VERTERE<バテレ>
奥多摩で、ビールと森林浴と!【前編】
次の休日は、ビールを目的に旅に出てはいかがですか?今回は、東京都奥多摩にあるブルワリーバー「VERTERE(バテレ)」について、3記事でご紹介。
趣き深い古民家で、自然の声を聞きながら
うまいビールを飲む至福……
駅舎を出ると、柔らかい春の風がほおをなでる。目の前に生い茂る針葉樹は鮮やかに新葉が芽吹き、初夏の訪れを報せてくれているようだ。階段を下りると透き通る日原川が穏やかに流れ、森の傾斜から小鳥がさえずり、川辺ではBBQを楽しむ家族の歓声が──。
「いま、ここでビールが飲めたら」と考えた瞬間にのどが鳴る奥多摩の大自然の中、ビールを醸しているのが「VERTERE」だ。駅前の路地に入ってすぐ、「おじゃまします」と言ってしまいそうな古民家に入ると、杉の香りが漂ってくる。
「カウンターや床は地元の杉の木でつくったんです。余っているから持っていっていいよって」
柔和な笑顔で迎えてくれたのはブルワーの辻野木景さん。もともと着付けや花を嗜んでいた人から借りた築70年の家を、自分たちでリノベーションしたという。
「かなりぼろぼろで、無我夢中で穴を塞ぎました(笑)。8カ月くらいかけて、床もすべて張り替えて」
タップからビールを注ぎながら辻野さんが笑う。庭を抜けて里山が一望できるテラス席でひと口。なめらかな口当たりの後、柑橘のフレーバーが鼻孔をくすぐり、すがすがしいのど越しに思わず感動の声を上げてしまう。
辻野さんに話を聞くと「VERTERE」は、都心の高校に通う同級生だった鈴木光さんと6年前にはじめた。ともに東京農業大学造園科学科に進学したときから起業を志していたという。
「鈴木はずっとビジネスをやりたいと言っていて。自分とタイプは違うんですが馬が合ったんです。卒業後に彼は資金をために、自分は武器となる技術を学びに社会に出ました」
辻野さんは高円寺の「麦酒工房」で3年醸造を学んだ後、都心で物件を探したが、縁もゆかりもない奥多摩に決めた。その理由が明快だ。
「ここでビールを飲んだとき、とにかく気持ちよかったんです」。
Beer Cafe VERTERE
住所|東京都西多摩郡奥多摩町氷川212
Tel|0428-85-8590
営業時間|Beer Cafe/11:00〜19:00(L.O.)、Bottle Shop/13:00〜18:00
定休日|月〜金曜
奥多摩までのアクセス
◎電車の場合/JR新宿駅からJR立川・JR青梅を乗り継いでJR奥多摩駅まで約1時間25分
◎車の場合/練馬ICから関越自動車道〜圏央道を通り青梅ICまで約35分、青梅ICから青梅街道を通り奥多摩駅まで約55分。もしくは高井戸ICから中央自動車道〜圏央道を通りあきる野ICまで約40分、あきる野ICから吉野街道・青梅街道を通り奥多摩駅まで約55分
text: Ryosuke Fujitani photo: Kohei Omachi
Discover Japan 2021年6月号「ビールとアウトドア」