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昆布の採れない富山県と
昆布の深いカンケイ【前編】
四十物昆布(あいものこんぶ)

2023.2.20 PR
昆布の採れない富山県と<br>昆布の深いカンケイ【前編】<br><small>四十物昆布(あいものこんぶ)</small>
くろべ漁業協同組合直営「魚の駅 生地」の昆布締め(写真はスズキ)。昆布で旬魚をはさみ寝かすことで魚の余分な水分が抜け、昆布の風味が魚に移り、その旨味が底上げされる

日本国内における昆布の生産量は、北海道が約9割を占める。しかし、昆布の消費量に関しては、富山県が全国トップクラス。ほとんど昆布が採れないというのに、なぜ多く消費されるのか? その理由を知るべく、富山県黒部市生地(いくじ)を訪ねた。

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食文化に深く根付く昆布

かつては北前船の寄港地としてにぎわった生地漁港。海は急深地形で、少量多品種の魚、おもに白身魚がよく揚がる。天候のよい日は立山連峰を望める

そもそも富山県の食文化に昆布は深く根付いている。漁港の近くにある「魚の駅 生地」でも昆布かまぼこ、にしん昆布巻き、おぼろ昆布など昆布製品が多彩で、特に昆布締めは店の一角を占めるほど。生地漁港で水揚げが多い白身魚をおもに使っており、ラインアップはマダイにヒラメ、スズキ、白エビ、アオリイカなど、じつにバラエティ豊か。昆布は四角くのした、昆布締め専用のもので作っており、こちらでは施設の目の前にある「四十物(あいもの)昆布」の専用昆布で使っているのだという。

北前船がつくった昆布の道

3代にわたり昆布専門店を営んでいる「四十物昆布」では多種多様な昆布を販売。店頭には清水が湧き出しており、水をくむこともできる

「四十物昆布」は昭和24年(1949)、昆布加工所として立ち上げたのがはじまりの昆布専門店。「四十物(あいもの)」は店主の苗字なのだが、富山県では地名にも見られる。語源としては塩魚類の総称で、これらを扱う海産物問屋や、北前船の船頭、船主、回船問屋がこの姓を名乗るようになったようだ。そのため、北前船の寄港地に「四十」が付いた姓が多くみられるようになったのだそう。

北前船とは、江戸時代中期から明治30年代にかけて大阪と北海道を結び、日本海沿岸の航路を行き来していた商船群。米、醤油、ムシロを北海道へ運び、帰りに昆布やニシン、魚肥などの海産物を大量に仕入れ、日本各地の寄港地で売りさばいていた。富山県には生地や東岩瀬、伏木などの寄港地があり、その結果、富山県に昆布が流通したのだ。

さらに、薩摩から琉球、ひいては中国まで昆布が流通。

「中国では当時、ヨードを抽出するために昆布が珍重されており、その運搬を手がけたのが越中富山の売薬さんだともいわれています」

そう語るのは、「四十物昆布」の3代目店主・四十物幸直さん。

富山県民に圧倒的人気を誇る黒とろろ。白とろろも多種販売している。中には、羅臼昆布を100%使用した、ぜいたくなとろろ昆布も

富山と昆布をつないだ出稼ぎ衆

店舗に備えられたガラス窓から、とろろを削る様子を見学できる

さらに、富山県に昆布文化が根付いたのは、富山県から北海道への移住者が、明治の頃に増加したことが背景にあるという。

「富山は海岸線の長さが当時の漁民1人に換算すると短く、漁があっても苦しい生活を強いられてきました。仕事がなくて、次男坊三男坊は出稼ぎ衆として北海道に行ったのです。特に富山東部、黒部市の人間は、北海道でも先端の根室、知床の羅臼、さらには北方領土と、厳しい場所を開拓していきました。でも、厳しいからこそ豊富な魚、良質な昆布があり、成功していったのです」と四十物さん。

北海道に移り住んだ人々が、地元にいる家族や親戚に昆布を送るなどの交流が生まれ、次第に昆布が富山県民の食生活に浸透していったというわけだ。

「四十物昆布も、このことが大きく関係しています。北海道に渡った曾祖父(1898年~1972年)が利尻で網元を営んでいたのですが、その次男、つまり私の祖父(1927年~)は生地に戻り、利尻昆布を使ってとろろ昆布の製造を始めたのです」

昭和24年(1949)の創業当時は、「海陸物産問屋マルコ四十物幸作商店」(北海道利尻)の利尻昆布専門加工部門として「マルコ水産加工所」を名乗っていたが、昭和48年(1973)、「四十物昆布」と改名。いまでは羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布などを幅広く扱うように。細かく産地や等級を分ければ約100種類を扱っており、中でも羅臼昆布の品揃えを充実させている。関西の料亭はもちろん、海外のレストランにも大量に出荷しているという。

富山県民の食卓に欠かせない昆布

高級品だけでなく、切り落としなどお買い得品や、昆布ベースのタレ類や麺類、調味料など、昆布にまつわるあらゆる商品が見つかる

店のルーツともいえるとろろ昆布は、店内で製造している。原料は昆布と酢のみ。昆布を重ねてプレスしたブロックを20ミクロン(1mmの1/50)という薄さに削るというから驚きだ。使用する昆布の厚みよって色や風味が変わり、肉厚の昆布の側面を削ると白とろろ、薄い昆布を削ると黒とろろになる。黒とろろは県外ではあまり知られていないが、さっぱりとした味わいで、富山県内での人気が根強いという。

「白とろろはご飯にかけたり、料理に添えたり、とにかく何にでも使います。黒とろろは、私が子どもの頃は、学校給食でおにぎりになって出てきたほど一般的です」

四十物さんが語るように、富山県ではダシを取るだけでなく、昆布そのものを食べることが非常に多い。料理はもちろん、おやつで食べたり、日本酒に入れて嗜んだり、とにかく昆布を食べる、食べる。

いまなお続く、富山の昆布文化

「四十物昆布」三代目となる代表の四十物幸直さん

「昆布はカリウムが豊富で、塩分を排出してくれる効果が期待できます。ダシで摂るのもいいですが、やはり昆布そのものを食べるのがいいと思います。特に羅臼昆布は繊維質がやわらかいので、切ってそのまま食べるのがおすすめです」

四十物さんの話を伺っている最中も、地元住人が入れ替わり立ち替わり、お店を訪れ昆布を購入していく。用途や好みに応じて、昆布の種類を使いわける人も多いそうで、「四十物昆布」でしか扱っていない昆布があるからこそ、スーパーマーケットでなく専門店で購入していくのだという。

富山と昆布の関係、掘れば掘るほどもっと深い話が聞けそうだ。

読了ライン

四十物昆布
住所|富山県黒部市生地中区339-5
Tel|0765-57-0321
営業時間|平日8:00~17:30 日曜・祝日9:00~17:00
定休日|無休(元旦を除く)
https://www.aimono.com/index.html

魚の駅「生地」
住所|富山県黒部市生地中区265
Tel|0765-57-0192
営業時間|とれたて館(鮮魚・土産)9:00~18:00、できたて館(食事)11:00~15:00
定休日|水曜
http://www.jf-kurobe.jp/sakananoeki-ikuji/

 

昆布の採れない富山県と昆布の深いカンケイ
昆布締め料理専門店 クラフタン

 
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text:Hiroko Yokozawa photo:Hideyuki Hayashi

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