大河ドラマ主人公・豊臣秀長の足跡をたどる
和歌山でめぐる
“豊臣兄弟”ゆかりの地へ
天下統一を目指す豊臣秀吉とその弟・秀長。その手は紀州にも伸び、時には戦を呼び、時には平和をもたらした。豊臣兄弟の紀州での軌跡をたどり、時代の転換期を自ら確かめる旅へ。
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はじめに...
和歌山と豊臣兄弟のかかわりを振り返る
| 1585年 | 豊臣秀吉による紀州征伐 豊臣秀長が、藤堂高虎に和歌山城を築城させる 應其上人が秀吉と和解交渉、紀州復興がはじまる |
| 1591年 | 秀長の死去 |
| 1594年 | 秀吉の高野山参詣 |
| 1598年 | 秀吉の死去 |
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〈戦乱期〉
紀州征伐の舞台を巡礼
豊臣秀吉が現在の和歌山県に紀州征伐を行ったのは、1585年の3月にさかのぼる。当時、この地では寺社勢力や地侍による統治が確立されていた。中でも本州でいち早く鉄砲製造の技術を導入した根來寺の僧兵は、全国の大名を脅かす一大勢力として平定の対象に。この時、秀吉軍の副将を務めたのが弟の豊臣秀長である。

高野山で真言密教を修めた覚鑁上人(かくばんしょうにん)により1130年に開かれた新義真言宗の総本山。室町末期の最盛期には寺領72万石ともいわれ、武芸や学問をはじめ、根來塗や能面、刺繍に代表される文化や美術が花開き「黄金に輝き豪華絢爛」と称される一大宗教都市として栄えた。広い境内には大伝法堂や行者堂などの重要文化財が点在し、めぐるだけでも存分に楽しめる。県内屈指の桜の名所でもあり、桜と大塔の美しいコントラストが秀逸
「秀吉軍が攻め入ったとき、あまりの戦力差に寺はすでに戦意を失っていたという一説があり、そこには秀長の交渉術も関係していたといわれています」と話すのは、根來寺の西川隆規さん。紀州勢が砦としていた和泉の積善寺城、沢城を開城させた秀長は、還俗して仕官を望むものには安全を保証する意向を示し、降伏を促したという。武力一辺倒ではない柔軟な交渉手腕は、秀長が戦国屈指の知将と称されるゆえんでもある。

大塔とともに秀吉の紀州征伐の戦火を免れ、国の重要文化財に指定。宝形造(ほうぎょうづくり)、本瓦葺(ほんかわらぶき)で、根來寺で最も古い建物。内部では弘法大師を祀っている
かくして根來衆はほぼ無抵抗で制圧されたものの、その際の兵火により根來寺は大塔と大師堂を除く大半が灰燼に帰す。同様に粉河寺も出火により伽藍の多くを失うが、紀州徳川家の庇護を受け復興していく。

根來寺と並ぶ紀州の城砦。紀州征伐の際に多くの堂宇が焼失したものの、紀州徳川家の庇護により再興。約11万5000㎡の広大な境内には大小20余の伽藍や迫力の石庭など見どころが点在する。写真は入り口にある大門
根來寺
住所|和歌山県岩出市根来2286
Tel|0736-62-1144
拝観時間|11~3月9:10~16:00、4~10月は~16:30
定休日|なし
拝観料|500円
www.negoroji.org
粉河寺
住所|和歌山県紀の川市粉河2787
Tel|0736-73-4830
拝観時間|8:00~17:00
定休日|なし
拝観料|本堂内陣のみ400円
www.kokawadera.org
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《復興期》
豊臣家の戦後の歩みを追体験
秀吉による侵攻の危機に瀕した高野山は、武家出身の僧侶・應其上人の働きかけにより、その難を逃れた。これを機に秀吉の信頼を得た上人は、山内の25棟もの堂塔再建を監護。後に、秀吉が主導したほかの復興事業にも携わった。

秀吉と単身で交渉し、紀州征伐から高野山を救った僧・應其上人が再建した寺。交渉後、秀吉の厚い信頼を得た應其上人は、授けられた領地で紀の川に橋を架け、塩市を開設。現在の橋本市の名前と発展につながっている。
高野参詣道は複数あるが、現在の橋本市から直線的に高野山を目指す黒河道は、急な雷雨に見舞われた秀吉が馬で駆け下りたと言い伝えられる古道で、世界文化遺産に登録されている。

秀吉の高野参詣の通り道。秀吉だけでなく南北朝時代の光厳上皇も歩いたという古道。昔は重要な高野参詣道であったことがうかがえる。峠越えやアップダウンも多いが、道中には集落跡や史跡もあり、静かなトレッキングが楽しめる。中盤の春日神社にある、季節で葉の色が7回変化すると伝わる樹齢300年以上の桂の巨木は見応えあり
登録に携わった高野山大学の木下浩良さんは、「秀吉は妻・寧々や前田利家らを含め、5000人ほどの軍勢での移動。黒河道を上から下まで埋め尽くしていたかもしれません」と語る。約16㎞の山道は雑木林や渓流、苔むした石畳など、静かな趣に包まれている。豊臣兄弟の生き様に想いを馳せるにはこの上ない時間が、ここにはある。
應其寺
住所|和歌山県橋本市橋本2-3-4
Tel|0736-32-0218
拝観時間|7:00~17:00
定休日|なし
拝観料|無料
黒河道
住所|和歌山県伊都郡九度山町市平(※春日神社所在地)
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この地ならでは文化に触れる
歴史あるところに文化あり。両寺の境内や門前では、僧侶のうつわとして生まれた根來塗をはじめ、郷土料理の茶粥や鮎寿司など、この地ならではの文化に触れることができる。
NEKORO CAFÉ

輪島塗や会津塗の源流となった根來塗の塗師が開くカフェ。軽食や季節のパフェなどが味わえ、境内の散策の休憩に利用したくなる。根來塗は展示・販売に加え、塗り物体験も可能(要予約)。

NEKORO CAFÉ
住所|和歌山県岩出市根来2184
営業時間|11:00~16:00
定休日|火・水・金曜
※祝日の場合は営業
Instagram|@nekorocafe
力寿し

昔は紀州の各家庭でつくられていた鮎寿司。その文化を継ぎ、清流紀の川が育んだ鮎を用いた「特製 鮎寿し(1300円)」などが味わえる。香ばしく素焼きし、秘伝のだしでじっくりと下炊きした鮎は柔らかさと甘みが格別。
力寿し
住所|和歌山県紀の川市粉河10-6
Tel|0736-73-6670
営業時間|ランチ11:00~17:00、ディナーは予約制
定休日|月曜
www.chikara-sushi.net
紀の川三笠館

粉河寺の参道にある築100年以上の旧旅館をリノベーションし、宿泊にカフェ、サウナなど兼ね備えた複合型施設として2024年にオープン。元の建具を生かしたノスタルジックな風情はこの旅に似つかわしい。
紀の川三笠館
住所|和歌山県紀の川市粉河2086
Tel|0736-67-7010
料金|1泊2食付1万5000円~(税・サ込)
https://mikasakan.com/ja
道の駅 くしがきの里

「地元のいいものを扱う」をコンセプトに農産物や土産品が豊富に揃う道の駅。一年中果物が収穫されるかつらぎ町の特徴を生かし、レストランではフルーツを使ったスイーツや特産の柿を用いたカレーなども愉しめる。
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道の駅 くしがきの里
住所|和歌山県伊都郡かつらぎ町滝53-1
Tel|0736-25-0155
営業時間|ショップ・パン工房9:00~17:00、レストラン10:00~17:00(L.O.16:30)
定休日|なし
Instagram|@michinoeki.kushigakinosato

text: Mami Hashimoto photo: Takashi Gomi
2026年4月号「地域の“旬”感へ」


































