TRADITION

輪島の御膳を次世代へ
食や伝統を未来へつなぐプロジェクト

2024.9.21
輪島の御膳を次世代へ<br>食や伝統を未来へつなぐプロジェクト

日本有数の漆器の産地として名高い石川・輪島。2024年元日の大地震により甚大な被害を受ける中、輪島塗再建に向けて新たな一歩を踏み出した人々がいる。
 
今回は、能登の食文化を守るべく、蔵が倒壊して行き場を失った輪島塗の御膳を救出する活動を続けるベンジャミン・フラットさん、船下智香子さん夫妻を紹介する。

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「散逸しないよう、箱ごと引き取れる方にお譲りしたい」とベンジャミンさんと智香子さん

能登町の伝説の宿「さんなみ」を受け継ぎ、能登イタリアンと発酵食の宿「ふらっと」を営むベンジャミン・フラットさん、船下智香子さん夫妻。いまにも消えそうな能登の食文化を守るためにこのプロジェクトを立ち上げた。

御膳は家ごとのオーダーメイドゆえ、椀の蓋などに家名や家紋が入っている。脈々と受け継がれてきた能登の食文化がここにもある

能登では冠婚葬祭の料理のうつわとして、輪島塗の御膳を揃えておくのが昔からの慣わしだった。時代の変化とともに御膳を使う機会が減り、蔵に仕舞い込まれていたところ、地震で蔵が倒壊。仮設住宅には持っていけずに捨てざるを得ない人が続出した。二人はその人の思いとともに御膳を引き取っている。泥に埋まったお椀を一つひとつ丁寧に洗浄し、出した家ごとに整理して記録し、その単位をばらさずに保管。この活動をはじめてから、すでに1500以上の御膳をレスキューしたという。古くは約300年前の御膳、新しいもので50年前のものだ。

所有者が書かれた御膳を収める箱

「50年前から能登では御膳がほぼつくられなくなりました。能登が誇る魚醤・いしりも風前のともしび。震災後、祭の中止が続けば祭りの食が消えてしまう。いま、先人たちが培ってきた食文化がなくなるかの瀬戸際にいるのです」

この御膳を能登で大切に使ってくれる人に譲る試みで、能登伝統の食文化のバトンを手渡したいと考えている。

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問い合わせ|一般社団法人能登地震地域復興サポート
Tel|0768-62-3000
Mail|notolocal@gmail.com

輪島塗に新風を吹き込む塗師たち
1|未来へつなぐ一歩
2|《赤木明登うるし工房》赤木明登
3|《輪島キリモト》桐本泰一
4|《田谷漆器店》田谷昂大
5|輪島の御膳を次世代へ。食や伝統を未来へつなぐプロジェクト

text: Yukie Masumoto photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2024年9月号「木と暮らす」

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