工房を設立した。企画・デザイン全般、型やろくろによる成形を茂利さんが行い、智子さんが絵付を担当している。
平安時代から続く
焼物の地でうつわと向き合う
現代の食卓に、和食器の魅力を提案しているのが新道工房だ。宮本茂利さんと妻・智子さんは二十数年前、ともに愛知県瀬戸市にある訓練校で焼物の基本を修得。その後、石川県で九谷焼の制作に携わった後、互いに瀬戸市へ戻り、2002年に工房を構えた。
「妻も私も、もともと瀬戸にゆかりがあったわけではありません。ただ、さすが歴史ある陶都だけあって、作陶に不可欠な原材料や道具がすぐ手に入ります。利便性のよさに加えて、街全体に陶工たちの息遣いが漂っている気がして、作品づくりにも自然と熱が入ります」と話す茂利さん。
二人が手掛けるのは、中国・明時代末期(1621〜1644年)に中国を代表する名窯「景徳鎮窯(けいとくちんよう)」でつくられ、輸出されていた古染付(こそめつけ)。この磁器は自由闊達(かったつ)な絵柄と動植物を模したバラエティに富んだかたちが特徴的で、かつて日本の茶人たちがこぞって中国に発注していた。
「古染付の魅力は、ひと皿ずつにメッセージが込められているところ。たとえば鯉の絵柄は立身出世を表し、扇形の向付は繁盛を意味します。かつては皆、相手の幸せや健康を願い、来客の顔ぶれに合わせてうつわを使い分けていました。ある意味、メディアの役割を果たしていたともいえますね」
時代の流れとともに、伝統に対する意識が希薄になりつつある昨今。新道工房では、古染付の世界観を広く伝えるべく、茂利さんがろくろや型でうつわをつくり、智子さんが絵付を行っている。
「基本は、古い図録を参考に忠実に絵柄を再現しています。たとえば染料の質も、昔は現代ほどよくなかったと思うので、あえて顔料に土を混ぜて粘度を高めてから絵を施すなど、素朴な風合いを表現するための工夫をしています」
智子さんが手際よく筆を走らせている隣で、茂利さんは「普段使いできるように、うつわのサイズを小ぶりにアレンジするなどの配慮も欠かせません」とひと言。鮮やかな色彩の作品は、どれも思わず見入ってしまうほど愛嬌がある。
「角皿は丸く、丸皿は角を意識して盛りつける。和食器の基本を取り入れると、より簡単に盛りつけが楽しめると思います。絵柄や形状の違ううつわを合わせて、ギャップから生まれる独自の空気感を味わってほしいです」
わずか1㎝の遊び心に、
思わず笑みがこぼれる
唐子付きのうつわは、新道工房を語る上で外せない人気シリーズ。猪口や小皿、向付に至るまで、種類豊富に揃う。そもそも唐子とは中国の装いや髪型をした子どものことで、子孫繁栄や家系繁栄を表す吉祥文様として、うつわの世界でも長年親しまれてきた。
「はじめは唐子の箸置きを制作していたのですが、1㎝ほどの小さな唐子をレンゲにのせて個展で発表したところ、予想を上回る反響があり、2017年からずっとつくり続けるようになりました。うつわの縁で遊び回る唐子たちは、自由や許しの象徴。ルールや形式を重視しがちな昨今、食事のときくらい肩の力を抜いてリラックスしてほしい。そんなメッセージを込めています」
作品の要となる唐子づくりは、成形から絵付まで智子さんが一人でこなす。つくる上でのポイントをうかがうと、「気分よく絵付をすることですね。唐子の表情もにこやかになります」と笑顔で話す。
カラフルな服をまとった唐子たちは「毎日もっと楽しもうよ」と話し掛けてくるよう。日々慌ただしく過ごしている人にこそ、唐子シリーズをおすすめしたい。
読了ライン
うつわで戯れる唐子ができるまで
個展ラインアップをご紹介!
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text: Misa Hasebe photo: Takehisa Goto
2023年4月号「すごいローカル、見つけた!」