観光まちづくりの原点は、
三重・伊勢《おかげ横丁》にあり!
後編|伊勢の歴史や風土、食文化と出合う。
江戸時代に起こった空前の旅行ブーム「おかげ(お伊勢)参り」。
その旅の終着点、伊勢神宮内宮のそばで約300年間店を構える赤福は、年間約500万人が訪れる「おかげ横丁」の生みの親。その赤福の歴史とともに、まちづくりの原点をひも解く。
line
32年前。「おかげ横丁」の
誕生秘話を知りたい。

「おはらい町」の一画約4000坪の敷地に、伊勢路やその近隣の建築を模したり、移築するなどして、当時の町並みを再現した「おかげ横丁」。
出入り自由の横丁は伊賀組紐、真珠、松阪木綿といった県内の名産品店、そして赤福餅をはじめ伊勢うどんや漁師料理などが楽しめる地元ならではの飲食店計27店舗で開業した。現在は57店舗が軒を連ね、おはらい町に溶け込むおかげ横丁をふらりと歩けば、歴史や風習、人情味といった伊勢路の魅力が体感できる仕掛けとなっている。また10代目・濱田益嗣氏の「おかげ横丁らしいおもてなしをしたい」という想いからはじまったのが、太鼓の生演奏。おかげ横丁内に設けられた太鼓櫓では、週末を中心に専属チーム「神恩太鼓」がたたく太鼓の音が鳴り響き、その熱気あふれるパフォーマンスが好評だ。

この横丁が核となり、パワースポットブームの追い風もあって、伊勢の来客数は年々増加。そんな中でも原点である、参拝者に湯茶を振る舞う施行の精神は健在だ。その象徴が、本店に据えられたかまど。いまなお現役のこのかまどで沸かした湯でほうじ茶を淹れ、来客に提供。早朝5時の開店に備え、毎朝4時頃にかまどへ火をつけるのは代々女将というのが赤福のしきたり。いまは社長で女将・濵田朋恵さんがその役目を担う。
「次の63回目の遷宮は2033年。その準備がはじまっています。そんな時期にこそ、日本の心の拠りどころともいえる神宮さんのお膝元から、伊勢、そして日本の素晴らしさを発信し、先の時代へつなげていきたいのです」と濵田さん。

現状にとどまらない次なる一手として、おかげ横丁内の体験施設「おかげ座」のリブランディングが進行中。参画するのは「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」内のパビリオンの映像なども手掛けるビジュアルデザインスタジオ「WOW」。新しい動きから目が離せそうにない。
おかげ横丁内の体験施設「おかげ座」が「おかげ屋敷」としてリニューアル中。手掛けるのはビジュアルデザインスタジオ・WOW。郷土芸能をモチーフとしたインタラクティブ作品『BAKERU』など、日本の文化や精神性をデザインしてきたWOW。伊勢と出合いどんな化学変化が起こるか楽しみだ。
line
おかげ横丁で出合う、
美味しい伊勢の食文化。
〈伊勢鮨 海さち山さち〉

2024年オープンの立ち食い寿司店「伊勢鮨 海さち山さち」。伊勢志摩産を中心とする魚介類の寿司は1貫から注文可能。ネタは日替わりで、にぎり8貫3000円。伊勢うなぎといった地元ならではのネタのほか、サイドメニューの真珠貝柱500円も貴重。

〈ふくすけ〉

伊勢うどんの店「ふくすけ」。ご当地名物の伊勢うどん650円のほか、季節限定のメニューも。ふんわりモチモチとした太うどんと甘めのタレがたまらない味わい。
〈すし久〉

勅使の宿も務めた由緒ある料理旅館を改装したのが「すし久」。看板メニューは伊勢志摩の郷土料理・てこね寿し1500円~。漁で捕れた鰹をその場でさばいて醤油に漬け、ご飯と合わせて豪快に手で混ぜて食べた漁師料理がはじまりとか。

〈森翁館〉

伝統的な日本建築が多い横丁内に建つモダンな洋館「森翁館」。国の重要文化財に指定される桑名市の旧諸戸清六邸を模したもの。二階の洋食店「はいからさん」では昔ながらのカレーやオムライスなどが味わえる。
line
おかげ横丁にいこう!
≫公式サイト
「おかげ横丁」に関する問い合わせ
住所|三重県伊勢市宇治中之切町52
Tel|0596-23-8838(総合案内)
営業時間|1・2月/9:30~17:00(※2月の土・日曜、祝日~17:30)、3~7月9:30~17:30(※4~7月の土・日曜、祝日~18:00)、8・9月9:30~18:00、10月9:30~17:30、11・12月9:30~17:00 ※店舗により営業時間などが異なるため、要事前確認
定休日|なし
text: Makiko Shiraki(Arika Inc.) photo: Tomoaki Okuyama
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」




























