福島・小高《福相食品工業》
美味しい伝統は小高の人と技でできている。
代々伝わる伝統的な製造方法で、ハムやベーコンづくりなどを行う福相食品工業。福島県南相馬市小高区にある工場を訪ね、ハムづくりや街の未来に懸ける想いをうかがった。
江戸時代から続く
福島・小高の味を守る理由とは?
福島・小高(おだか)区に工場を構える福相食品工業が、ハムづくりをはじめたのは江戸時代末期。街道を行き交う行商人がこの地にハムを伝え、有志によってハム製造が行われるようになったという。
「私どものハムは、塩と砂糖、香辛料で味つけする製法です。資料が現存していないため正確なことはわかりませんが、スペイン流のつくり方だと考えられます」
そう話すのは、福相食品工業の5代目・末永義人さんだ。当時の人々は調味料の配合や製法を、日本人の味覚に合うように改良。肉もジビエやクジラから豚へと変わり、昭和初期に「江戸末期燻煙製法」を確立する。これは調味料を混ぜたソミュール液に肉を漬け、数週間熟成させた後、桜の木片で燻すというもの。手間のかかる作業のため生産量は限られるが、現在もこの製法を守り続けている。
「合理性を追求すれば、生産量も上がります。でもこれまでお客さまからは、クレームを含め特にご意見をいただいていませんから現状維持がベストなんです」
福相食品のハムやベーコンは、リピーターが非常に多い。小高出身の男性が結婚のあいさつに出向く際、「小高ハム」を手土産とすることもあったとか。それは変わらぬ美味しさを裏付ける、何よりの証しといえよう。
「仕事は楽しく、おもしろく。ユニークな新製品のアイデアを社員といつも話し合っています」
2011年の東日本大震災の影響で製造がストップするも、同年には南相馬市原町区に仮設工場を建て、製造を再開。避難指示が解除された’16年には小高に戻り、本社工場を再建した。末永さんの背中を押したのは、スタッフの「やりましょう!」という強い想い、そして福相食品工業のハムを待ち望むお客の声であったという。
「小高の居住人口はいまだ4000人弱。後継者不足に悩む事業者も多いのが現状です。しかし小高には仕事がたくさんある。うちも新しい人材は大歓迎ですよ」
’23年春には本社隣に、観光や移住に役立つ機能をもたせた直営店をオープンさせる予定だ。
「小高の未来を考えた上での行動です。人がいないことには、何もはじまりませんから」
つくり方は何も変えない。
妥協のない味が、
地域に愛される。
小高の街で仕事も遊びも自分らしく謳歌する人を紹介するサイト「おだかる」。リアルな暮らしや移住支援、観光情報など、小高の魅力を見られる。
読了ライン
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福相食品工業
住所|福島県南相馬市小高区岡田字上川原田112
Tel|0244-44-3241
www.fukusosyokuhin.com
山賊焼セデッテかしまSA店
住所|福島県南相馬市鹿島区浮田もみ木沢212-1 セデッテかしま内
Tel|0244-26-4822(セデッテかしま)
営業時間|10:00~17:00
www.sedette.jp
福島県南相馬市小高区役所 地域振興課
Tel|0244-44-6716
https://odakaru.jp
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text: Nao Ohmori photo: Atsuhi Yamahira