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新次元の塩づくり《田野屋塩二郎》
現代に受け継がれる高知の“塩”スピリット
塩の道をゆく高知旅|中編

2025.7.30 PR
新次元の塩づくり《田野屋塩二郎》<br>現代に受け継がれる高知の“塩”スピリット<br>塩の道をゆく高知旅|中編

「土佐塩の道」が育んできた高知の塩への情熱は、現代にも受け継がれている。鬼才の塩職人・田野屋塩二郎さんは「塩は生き物」と話し、海水と太陽、そして自分の手を信じて塩づくりに取り組む。自然の力と情熱が結晶する、新次元の塩作りとは?

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自然と人が共に育む
完全天日塩づくり

山の養分が流れ込む汽水域から、生物の産卵などでミネラルが豊富になる満月の日に採水。最低でも3カ月かけて結晶化させ、にがりと分離して採塩

塩に情熱を注いできた高知のスピリットは、現代にも継承されている。その一人、塩職人の田野屋塩二郎さん。Iターン移住した高知で天日塩づくりを学び、2009年に田野町で独立を果たした。

真夏の日中は60〜70℃にも達するという製塩ハウスで、海水を撹拌する田野屋塩二郎さん。手で混ぜる作業を長年続け、小指の関節が曲がってしまったほど。「味見をしなくても、匂いや色合いでどんな塩になったかわかるよ」と笑う

塩二郎さんの塩づくりの一部を拝見。すぐそばの海からくみ上げた海水は、通常の塩づくりなら用いる、水分を飛ばすための採かんタワーを通さず、そのままハウス内の結晶箱へ。「時間と手間を惜しみたくないからね」。1〜2時間に1回、真夏なら30分に1回程度、海水を攪拌して塩分濃度を均一にしつつ結晶化させていく。この作業を80個ほど並んだ箱すべてに行うとは、気が遠くなりそうだ。

驚くのは、塩二郎さんの手のひらだけで塩の結晶の大きさをコントロールしていること。さらに、ナトリウムやマグネシウムといったミネラルの成分を調整することで、シャープな塩味やほのかな苦みなどを出すことも可能だという。国内外のトップシェフの愛顧を集め、いまでは生産量の9割ほどがオーダーメイドに。プリミティブにして緻密な塩づくりは、日本の塩の未来を感じさせる。

注文に応え、あらゆる素材を海水に加えてエキスを抽出し、オリジナルの塩をつくる。写真の松茸のほかワタリガニの甲羅や栗の皮などが結晶箱に
「これは遊び」と言いつつ塩二郎さんが注力するのは、牛丼(右)やいちごパフェ(左)などの味を表現したブレンド塩。塩の可能性は無限だ
ロングランの2品。粒の大きさ0.2㎜の塩(右)は、ナトリウム含有量が多く豚肉におすすめ。0.8㎜の塩(左)は牛肉の甘い脂にマッチ

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天日塩製塩体験ができる
田野町完全天日塩製塩体験施設

ハウス内に整然と並んだ結晶箱をひとつずつ攪拌する。夏場はかなりの暑さになるため、体験時はタオルや飲み物を忘れずに

現在「田野屋塩二郎」では一般の見学や商品購入は不可だが、隣接する「田野町完全天日塩製塩体験施設」では、「塩二郎」仕込みの塩づくりの工程を体験できる。自然のパワーと人の想いが結晶した天日塩に、ぜひチャレンジを。

スコップやヘラで集めていくと、白く輝く完全天日塩が現れる

田野町完全天日塩製塩体験施設
天日塩づくりの工程を、地元ガイドの田野案内人「賛」のメンバーが案内。製塩のレクチャーを受けた後、製塩ハウス内で実際に撹拌・採塩する作業を体験できる。塩は脱水・ごみ取りの後、袋詰めして持ち帰り可能。

住所|高知県安芸郡田野町2703-6
Tel|0887-38-2390
営業時間|9:00〜16:00
定休日|火曜(祝日の場合は翌平日休)
料金|体験800円、見学400円
※見学・体験ともに利用の10日前までに田野町ホームページから要予約
https://tanocho.jp/kanko/#seientaiken

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高知の絶景鉄道と
「やなせたかし」ゆかりの地をめぐる

 
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塩の道をゆく高知旅
01|高知の風土を育んだ「土佐塩の道」をゆく
02|《田野屋塩二郎》新次元の塩づくりとは?
03|「やなせたかし」ゆかりの地と高知の絶景鉄道をめぐる旅へ

text: Aya Honjo photo: Azusa Shigenobu
2025年8月号「道をめぐる冒険。」

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