神話の国・島根
温泉旅館《界 出雲》
名湯と文化にどっぷり浸かる滞在。
日本の夜を守る聖地、出雲・日御碕に誕生した温泉旅館「界 出雲」を訪れ、心身を清める至極の湯浴みと出雲神話の歴史を体感する旅へ――。
神話を体感しながら
心身ともにお詣り支度の宿
島根県東部に位置する出雲市。日本を建国したと伝わる大国主大神を祀り、旧暦10月には八百神の神々が集まる出雲大社をはじめ、多くの古社が残る〝神話の国〟は、日本遺産や日本ジオパーク認定の景勝地、伝統文化、豊かな自然が調和しながら息づいている。
2022年11月、その最西端にそびえ立つ出雲日御碕灯台と日本海の絶景が広がる立地にオープンした宿が「界 出雲」だ。星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランド「界」は、その土地ならではの文化や風土を体感できる「王道なのに、あたらしい。」旅を提案。その中でも「灯台と水平線を望むお詣り支度の宿」をコンセプトに掲げる界 出雲では、出雲神話にまつわる文化体験と、名湯で心身を清める滞在が楽しめる。
灯台と水平線、そして果てしなく広がる大海を望む2種の客室「彩海の間」は、この地の豊かな文化や伝統を感じさせてくれる。灯台側の客室には、夕日が美しく映えるよう補色効果のある藍色を取り入れ、海側の客室の壁紙は、ユネスコ無形文化遺産に登録された島根の伝統的工芸品「石州和紙」で朝焼けをイメージ。さらに手漉き和紙を手紡ぎして生み出される「紙布」のアートワークなど、館内の随所にちりばめられた島根のものづくりの営みと、刻々と表情を変える空間に身を置いていると、自然と心がほぐされていく。
心と身体を清める、
聖地ならではの宿泊体験
大浴場に訪れて目を奪われた。出雲松島の美景と一体化したロケーションは、刻々と移り変わる夕焼け空、一面に広がる星空の宵闇、そして黄金色に染まりゆく神聖な日の出など、それまで知らなかった出雲の情景を見せてくれる。
「塩分濃度の高い出雲ひのみさき温泉は、身体が芯から温まり湯冷めしにくい強塩泉。父なる神が黄泉の国の穢れを海で清めたように、出雲大社のお参り前の〝禊湯〟として利用していただきたいです」と総支配人・富井亜美さん。
ただ心地よい湯浴みというだけではなく、神々の業を感じる文化体験は、食もしかり。とりわけ「タグ付き活松葉蟹会席」は、ここでしか味わえない贅を極めたカニのフルコース。出雲大社ゆかりの五穀豊穣の神さま・大国主大神から着想を得て、稲藁で香り豊かに蒸し上げた「活松葉蟹の豊年蒸し」をはじめ、みずみずしい刺身や滋味深いしゃぶしゃぶ、香ばしい味わいが軽快に弾ける絹糸揚げなど、火入れの違いで味わいや旨み、食感が多彩に変化し、島根の食文化を得難い口福へと昇華している。
さらに、島根の伝統芸能に触れられるご当地楽「石見神楽」鑑賞も外せない。出雲の国をかけた神の戦いを描く神話「国譲り」の演目は、雄大な日本海をバックにダイナミックな舞で出雲大社の起源につながる歴史を伝えている。
翌朝、すがすがしい空気の中で禊湯に浸かり、山海の珍味を神さまに献上する「神饌朝食」をいただき、お詣りの準備はととのった。神話の物語に浸りつつ、心身で癒しを享受できる旅がここにある。
まさに神業!
荒波が生んだ絶景を心ゆくまで堪能したい。
出雲の神さまを感じられる、
カニのフルコース
読了ライン
界 出雲
住所|島根県出雲市大社町日御碕604
Tel|050-3134-8092(界予約センター)
客室数|39室
料金|1泊2食付2万5000円~(税・サ込)、蟹料理の追加料金は1万3200円(1名分、税・サ込)
※5日前までに要予約
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAなど
IN|15:00
OUT|12:00
夕食|和食(食事処)
朝食|和食(食事処)
アクセス|車/山陰自動車道出雲ICから約30分、電車/JR出雲市駅から一畑バスで約40分
施設|食事処、かわたれテラス(ライブラリー)、湯上がり処、大浴場、売店
text: Ryosuke Fujitani photo: Akio Nakamura
Discover Japan 2023年2月号「癒しの旅と温泉。/秘湯、湯治宿、銭湯、サウナ37」